働き方改革関連法をわかりやすく解説!基礎知識や意義、法案内容を紐解く

    目次

    2019年に入って関連法が施行されたこともあり、働き方改革は企業にとって重要な経営課題となってきています。スムーズに改革を実行して効果を実現するためには、働き方改革の内容を正確に把握しておくことが欠かせません。そこで、人事・総務などの担当者が知っておくべき働き方改革の意義や関連法案の内容など主要な論点について、わかりやすく解説します。

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    働き方改革の基礎知識

    働き方改革について詳細まで理解するにあたっては、改革の主旨や関連法の基礎知識を把握しておくことが必要です。ここでは、働き方改革の主旨と働き方改革関連法についてわかりやすく紹介します。

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    働き方改革の主旨

    働き方改革は、政府が掲げる1億総活躍社会の実現に欠かせない改革です。従来から当たり前になっている企業内の慣行や労働環境を大きく見直す取り組みを推進することを目指しています。日本国内では少子高齢化が進行している状況です。

    その結果、将来において生産年齢人口が大幅に減少することが懸念されています。生産年齢人口が減少すれば、労働者が不足して経済活動を維持することが難しくなってしまうでしょう。あらゆる業種や地域で労働力不足が生じる可能性があるなかで、どのように不足した労働力をカバーするのかが課題です。

    労働力不足を補う1つの方法は、働く意思があっても、性別や年齢、家庭環境などによって働くことをあきらめざるを得ない潜在的な労働力を活用することです。そのためには、働くことを妨げている要因を排除して働きやすい環境を整える必要があります。働き方改革を実行することによって、さまざまな事情を抱える人材に対して就業機会を提供し、多様な働き方を選択できることにつなげようというのが改革の主旨です。働き方改革のスローガンを掲げ、ワーク・ライフ・バランスを確保しつつ、あわせて生産性の向上による労働時間削減に具体的に取り組んでいる企業もあります。

    働き方改革関連法

    働き方改革の推進は、政府や厚生労働省の後押しする形で進められてきた経緯があります。国が後押しする有効な方法は、関連する法律の改正です。法改正を行うことが、働き方改革を単なる掛け声だけに終わらせず、実効性のある改革につながります。2018年6月には国会で働き方改革関連法案が成立し、7月に公布されました。施行に関しては、2019年4月から順次行われている状況です。すでに働き方改革関連法に基づいて、企業は改革を進めていく必要があると強く認識する必要があるでしょう。

    働き方改革は三本の柱によって構成されています。第一の柱が示しているのは、改革が目指す方向・方針です。第二・第三の柱では、方針だけにとどまらず、具体的な取り組みに関してまで踏み込んだ内容になっています。第二の柱では長時間労働の是正について言及しています。ワーク・ライフ・バランスや多様で柔軟な働き方を実現できる環境を整えることを具体化するための柱です。第三の柱では、公正な待遇の確保が掲げられています。雇用形態などによって不公正な待遇格差が生じている状態を是正することが目的です。代表的なポイントとしては、同一労働同一賃金があげられます。

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    働き方改革の主要な4つのテーマ

    働き方改革には、主要なテーマが4つあります。労働時間の短縮、不公平は待遇格差の是正、多様で柔軟な労働環境の整備・実現、生産性の向上の4つです。そこで、4つの主要テーマの詳細について説明します。

    労働時間と時間外労働

    1つ目の主要テーマは、時間外労働などを含む労働時間に関することです。働き方改革のなかでも、労働時間の削減は大きなテーマとなっています。政府だけでなく企業としても、いかに労働時間を短縮して効率的な働き方を実現するかについては熱心に取り組んでいるテーマです。労働時間の短縮を実現できれば、従業員の働き過ぎを防止して健康維持やワーク・ライフ・バランスの実現につながります。また、時短勤務・フレックスタイム制度など、以前とは異なる発想の働き方を導入することによって、多様な働き方を実現することも大切なポイントです。

