採用面接時にカルチャーフィットを採り入れることで、入社後の採用のミスマッチを避けることができるといわれています。
本記事では、カルチャーフィットの見極め方、メリットや注意点、質問方法など、企業の人事担当が知っておきたいコツを解説します。

カルチャーフィットとは?
カルチャーフィットとは、採用候補者や入社した方が企業特有の文化に求職者の価値観・考え方が適合できてるかどうかの指標を指す言葉です。例えば、入社した人材が自社に馴染めているか否か、エントリーした方が自分の会社の社風に合っているか、チームプレーが重視の仕事に抵抗があるか否かなどの意味合いで使われており、「価値観マッチング」などと表現されるケースもあります。
対義語はスキルフィット
カルチャーフィットに紐づくワードとして「スキルフィット」というものがあります。こちらのワードの意味合いとしては、個人が持っている能力と、企業側が求めている採用候補者に求める能力の一致の度合いです。
特に 中途採用においては、前職で培った能力で即戦力となる人材を求める傾向です。採用に関しては、採用候補者が自社で活躍できるレベルの能力があるか、自社が求人を行っている業務と採用候補者の能力の親和性が高いかなどの確認を入念に行っています。
採用時にカルチャーフィットを意識している背景
近年の日本企業では、採用活動の段階でカルチャーフィットを意識している傾向です。その理由として挙げられるのが、採用した人材が自社の雰囲気に十分に馴染めず、目に見えた成果を上げる前に離職する人が多かったからです。
また、ここ数年で新型コロナウイルスの流行によって、日本でも多くの企業がリモートワークを導入し、対面で仕事をする機会が減りました。それによって、リアルでのコミュニケーション不足が懸念点となっており、会社に馴染みにくいという層が一定数います。このような時代背景もあり、カルチャーフィットを意識した採用活動が考えられるようになっています。
カルチャーフィットを行う際のメリット
自社の今後の運営のためにも、企業側が考え方やスキルが合った人材を求めるのは、ごく自然のことです。カルチャーフィットを行うメリットはどのようなものがあるのでしょうか。詳しく解説していきましょう。
①早期離職の低下につながる
まず1つ目に、早期離職の低下につながることです。細かい採用基準を設け、自社の社風や価値観・考え方にフィットした人を選び採用しているので、入社後のギャップを理由に退職する割合を減少できます。
②職場環境に適応しやすく、生産性の向上につながる
カルチャーフィットを経て採用された場合、職場環境の適応が早ければ、「自分には何を求められているのか」などの判断がしやすくなり、生産性の向上にもつながります。入社した方の心理的および身体的な負担が軽減されることでしょう。採用担当者や所属部署の負担が軽減される見込みがあります。
③コミュニケーションが円滑になる
カルチャーフィットの導入で採用された人材は、同じような価値観や考え方を持っているので、コミュニケーションが円滑に進む見込みがあります。さらに人間環境も良好な関係性を生み出せるので、居心地の良い職場環境になる見込みがあるでしょう。
カルチャーフィットで知っておきたい注意点
カルチャーフィットはメリットだけではありません。導入する上で注意点もあります。
①多様性の喪失につながることも
過剰なカルチャーフィットによって、同じような価値観や考え方を持った従業員の割合が多くなってしまう場合があります。多様性を受け入れにくい社風となってしまい、新しい発想や議論が出にくくなるというリスクもあるかもしれません。
②スキルの高い人材を見逃す可能性がある
自社のカルチャーフィットに合った人材の採用にこだわりすぎると、スキルの高い人材を見逃す恐れがあります。やはり自社の発展を考えるとカルチャーフィットに合った人材だけでなく、スキルの高い人材の採用も必要です。
スキルの高い人材を求めているのであれば、自社のカルチャーフィットの基準を採用担当者にきちんと伝えることが必要です。基準が明確になっていると、自社のカルチャーフィットに合うだけでなく、スキルの高い人材に巡り合う確立が高くなるかもしれません。
企業のカルチャーを醸成するには?
