コロナ禍で再注目のABWとは?フリーアドレスとは違う自由な働き方を解説

    目次

    「ABW」はオランダの企業が提唱した新しいワークスタイルで、グローバル企業や、働きやすさを注力する企業が少しずつ採用し始めています。

    本記事では、このABWの内容、メリットや課題、導入のしやすさ、事例まで広く解説していきます。

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    ABWとはどんな働き方?

    ABW(Activity-Based Working)は、1990年代にオランダのコンサルティング企業「Veldhoen + Company」から始まったとされるワークスタイルです。定義は以下とされています。

    ABWは、企業の戦略や文化、ビジョンと照らし合わせながら、どうすればよりよく働けるかについて再考するきっかけを与える、いわば組織にとっての促進剤(カタリスト)のようなものです。ABWはチーム間のより良いコラボレーションを促し、真のつながりを育み、イノベーションを推進し、優秀な人材を確保するためのアプローチです。

    参照:アクティビティ・ベースド・ワーキングのリーディングカンパニー | Veldhoen + Company

    自分の仕事内容に合わせ、効率よく進められる場所や時間を自由に選んで働けるのが特徴で、オフィス内はもちろん、場合によってはカフェや自宅などオフィス以外の場所も働く場所の選択肢に入れることができます。

    個人の「10つの活動」

    ABWにおいては、働く人は日々の業務の中で様々な「活動」を行なっていると捉えてられています。活動は下記の10種類に分類されます。

    ・RELAXING
    ・CONSENTRATION
    ・BUSINESS PROCESSING
    ・HONE WORK
    ・PAIR WORK
    ・DIALOG
    ・INFORMATION MANAGEMENT
    ・INFORMATION SHARING
    ・TECHNICAL WORK
    ・CREATIVE WORK

    参照:イトーキ、Activity Based Workingの創始者VELDHOEN + COMPANYと業務提携、ABWコンサルティングサービスを日本国内向けに本格展開

    上記の活動それぞれを、適した空間や行動、ITツールでサポートし、働く人がより効率的に業務に取り組めるように変革していくのがABWの考え方です。

    ABWとフリーアドレスの違いは何?

    似たようなワークスタイルに「フリーアドレス」があります。

    フリーアドレスは、オフィスの中で席を固定せず、どの座席でもよいという働き方。「社員同士のコミュニケーションの活性化」や「オフィスコストの削減」などを目的とした働き方のひとつです。働く場所はオフィス内に限定されており、座席が自由といえども一日の中で何度も働く場所を変えることは想定されていません。

    一方ABWは、目的が「いかに生産性を向上させるか」「いかに働きやすい状況で働くか」に主眼が置かれています。働く場所がオフィスという空間にとらわれていないため、場合によっては出社の義務は発生しません。

    オフィス内で働く際も、集中が必要な場合は個人用スペース、カジュアルミーティングはリラックススペース、電話は音漏れしないスペースと、一日の間で場所を移動しながら仕事をします。社員一人ひとりが自律的に業務効率や時間の使い方を考えていく働き方がABWと言えるでしょう。

    ABWを取り入れる企業のメリットは?

    ①生産性向上

    集中したいとき、会話しながらアイデアをまとめたいときなど、思考内容に応じて適切な場所で仕事をすることは生産性の向上につながります。さらに、リラックススペースが確保されていることで、適度に休憩を挟めることで、さらに効率を高めることができます。

    ②従業員満足度(EX)の向上

    人によって生産性の上がる環境は様々です。ABWを取り入れることによって、一人ひとりが自分自身の特性や業務に合った働き方を選択できるため、従業員満足度の向上が期待できます。

    ③採用力アップ

    ABWを取り入れることで、在宅勤務やサテライトワークの導入も検討できます。すると、育児・介護のため出社が難しい人材や、地方在住の優秀な人材など、これまで場所の問題で採用が難しかった人も視野に入れて採用活動を行えます。さらに、ワークライフバランスの実現できる魅力ある企業として、若手人材が集まりやすくなることも考えられます。

    ④コスト削減

    在宅勤務やテレワークを活用する場合は出社する社員が限られるため、社員全員がオフィスで働くこと前提の広いオフィス物件を借りる必要がありません。固定電話など光熱費の削減にもつながります。

    ⑤企業の魅力向上

    広報としても、ABWをいち早く取り入れることは注目を集めます。企業イメージも上がり、先進的な企業として情報発信を行うことは、採用だけではなく企業活動全体の利益につながるでしょう。

    ABWの課題とは?