    働き方改革法案は、改正対象となる複数の法律を一括した名称です。関連する法律のなかでも、「労働基準法」や「労働安全衛生法」は大幅に見直されることになりました。改正内容としては、時間外労働の上限規制や、勤務間インターバル制度の導入、産業医・産業保健機能の強化などが盛り込まれています。特に注目すべき点は、時間外労働の上限についてです。「原則として月45時間、年360時間」と定められたことはよく認識しておきましょう。また、年5日の年次有給休暇の取得義務化などが定められ、罰則規定も盛り込まれました。

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    不公平な待遇の格差是正

    2つ目は、不公平待遇格差の是正についてです。労働時間に関することだけでなく、労働者に対する公平な待遇を確保することも、働き方改革の重要な論点の1つとなっています。不公平格差を是正する目的は、同一労働をしているにもかかわらず、正社員・非正規社員といった雇用形態の違いによって待遇に格差が生じているために、多様な働き方が阻害されていると懸念されているからです。そういった状況を改善するために、働き方改革の第三の柱には「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」という文言が盛り込まれました。

    雇用形態が正社員でも非正規社員でも、同じ仕事をしている労働者に対して公平な待遇が確保されるようになれば、モチベーションのアップや多様な働き方の選択肢の確保につながります。非正規雇用といっても、その形態は期間雇用からパートタイムまでさまざまな形態が存在しています。それぞれへの待遇について、同一労働という視点で見直すことを要求しているのが、不公平待遇格差の是正のポイントです。不公平待遇格差の是正に関連して改正された法律としては、「パートタイム労働法」「労働契約法」「労働者派遣法」があげられます。また、労働者への待遇の説明義務の強化、行政による履行確保措置、裁判外紛争解決手続などに関しても整備が行われています。

    多様かつ柔軟な労働環境の整備

    3つ目の主要テーマは、多様かつ柔軟な労働環境の整備です。働き方改革では、家庭環境などが原因で働けない状況にある人でも、多様な働き方の選択肢のなかから自分に適した働き方を見つけて労働参加できる環境を整備することも重要視しています。従来の雇用慣行においては、転勤が前提となっているキャリアやフルタイム労働、残業の常態化などみうけられました。また、年齢や性別、家庭環境などによっては勤務が困難で働けないという状況があったことも事実です。そういった雇用環境では、働く意欲があるにもかかわらず、各個人が抱える事情によって働くことをあきらめざるを得ないケースも珍しくなかったでしょう。

    働き方改革は、そういった環境を変えることも目的の1つです。働き方改革を実行することによって、労働時間の見直しやパート・アルバイトなどの不合理な待遇格差を解消し、個々も事情に合わせた働き方を選択できる環境が整うことが期待されています。法律にも、法改正の目的は個々の抱える事情に応じて多様で柔軟な働き方を自ら選択できるようにすることだと明記されています。

    生産性の向上

    4つ目のテーマは、生産性の向上です。働き方改革は、単に従業員の待遇を改善することだけを目的とした改革ではありません。従業員の待遇改善は、企業の生産性向上に直結しています。待遇改善が従業員のモチベーションアップなどにつながり、生産性が向上する可能性が高いのです。生産性が向上すれば、企業の利益向上にもつながるでしょう。改善余地がある典型的な企業としては、本来効率化が可能である仕事内容であるにも関わらず、長時間労働が当たり前になっている企業があげられます。そういった企業では、働き方を見直し、無駄を削減した結果、労働時間が減少したうえパフォーマンスが改善したという事例があります。

    また、人手不足で生産性が向上しない企業も、働き方改革を実行することによって職場環境を改善できれば、生産性向上の実現が期待できるでしょう。改革によって魅力ある職場環境を整えることができれば、より優秀な人材確保に成功できる可能性が高くなり生産性を向上させることが可能です。また、作業時間の短縮を図れば、それまで手が回らなかった業務にも対応できるようになり、生産性が向上すると期待できるのです。

