コーチングとは、相手が目標の状態に到達することを目的とした1:1のコミュニケーションツールです。昨今のビジネス業界では1on1として再び注目を集めています。
今回は、コーチングの意味や基本、具体的な活用ポイントを中心にご紹介します。

コーチングとは
コーチングとは、相手と対話や質問、提案によってコミュニケーションを取ることで、相手の可能性を最大限に引き出し、モチベーションアップにつなげる目標達成ツールの一つです。企業のコーチング担当者は、相手がスムーズに話せるよう、「共感する・傾聴する・認める・後押しする」といった心構えが必要といわれています。
コーチングは主にビジネスシーンで使われていますが、他にも人材育成の意味合いとしてスポーツや芸術などの分野でも活用されています。
コーチングに類似している言葉のなかで、ティーチングとカウンセリングがあります。この2つの違いは、次のとおりです。
コーチングとティーチングの違い
ティーチングとは、語源が英語の「teach(教える)」が由来ということもあり、先生と教え子の関係をを踏襲した人材育成方法です。イメージとしては、上長が部下に対し指示や提案するスタイルのコミュニケーション方法です。
ティーチングには、相手の話を傾聴する、共感する対応は盛り込まれていないのがコーチングの違いともいえるかもしれません。
コーチングとカウンセリングの違い
カウンセリングとは、相手の悩みや不安に思っていることを解決し、相手の気持ちを整理することを目的としたコミュニケーション方法です。
カウンセリングは自分の知見や経験を事例としてアドバイスする点では、コーチングと共通していますが、最終ゴールがあくまでもお悩み解決です。「目標達成」のコーチングとの違いを挙げるなら、最終ゴールが異なっていることが挙げられます。
コーチングがもたらす3つの効果
コーチングをすることで相手にどのような変化があるか知りたいという方もいることでしょう。この章では3つの効果について解説します。
①行動が自発的になる
コーチングによって、相手が目標達成できるよう自分なりの考えと答えを見つけられるようになるので、自発的に考え行動できるようになります。課題解決能力も高まることでしょう。
②生産性が上がる
コーチングを通してコミュニケーションを図ることで、部下が抱えている悩みや問題を把握できるようになります。例えば、煩雑な業務を数名で分担することで、課題が解決し、チームや組織の生産性の向上をもたらすこともあり得るでしょう。
③部下の適性がわかる
コーチングを行うと、上長と部下のコミュニケーションが活性化され、上長は部下の適性が把握できるようになります。部下の適性に合った業務のアサインがしやすくなり、部下が自分の能力を発揮でき、成果を出しやすくなります。部下も「認められている」という思いが強くなり、自己肯定感が高まるかもしれません。
コーチングをする場合の注意点
企業でコーチングする側は、ただ部下の話を「共感する・傾聴する・認める・背中を押す」だけではありません。部下の持っている能力を確実に引き出せるよう注意点を知っておくことも大切です。主な3つの注意点を解説します。
①一度に多くの対象者にアプローチできない
ティーチングの場合は、講師のように少人数から大人数まで研修スタイルで教えることができますが、それに対し、コーチングはマンツーマンでの対応するのが基本です。つまり、コーチングに対応できる人的なリソースの確保が必要です。コーチングする側も日常業務があるため、ケースバイケースでティーチングを導入することも視野に入れておきましょう。
②短期間では効果が見えにくい
コーチングの特性として、受ける側が課題を解決する方法を習得することを軸としています。また、解決すべき課題は人それぞれであり、すぐには「やり方を習得できた」という流れにはなりません。部下が継続して取り組めるよう、上長は長い目で見守る心構えが必要です。
③相性で効果が変わる
コーチと部下の相性が合わないと、内容的には申し分のないコーチングでも良い効果を得られません。相性の良し悪しについては、人によって感じ方や捉え方は異なりますが、コーチが傾聴できないなどのコーチとして相応しくない行動によって相手が心を開けなかったのでは意味がありません。導入する際は、コーチ役の従業員と部下が性格を考慮したアサインが必要です。
コーチングに必要な3つのスキル
実りのあるコーチングをするには、主に次の3つのスキルの習得が必要です。詳細について解説していきましょう。
①傾聴スキル
傾聴とは、相手の気持ちになって、共感しながら話を理解しようとすることです。特に相手がどういう思いで話しているかをくみ取りながら話を聴くことが、傾聴のポイントと言えるでしょう。
傾聴で注意したいのが、コーチ役がリードしてしまうことです。相手の口数が多い少ない、話の上手下手に関係なく、相手が話をできる環境をどうすれば良いか考えることが必要となります。
②質問スキル
コーチングの質問スキルの概念とは、質問する能力を育むことではなく、課題点を相手自身に気づかせることです。このようなスキルが身につくと、問題解決に向け具体的な行動へと促すきっかけを与えることができます。
ただ単に質問して答えてもらうものではなく、人として成長できる機会を考える内容を考えることが肝心です。
ただし、質問数を多く設けると、相手が答えることに疲れてしまうので、配慮が必要になるでしょう。
③承認スキル
コーチングにおける承認スキルとは、相手の成果とそれに紐づく変化や成長を相手に伝えることです。伝えるポイントは、「具体的に・なるべく早く・一貫性を持つ」の3つです。ただ褒めるのではなく、どんな点が前と比べて成長しているのか具体的に伝えることが大切です。承認の積み重ねにより相手の自己肯定感が上がり、チームや会社にも良い影響を与えます。
コーチングが効果的なビジネスシーン
日常業務でコーチングした方が良いというシーンがあるかもしれません。ではどのようなビジネスシーンでコーチングが効果的なのでしょうか。ここでは主な4点を紹介します。
①業務を円滑に進められていないとき
業務知識を持っているのにもかかわらず、日常の業務を思うように進められない場合があります。例えば、3人でやる業務を一人で抱えていて、業務が滞りがちという事例です。コーチングを実践することで、解決策につながることがあるかもしれません。コーチングを通して、どんな課題があるのか質問を重ね、前向きに業務に取り組めるようにフォローすることも大切です。
②業務のルーチン化で意欲が低下しているとき
業務がある程度できるようになり、それがルーチン化すると、やりがいを感じにくくなるケースが生じます。コーチングを採り入れることで、対象者が現状の話や思いを示すことで再び「仕事を頑張る」という意欲が湧いてくるかもしれません。
③自信がもてず、次の行動にふみ出せないとき
従業員のなかには、スキルや能力が備わっていても、自分に自信が持てないという不安を感じるケースがあるかもしれません。この場合、定期的なコーチングによって、相手が承認されることが増えると、自分に自信を持って業務に取り組めるようになります。
④人材育成を強化したいとき
人材育成にもあらゆる手段がありますが、コーチングとして実施する場合、主体性および自発性を発揮しやすくなり、新たな可能性を引き出すことができるようになります。
コーチングの効果を事前に知っておくと課題解決につながる
コーチングは、上長から部下に自発的な行動や言動ができるよう促し、モチベーションアップにも活用できる指導方法の一つです。本記事で記載した効果と自社の課題を照らし合わせると、コーチングの方向性が見えてきます。社内の風土改善の一つとしてコーチングも検討しておくと良いでしょう。