    ①評価制度や人事制度の見直し

    これまで出勤状況や勤務時間で人事評価をしていた場合、ABWを取り入れると社員が常に一定の場所にいることがなくなるため、物理的に目が行き届かなくなります。

    成果による評価を取り入れる場合でも、職種や業種によっては成果による評価が難しい場合もあります。何を基準として評価するのか、評価のためにどのくらい労働時間や場所を制限するのかなど、自社の性質によって枠組みや基準を細かく作る必要があるでしょう。

    ②コミュニケーションの工夫が必要

    従来の働き方では、同僚や上司、部下が目の前にいて、すぐ声をかけることができましたが、ABWでは基本的にそれぞれ違う場所で働いているため、そう簡単に話しかけることはできません。ちょっとした疑問や相談、雑談など、重要な同僚同士のコミュニケーションがとりにくくなります。

    せっかく個人ごとの効率性の上がる働き方をしているのに、チームワークが落ちてしまい、結果的に仕事の精度が落ちてしまう恐れもあります。

    気軽に声をかけられるチャットツールの導入や、固定の曜日に出社義務を設けるなど、コミュニケーションの取り方に工夫が必要となります。管理側は、社員ひとりひとりの意見を聞きながら、ちょうどよいコミュニケーションのあり方をすり合わせていくことが求められます。

    ③セキュリティ対策

    オフィス外での勤務を許可する場合、ノートPCや書類、USBの紛失など、物理的なセキュリティへの懸念が多くあります。また、フリーWi-Fiを使用したことによる漏洩の恐れなど、インターネット環境でのセキュリティにも警戒する必要があります。

    オフィス外での勤務を許可する場合、情報漏洩を防ぐため、使用するデバイスに制限をかけたり、セキュリティソフトを支給したりなど、懸念事項を解決した上で取り入れていくのがよいでしょう。

    ④従業員の自主性

    「自分はどういう環境だとベストパフォーマンスを発揮できるのか」「優先的に行うべき業務はどれか」など、ABWでは従業員一人ひとりが自主的に考えていく必要があります。

    「まだ自分がどう働けば成果が発揮できるかわからない」「優先すべき業務がわからない」というメンバーがいる場合、フォロー体制をまず確立することが優先事項となります。

    ⑤社内対応の整備

    ABWを導入し、従業員のオフィスの在席が必須でなくなったとしても、来客や代表電話への対応は発生します。どの従業員が担当するのかを考えたり、遠隔でも対応できるようなツールの導入を検討する必要があります。

    ABWを導入しやすい企業はどんなもの?

    ①業種や職種がABWに合っている

    ABWは、基本的にオフィスワーカーが多く在籍する企業は取り入れやすいでしょう。今までは、総務や経理は、ABWだけでなくフリーアドレスも導入しにくいと言われてきましたが、今や工夫やツール、ルールの設定で、可能となっています。

    ただし、高度なセキュリティが必要とされたりする業種や職種は、取り入れにくい部分もあります。自社のメンバーが、最大限自由な働き方ができるように、模索する努力は必要でしょう。

    関連記事:
    ビル丸ごと自由席。総務も巻き込んだフリーアドレスで思わぬ効果が【株式会社ガイアックス】

    ②意識改革・制度改革を柔軟に行える

    ABWは日本ではまだまだ馴染みが薄く、参考になる事例も多くはありません。制度設計や枠組みも手探りのまま進めることになりますし、途中で方向転換を必要とするケースもあるでしょう。

    そのような持続的で大きな変化を従業員が受け入れられるよう、経営者側のサポートも重要となります。定期的な1on1などで従業員とコミュニケーションを取りながら、自社に合うABWの設計を行なっていきましょう。

    ③ITツールを積極的に取り入れられる

    ABWを実施するには、オフィス内外にかかわらず、どこからでも必要な情報にアクセスできる環境が必要となります。ペーパーレス化や、ITツールの活用、セキュリティの徹底が求められます。

    さらに、業務進捗の共有やコミュニケーションにもITツールやアプリを使用することになります。
    全社的にABWを実施するのであれば、従業員全体および経営層がそろってITツールを積極的に取り入れ、活用していく必要があるでしょう。

    ④上司と部下の間の信頼関係が構築されている

    上司と部下の間で信頼関係が構築されていない状況でABWを導入すると、上司にとっては部下をうまく管理できず、部下にとっては仕事の目的や優先順位を見失うことにつながってしまいます。結果的に生産性が落ちてしまうことになりかねません。

