リモートワークが急速に拡大した2020年、ニューノーマルな働き方へのシフトが求められた年となりました。在宅勤務が増え、従業員支援・満足度向上の難易度は上がっています。
そこで今回は、株式会社OKANで実施したオンラインセミナー「ニューノーマル時代に押さえるべき労務管理と従業員支援のポイント」からピックアップした、重要ポイントを前編・後編に分けてお届けいたします。
後編は、オフィスおかんの活用事例などを交えながら、コロナ禍で一層注目されている「従業員満足度向上」の重要ポイントを紹介します。
前編:【弁護士が解説】ニューノーマル時代に押さえるべき労務管理のポイント!

なぜ今「従業員満足度」が重要なのか?
昨今、問題視されている深刻な人手不足。止まらない労働力人口の減少が起こる中、従業員満足度という観点から、離職理由にも大きなダメージを与えていました。離職一人当たりの損失推計額は、採用・育成などの直接的損失から知識・生産性低下などの間接的損失まで300~1000万円、なんと年収の半分にも上るといいます。
所属している従業員の離職が企業にとって大きな損失となることが分かりました。では、なぜ今「従業員満足度」が重要なのでしょうか。
一括大量採用からリテンション重視へ
高度経済成長期の日本は、いわゆるエントリーマネジメントと呼ばれる、一括大量採用時代でした。しかし、近年では少子高齢化によって10代後半~60代の働ける世代の人口が減少しているため、人材不足に陥りやすい環境になっています。そのため、労働力不足を回避しようと、さまざまな企業が離職防止の努力をする、リテンション重視の時代へと移行しています。従業員の離職を防ぐリテンションマネジメントについては、下記の関連記事も併せてご覧ください。
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高まる人材定着の重要性
人事・総務担当者2000人を対象とした調査では、「福利厚生の選定において従業員満足度向上が最も意識されている」という結果が出ています。にもかかわらず、人事・総務担当者にそうした価値観があっても、実に4割の企業が従業員の意見を把握する手段を実施していません。
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このように、重要性の高まりを認識できていても、組織課題の検討に従業員の声を反映できていないなど、ちぐはぐな状況が生まれているのが現状です。
さらに、株式会社OKANが行った調査では、「コロナ禍によって自社の離職者が増えた」と7割以上の人事総務担当者が回答しています。つまり、いまの日本は、少子高齢化+コロナ禍によって、人材定着の重要性がますます上がっているといえるでしょう。
従業員満足度が下がった場合のデメリット
人材定着の重要性の高まりに伴い、従業員満足度がポイントとなることが分かりました。ここで、従業員満足度が下がった場合、どのようなデメリットがあるのか解説していきます。
会社の士気低下
従業員満足度が低下すると、まず初めに「自分はこの会社に貢献する必要があるのか」といった考えが生まれる可能性があります。士気が低下すると、職場でのコミュニケーション不足が積み重なってゆき、周りからの共感・理解が得られなくなることも。結果的に、ワーク・ライフ・バランスが実現できない環境を自らが作り出してしまうことも考えられます。
経営上の機会損失
顧客満足度の向上のために従業員満足度を犠牲にした働き方を行っていては、限界がくるのが目に見えています。より多くのお客様に満足していただく商品やサービスを作るために、まずは自社の従業員に働きやすい環境を整備する必要があるのです。従業員満足度が下がるような方針を続けていると、経営上の機会を逃してしまう場合もあるといえます。
離職者の増加
従業員満足度が低い環境のままダラダラと働いていると、従業員が思うように力を発揮できず、離職を考えてしまうことは不思議ではありません。万が一でも入社後1年以内に離職が起こると、なんと企業は1000万円ほどの損失コストを抱えることになってしまうと言われています。
従業員満足度向上の5つの要素
それでは、企業はどのような努力ができるのでしょうか。満足度向上のためには、意識すべき5つの要素があります。これら5つの要素について、詳しく解説していきます。
①会社のビジョンへの共感