企業にはそれぞれの「軸」となるカルチャーがあり、従業員の間で醸成する必要があります。では実際に醸成するには、どのような心がけが必要なのでしょうか。詳細は以下のとおりとなっています。
カルチャーを言語化し、社内に共有する
企業のカルチャーを言語化することで、従業員が共通の言語で自社のカルチャーを理解でき、より一層カルチャーが浸透しやすくなります。このような取り組みによって、従業員の一体化が図れるようになり、ブランディングが成功することでしょう。
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カルチャーに沿った社内制度を作成する
従業員同士にとって必要なコミュニケーションのほかにも、企業のカルチャーに合わせた制度を定めることで、日常の業務に企業のカルチャーを採り入れることができます。
定期的な社内研修を行う
企業オリジナルのカルチャーを長期的な目線で従業員に浸透させたい場合、定期的な社内研修を実施するのも有効的です。何度も研修を受講していると、企業カルチャーが頭のなかにインプットされる見込みがあります。
カルチャーフィットの7つの見極め方
カルチャーフィットを見極める主な方法は7つです。こちらでは詳細を解説します。
①自社のカルチャーを明確に示す
採用活動中や入社後にお互いの価値観や考え方の齟齬が生じないよう、「自社の適切な人材」について採用担当者や面接官、上層部と話し合い、コーポレートサイトや採用ページにどのような内容を記載するか決めておきましょう。
②採用候補者の価値観と考え方を深堀りしておく
カルチャーフィットを見極めるには、企業側が求めている価値観や考え方を採用候補者に伝えるのだけではなく、採用候補者の価値観や考え方がどのようなものであるか深堀りして聞くことも忘れずにしておきましょう。
企業側は、「急なアサインをお願いされても抵抗がないか」などのカルチャーフィットを見極められる具体的な質問をいくつか考えておき、採用候補者の考えと企業側が適合できるかなどを見極めましょう。
③複数社員による面接の実施
採用候補者が自社のカルチャーにフィットしているかどうかは、人によって人物の捉え方が異なるため、担当者一人だけで採用を判断するのは難しいでしょう。また、営業志願者であれば営業部門だけで採用の合否を決めるのも、自分の部門に合うか合わないかという狭義の範囲で捉えてしまいがちなので、おすすめできません。
カルチャーフィットにまつわる理想的な面接は、人事総務・採用候補者の希望所属部署などの複数の部署の社員で進めることです。あらゆる視点から見て、自社が求める人物像であるかがより細かく判断できることでしょう。
④自社イベント・ワークショップなどを実施する
採用面接や筆記のみの採用の場合、採用候補者がどんな人物像であるか把握しにくい場合があります。企業側は、面接以外にも自社でイベントやワークワークなどを実施すると、オフタイムの採用候補者の姿がわかり、見極めがつきやすくなります。
⑤適性検査を実施する
カルチャーフィットを見分ける場合、どうしても人の目だけで判断すると主観的になる可能性が生じます。適性検査も導入しておくことで、客観的な判断にもつながるので、より多角的な視点で採用候補者を決められます。
⑥リファレンスチェックを実施する
リファレンスチェックとは、採用候補者が前職でどのような勤務態度だったか人柄だったかなどを採用候補者とつながりのある人に確認することを指します。採用候補者の意外な一面を拾いだせるかもしれないので、リファレンスチェックの実施も有効的といえるでしょう。
関連資料
リファレンスチェックとは
⑦1DAYインターンの実施
1DAYインターンとは、身近なワードで言い換えると職場体験です。自社でお試しで1日働かせることで、採用候補者の仕事の進め方、人間性が把握しやすくなります。今後の採用の有無を判断する際に1DAYインターンの行動や言動が役に立つかもしれません。
面接時に活用できる!カルチャーフィットを見極める質問例
カルチャーフィットを行う目的として、採用候補者のことを知ることが含まれます。こちらでは面接時の役に立つ質問例について解説していきましょう。
自社のカルチャーに対する考えを質問する
採用候補者に自社のカルチャーを質問するということは、自社のことを理解している否かを把握できます。加えて、採用候補者の回答が自社の価値観や考え方に相応しい内容であるかも判断できるかもしれません。
STAR型の質問をする
STAR型とは、Situation(状況)・Task(課題)・行動(Action)・結果(Result)の頭文字をとった質問形式です。これらの4つの視点で質問を深く聞くことで、採用候補者の思考や行動特性を知ることができ、スキルフィットと一緒にカルチャーフィットも見極められます。
仕事をするうえで大切にしている価値観を聞く
採用面接では採用候補者にこれまでの経歴を語ってもらうのがよくあるパターンですが、仕事をするうえで大切にしている価値観がどのようなものであるかということも聞いておきましょう。本来の人間性を把握する手がかりとなります。
今後のキャリアプランを聞く
採用候補者に今後のキャリアプランを面接時に聞くことも、自社のカルチャーフィットに合っている人材か判断できる材料となります。
逆質問をしてみる
面接時に採用候補者から逆に質問をしてもらうと、自社が求めているカルチャーに合っている、性格や価値観、仕事への考え方などがわかる場合があります。「○○さんから我々(=企業のこと)に質問していただけますか」と質問役を割り振りましょう。
カルチャーフィット導入で採用をしている企業事例
参考までに人材採用においてカルチャーフィットを導入している企業事例を紹介します。
「CULTURE BOOK」の発信で採用のミスマッチを回避|株式会社ココナラ
出典:株式会社ココナラ
株式会社ココナラでは、採用候補者のカルチャーフィットするかしないかを判断する基準を「人生のターニングポイントで何を選択基準にしたか」ということを定義しています。また、自社のバリューを「CULTURE BOOK」というWeb版の本にして公開しており、ココナラのバリューを社外の人たちに発信しています。
「共感」と「スキル」を大切にしたカルチャーフィット|サイボウズ株式会社
出典:サイボウズ株式会社
サイボウズ株式会社の採用では、共感とスキルを軸としたカルチャーフィットを大切にしています。採用面接では、「サイボウズでその人らしく働けるか」「役割を果たすことに楽しさを感じられるか」などを対話することを意識しています。
参考:採用で大切にしていること
「共感」をベースとしたカルチャーフィット採用を展開|株式会社manaby
出典:株式会社manaby
株式会社manabyでは、社会で自分らしく働けるよう、働き方の選択肢を増やす取り組みをしています。採用に関しては、共感と採用候補者の思い、ビジョンの共有を重視することで、人材が定着する仕組みを作っています。
面接でカルチャーフィットを採り入れるなら自社のカルチャーを定めておこう
自社に相応しい人材を採用するなら、自社がどのような取り組みで事業を展開し、人材を育てているか改めて考え、それらをカルチャーフィットとしてアウトプットする必要があります。
また、カルチャーフィットは適性検査などの導入をすれば採用後のミスマッチも避けることもできるので、人材の定着率も上がるメリットがあります。自社でさまざまアイデアを出しながら、カルチャーフィットを意識した人材採用ができるよう考えてみましょう。