    企業が意識すべき働き方改革関連法の適用時期や罰則規定

    働き方改革を推進するにあたっては、働き方改革関連法に関して正確に理解しておくことが欠かせません。特に、改革推進に関連が深い企業の担当者は、法律の適用時期や罰則についても把握しておく必要があるでしょう。そこで、働き方改革関連法の適用時期と罰則規定について解説します。

    適用時期は項目と企業規模によって異なる

    働き方改革関連法は2018年には成立・公布されていましたが、施行は2019年4月1日から順次行われています。すべての改正法が同時に施行されているわけではない点に注意が必要です。また、企業規模によって適用時間が異なる法律もあります。そのため、自社がいつから適用時期に入るのかについて十分確認しておくことが重要です。大企業と比較すると、中小企業は制度改正に対応する負担が大きいため、適用時期については一定の配慮がされています。具体的には、大企業は原則通り先に適用が開始され、中小企業については一定期間猶予される仕組みです。

    「残業時間の上限規制」において「原則として月45時間、年360時間」と定められている点については、大企業は2019年4月1日から適用開始です。一方、中小企業には2020年4月1日から適用されることになっています。また、月60時間を超える残業についても、大企業は割増賃金率が50%は2019年4月1日からとなっていますが、中小企業は2023年4月1日から適用と猶予期間が設けられています。さらに、同一労働同一賃金ガイドライン」の適用は、大企業は2020年4月1日から、中小企業は2021年4月1日です。

    罰則が規定されている項目もある

    働き方改革関連法では、企業に対する努力義務規定の項目が多数定められています。また、所定の手続き要件を求める項目や罰則規定があることにも注意が必要です。罰則規定が定められている項目としては、年次有給休暇の取得義務の項目があげられます。企業は従業員に対して年次有給休暇5日を取得させることが義務付けられました。これに違反した場合は、「30万円以下の罰金」という罰則が規定されています。また、時間外労働時間の上限規制に違反した場合の罰則は、「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」です。

    さらに、高度プロフェッショナル制度に関しては、所定の手続きを経ないと有効にならないと規定されています。高度プロフェッショナル制度とは、高度・専門的な業務を行う一定の人については残業時間の上限規制の例外とする制度です。この制度の対象者を決める場合は、労使間の合意だけでは不十分とされています。労使委員会を設置して決議を行ったうえで、労働基準監督署への届出が求められることを知っておきましょう。人事や総務など、企業内で働き方改革に関連する業務を担当する人は、罰則や手続きに関して正確に理解し、確実に対応することが重要です。

    働き方改革の課題と成功のポイント

    働き方改革を進めていくうえでは、課題もあります。課題を解決しながら成功させるためには、いくつかのポイントを知っておくことも大切です。働き方改革の実行は、従業員の健康や労働環境整備のためにも待ったなしだといえます。しかし、実行しなければならないとわかっていても、過去から続く組織風土や習慣を変えるのは簡単なことではありません。変更することに抵抗がある人もいるでしょう。残業時間削減などの改革を実行するうえでは、管理者や総務部、人事部だけが懸命に旗振りするだけでは実現することは難しいです。各従業員の意識が変わらない限り、改革の実現・成功は期待できません。

    従業員まで含めて改革に前向きに取り組めるようにするためには、働き方改革の実現は負担になることではなく、生産性向上やワーク・ライフ・バランスの確保につながるとしっかりアピールすることが有効です。各従業員が改革のメリットを理解できれば、積極的に改革に取り組むようになると期待できます。また、改革の実現には、個人のモチベーションを維持させる仕組みづくりも重要なポイントになるでしょう。

    働き方改革制度への対応と魅力的な職場作りの両立が理想

    働き方改革は、労働環境を整備し生産性向上を目指す改革です。労働時間削減・残業時間条件規制や不公平待遇格差解消などのテーマも含まれています。改革に携わる総務・人事担当者は、制度を理解して適切に対応することが必要です。改革推進をきっかけに、法令順守はもちろん、従業員の働きやすさ確保のためにも、多様な人材が活躍できる環境づくりを意識するようにしましょう。

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