②仕事の充実度
③働く環境への満足度
④人間関係の良好さ
⑤報酬・福利厚生の待遇面
①会社のビジョンへの共感
「企業が顧客や社会に対してどのような価値提供をするのか」という企業方針・ビジョンを共有できている状態は、組織の一体感や従業員それぞれの向上心を生み、満足度向上に繋がるといえます。
現在、コロナ禍で会社との心理的距離が広がったと感じている従業員も多く、社員とのつながりに課題を感じる企業も増えています。全社総会などが中止され、会社のビジョンを伝える場が減少しているからこそ、新たな共有方法を考える必要があるでしょう。
②仕事の充実度
今の業務が将来の自分のキャリアにつながるかどうかは、満足度に大きく影響するものです。従業員が主体性をもちながら今後のキャリアを見据えて業務に取り組んでいく、そうした成長を促進するためにも、会社として適切な環境を準備していく必要があります。
特に、働き方や仕事観の変化によって、各人が持つキャリアへのイメージも変わってきています。それぞれの意向に沿った業務にアサインすることは、重要なポイントとなり得ます。
③働く環境への満足度
オフィス環境の快適さなどはもちろん、従業員同士がコミュニケーションを取りやすい空間を準備することで、職場への満足度向上も期待できます。
感染症対策のために働く環境が変化したり、テレワーク環境の整備が必要になったりと、オフィスの立ち位置や今後求められるものにも徐々に変化が起きているといえます。
④人間関係の良好さ
同じ職場で働く仲間との関係性は、日々の業務にも大きな影響を与えます。離職する原因とされる、社内でのトラブルや人間関係の悪化などもってのほか。円滑なコミュニケーションがとれるような関係を構築することが必要となります。
何といっても、テレワークの不安の第1位として「相手の気持ちがわかりにくく不安」という理由が挙げられています。出社とテレワークのハイブリッド型の場合、出社メンバーとテレワークメンバーの不公平感なども課題になるため、良好な関係構築を行う工夫が要となります。
⑤報酬・福利厚生の待遇面
世間の経済状況にも左右されてしまうため、報酬だけでなく福利厚生の制度も整える必要があります。給与以外の手当を受け取ることで、より「会社から大切にされている」と感じ、帰属意識の向上も期待できるでしょう。
また、福利厚生の満足度が継続的な就業希望度合いに関係しているというデータもあり、福利厚生費の配分の見直しが始まっている企業も。テレワーク支援や育児支援など、従業員が本当に求めている福利厚生が整備され、活用されているかがチェックポイントとなります。
従業員満足度向上にあたって必要なスタンス
ここでは、従業員満足度向上を目指していく企業には、どういったスタンスが求められるのかを紹介します。5つの要素を踏まえて、自社のスタンスと比較してみましょう。
①調査手法<従業員の声を聴くスタンス
組織課題の解決のために、手法にこだわりすぎるのは禁物。調査や測定手法の前に、社員の声にまっすぐ耳を傾けるという姿勢が重要です。また、そうした姿勢があるかないかは、自然と伝わっていきます。
アンケートや目安箱など手法は何でも良いので、本音を出しやすい土壌を整えておくことが大切なのです。社員の声が集まったら、出来る限りすべてを組織にオープンにし、それに対する見解をフィードバックしていきましょう。
②トライ&エラー前提でやってみる
できることから、トライ&エラー前提でやってみることが肝となります。従業員は、施策による効果というよりも、自分たちの声に対して会社が動いてくれるかどうかを見ています。例えば、先述した5つの要素を実践にうつす場合、下記のような動き方が考えられます。コストがかからず、すぐに始められることもあるので、まずはやってみる、という姿勢を大切にしましょう。
会社のビジョンへの共感
・クレドカードやバリュー冊子の作成と配布(インナーブランディング)
・経営者からのビジョンの発信を強化する(社内ブログやラジオなど何度も伝える)
・採用基準に入れる(ミッションマッチを採用時点で測る)
仕事の充実度
・特性や強みを把握するサーベイ
・1on1の実施
働く環境への満足度
・ABWを取り入れたオフィス環境
・リフレッシュスペースの設置
人間関係の良好さ
・コラボレーション改善ツールや社内SNS
・シャッフルランチ
報酬・福利厚生の待遇面
・妊活支援や保育施設、ベビーシッター補助