    導入の時点で、すべての従業員同士に信頼関係が構築されていて、マイクロマネジメントが必要のない状態が理想的です。

    従業員一人ひとりの業務の様子やチームワークのあり方を確認し、ABWを導入できる状況かをじっくり検討する必要があります。

    【導入事例】コロナ禍以降にABW化した企業

    ABWオフィス事例 | 株式会社OKAN

    オフィスおかんは、2019年からABWの概念を取り入れたオフィスで業務を行なっています。生産性向上や従業員同士のコミュニケーション活性化を目的にし、オフィスのスペースを仕事の特性に合わせ複数に区切っています。

    たとえば、
    ・集中して作業をしたい場合は「SEISHIN 精神」
    ・軽いミーティングの際はコミュニケーションの取りやすい「DAIDOKORO 台所」
    ・リラックスして創造的な仕事をしたい場合は「ENGAWA 縁側」
    ・休憩し仮眠を取りたいときは「IKOI 憩」
    ・架電の際は、防音シートの貼ってある「DENWA 電話」
    など、自分の行う仕事の内容に応じて、従業員自ら働くゾーンを選びます。

    オフィスの名前は「ie(家)」。ゲストにとっては懐かしさを感じられる雰囲気を、従業員にはオープンでフラットな雰囲気を感じられるような設計になっています。

    新たなチャレンジがしやすい組織|株式会社KADOKAWA

    「新たなチャレンジがしやすい組織」へと繋げるため、AWBを導入したKADOKAWA。「自律」「オープン」「フラット」「シェア」という企業風土を醸成する狙いがあります。

    この取組以外にも、サテライトオフィス利用や在宅勤務の無制限の許可、通勤定期代の廃止、在宅勤務手当の支給などを盛り込んだ「サテライトワーク制度」を導入し、社会の変化に迅速に対応して、従業員一人ひとりが自らのスタイルに合わせた働き方を選択できる環境を構築しています。

    参考:株式会社KADOKAWA

    「イノベーション創出」と「働き方改革」を加速するオフィス|三井不動産株式会社

    三井不動産は、2019年度に「日本橋室町三井タワー」へオフィス移転をきっかけにABWを導入しました。その意義・目的は、三井不動産自身の「イノベーション創出」と「働き方改革」の加速です。

    新オフィスでの新たな働き方を実現することで、企業そして社会が抱える諸課題への解決策を見出していきます。「CROSSING」を実現するためのキーワードとして、ABW・動線・環境の 3つの観点からオフィスづくりをしています。

    人・情報が交差し、イノベーションを作る
    私たちが個人・組織・企業として、より密接につながり、継続的にイノベーションを起こしていくため、社内外の人々が出会い・集うきっかけを生み出し、情報やアイデアが行き交う場をつくることを目指しています。

    執務エリアに縛られない働き方
    執務エリアの他にもホテルライクな「CROSSING Lounge」や 「CAFE Crossing」、さらに本社ビル内の共用部にはメンバーズラウンジや会員制フィットネス、貸会議室などが利用できるサービス「mot.」、シェアオフィス「WORKSTYLING」など執務エリアに捉われない新しい働き方を可能にしています。

    参考:三井不動産株式会社

    リアルでもオンラインでも安心して働けるオフィス|株式会社ポニーキャニオン

    株式会社ポニーキャニオンでは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響に伴い、2020年2月からテレワークを実施。そこから、社員が最大限にパフォーマンスを発揮できるよう、2021年10月にオフィスにABWを導入しました。

    同時に、従業員の出社・在席状況やフロアの混雑具合、満空状況をリアルタイムで把握でき、社内の新型コロナウイルス感染拡大防止にも効果が期待できるオフィス向け屋内位置情報サービス(Beacapp HERE)も設置。またグループ会社を本社オフィスに集結することで、新社屋移転時のオフィスコンセプトである「コミュニケーションからのイノベーション」を加速させ、グループシナジーをより強化していきます。

    <フリーアドレスに伴う新しいエリアとコンセプト>
    ●コラボレーション・ワークスペース
    打合せやグループディスカッションなど、複数人での議論を活発に行うエリア

    ●カジュアルコミュニケーション・ワークスペース
    ソファ席を中心にリラックスした雰囲気で執務を行うエリア

    ●コンセントレーション・ワークスペース
    集中ブース、集中席を配置し、静かな環境で執務するエリア

    ●ワークポッドの導入
    オンライン会議や重要な電話等、完全防音で集中できる空間

    参考:株式会社ポニーキャニオン

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