・子連れ出勤OK
・置き型社食など手軽な食の支援
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オフィスおかんを活用した従業員支援の事例
ここからは、食の福利厚生として注目を集めている置き型社食「オフィスおかん」を活用した従業員支援の方法や事例を紹介していきます。それぞれの企業によって異なる導入効果にも、着目して見てみてください。
SMBCモビットの事例
導入背景と課題
コールセンター業務で多様な雇用形態の社員が働いており、人材定着のためにも公平な福利厚生が必要となったそうです。
新型コロナが拡大する一方で、個人情報を取り扱う観点からテレワークが難しく、社員のほとんどの方が出社されているそう。ランチ外出の際の感染リスクが課題となっていました。
オフィスおかん活用の効果
「食」という分かりやすい施策で、利用率も高く、満足度向上へと繋がったという声が上がっています。コロナ禍に至る前から導入していましたが、今ではさらに活用しているそう。コロナ禍でも出社せざるを得ない社員に、ランチ外出を控えられるよう利用を推奨し、感染予防対策として従業員支援に活用中だといいます。
参照:株式会社SMBCモビットご導入事例|オフィスおかん
出勤ワーク中心の企業・団体
オフィスや事業所出社を前提とした企業や、テレワークがしにくい業界および業態の企業、また、エッセンシャルワーカーの多い医療介護福祉系などで取り入れられているそう。疲弊した従業員に対する支援が、主な導入背景となっていると言います。
出勤ワーク中心の企業や団体が抱える課題やニーズは、以下のような点が考えられます。
・外出ランチを控えてもらいたい
・出勤する従業員の健康をサポートしたい
・集団ではなく個別に食事をしてほしい
・テレワークできない分、福利厚生を強化したい
ハイブリッドワークの企業
一部テレワークを導入して3密を回避したい企業や、感染拡大状況に応じたオフィス出社人数の調整を行っている企業において、導入されているそうです。新型コロナの感染拡大以降、従来の社員食堂や仕出し弁当の運用が難しく、総務担当者の手がいっぱいになってしまうことも。一日の喫食数の変動を考慮し、置き型サービスであるオフィスおかんに切り替える企業も増えていると言います。
ハイブリッドワークを行う企業が抱える課題やニーズは、以下のような点が挙げられます。
・出社人数が減り、固定食堂の維持が難しい
・ビルのコンビニや飲食店が休止
・輪番出社を支援したい
・仕出し弁当などが注文しにくい
オフィスおかん仕送り便の活用(ブラザー工業株式会社)
コロナ禍で在宅勤務者が増える中、従業員の自宅に直接届けるサービス「仕送り便」の需要も広がっているようです。実際に導入した企業の利用者アンケート結果では、以下のような結果が出ています。
家事負担が軽減される…90%
栄養バランスがとりやすい…52%
コミュニケーションのきっかけになる…33%
特に、9割を占めている「家事負担が軽減される」という効果は、置き型のオフィスおかんとはまた違った満足度の向上につながっていると言います。さらに、「会社に対してありがたみを感じる」「所属している組織から大切にされているという実感が湧く」といった声も上がっているそうです。
ブラザー工業株式会社は、仕送り便導入企業のうちの一社です。新型コロナの感染拡大によって、毎年実施している社員総会を実施できずにいたところ、代表からのメッセージを添えた仕送り便を全社員に送りました。
こうした状況下でも懸命に働く社員へのねぎらいや感謝を、代表自らの想いとともに伝える、こうした姿勢が企業と社員との信頼関係をつくっていると言えます。
参照:〜社長から従業員へ、直筆メッセージとともに届ける”感謝の贈り物”〜ブラザー販売株式会社が約500名の全従業員を対象に自宅向け福利厚生『オフィスおかん仕送り便』を活用
時代の変化に合わせた従業員支援を
時代の流れに沿って、従業員満足度向上を防ぐ手段にもさまざまな変化がありました。自社の従業員のためにどのような支援ができるのか、大切なのは投資コストではなく、支援の姿勢です。
新型コロナの感染が広がる今だからこそ、今一度、従業員の満足度を考えるきっかけとなったはずです。手軽に始められる感染リスク防止策として「オフィスおかん」や、離れた社員への感謝を伝える「仕送り便」を検討してみるのも良いかもしれません。
