もしも部下に「1カ月間休み無しでもいいので、10連休を下さい」と言われたら、あなたならどうしますか?いくら本人の希望といえども、法律の視点はクリア出来ているのか、社会的に「ブラック企業」と言われないか、気になるところかもしれません。
働き方改革の重要項目ともいえる“働く時間”。いったい、法律上はどのラインまで連続勤務が許容されているのか、本来休日であった日に出勤した場合の振り替え休日の考え方はどうあるべきか。本記事では、労働者も雇用者も知っておかなければならないこの問題を、共に考えながら解説してきます。

法律上許される連続勤務の原則基準は?
法律において、連続勤務はどのように規定されているのでしょうか。労働契約上の最低基準を定めた法律である労働基準法での考え方を見てみましょう。
日数について
まず、日数ベースでの連続勤務についてです。
(休日)
第三十五条
1項:使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
2項:前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。
引用:e-Gov
休日については、週に1日以上の休日を求めるよう定められてます。しかし、2項に注目するとその限りではないことが分かります。4週間のうち4日以上の休日がある場合、すなわち“平均して週に1日の休みがある”と計算できる場合には、労働基準法の範囲内であることが明記されています。
連続勤務日数は何日間まで合法?
先述したように、労働基準法では労働者に対して、基本的に週1日の休日を与えるよう規定しています。このことを忠実に守って連続勤務日数を最長にしようとした場合、12日間となります。
少なくとも週に1日に休日があれば良いのですから、ある週の月曜日を休日にして、次の週の日曜日を休日にすると、その間の日数は12日間、という計算です。
しかし同時に、第三十五条第2項では休日を「4週間のうち4日以上」と定めているので、この場合の連続勤務日数は24日間となります。4週間=28日間の最後の4日間を休日し、それ以前の勤務日数は21日間、という計算です。
時間数について
次に、時間ベースでの連続勤務について見ていきます。
(労働時間)
第三十二条
1項:使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
2項:使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。
引用:e-Gov
これによると、例えばお昼の休憩時間が1時間だとして1日9時間の拘束が労働基準法で定めた最長時間となります。朝9時出勤の人の場合は、夕方6時が定時です。
連続勤務時間は何時間まで合法?
労働基準法では、1日の労働時間は8時間まで、と定めています。同様に、休憩時間については、6時間ごとに45分以上、もしくは8時間ごとに1時間以上確保されることを定めています。
残業に関する取り決め“36協定”
この場合、労働者と使用者が残業についての取り決めを行い、その合意に基づいて残業を運用していけば、法律上の問題がクリアになります。労働基準法三十六条によって定められているため、一般的には“36(サブロク)協定”と言われているものです。以下、同法の引用です。
(時間外及び休日の労働)
第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、(中略)その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
引用:e-Gov
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労働者と企業(使用者)が書面で残業や休日出勤に関する協定を結んで、労働基準監督署へ提出することで、その範囲内における残業は合法となります。一方で、協定の範囲を超えた残業や休日出勤、そもそも36協定を結んでいない中での残業は違法となります。
36協定が結ばれていたとしても残業時間に限度はあります。厚生労働省が労基署に行う通達に基づき、1カ月で45時間、2カ月で81時間、1年で360時間などと具体的な時間数が設定されています。
また、明確な理由のある繁忙期などの場合は、36協定にさらに特別条項を設置することで、上記の時間数を超えた残業が可能になります。しかし、この特別条項で残業時間の上限拡大ができるのは年に6回までです。
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変形労働時間制とは?繁忙期や閑散期の労働時間調整にメリットも
変形労働時間制とは、月単位や年単位の一定期間内で平均労働時間が週当たりで法定内ならば、時間外労働として扱わなくてもいい、という制度です。これにより、繁忙期と閑散期で人員体制のバランスを取りつつ、残業代などの人件費節約や、従業員のライフワークバランス向上につなげることができます。
労働基準法では、休日について“週に1日以上”を労働者に与えるように定める一方で“4週間で4日以上”を与えれば問題はないとしています。1日の勤務時間についても“8時間まで”とする一方で、“1週間で40時間まで”とも規定しています。
週単位や月単位、年単位で帳尻が合うように勤務日や勤務時間を足し引きする考え方です。
変形労働時間制のメリット
例えば、夏に収穫時期を迎えるマンゴー農園ならば、当然夏期に人手が必要で繁忙期となります。しかし時期によっては閑散期となることもあります。引越し業者なら、新生活を迎える前の3月が特別に忙しくなることが予想されます。
これらのケースでは、変形時間労働制を導入することで、労働者は閑散期には早く帰宅でき、プライベートな時間を増やせること、企業は残業代などの人件費を抑えられること、などのメリットがあります。
変形労働時間制のデメリット
反面、デメリットとして考えられる点もあります。取引先の他企業や、自社他部署と就業時間が合わずに業務がスムーズに進まない可能性があるということです。
せっかく変形時間労働制でその日の定時が早くなっていたとしても、このような状況に対応するために結局残業が発生してしまうことも考えられるため、計画や目的をしっかりと持った運用が求められます。
変形労働時間制の取り決め方法について
この変形労働時間制を実行するには、就業規則や労使協定で明確にし、労働者に書面で交付する必要があります。これにより、繁忙期などのある一定の期間において連続勤務日や連続勤務時間が例外的に長く設定されることがあります。
また、たとえ変形労働時間制により一時的に労働時間が長くなったとしても、単位期間内での残業時間が労働基準法で定められた週40時間を超えると、当然残業手当が発生します。
【ケース別】連続勤務日と休日にまつわる法令上のアウト・セーフ
以上のことを踏まえて、それぞれの事例に沿って連続勤務と休日について考えてみましょう。
①いつもは日曜日が休日なのに出勤になって、今週は1日も休みがない。
この時点では適法です。労働基準法では週に1日の休みを求める一方で“28日間で4日間以上の休日”があれば良しとされています。
しかし、仮に1週間を毎日8時間勤務で終えることができたとしても、週40時間を越えた労働は残業となるため、8時間×7日=56時間のうち16時間は残業時間として考えられ、残業手当を受けることができます。
②1カ月間同じ勤務先で休みなく働いて、来月に連休をまとめて取りたい。
労働基準法では“4週間(28日間)で4日間以上の休日”を定めているため、連続勤務が25日目に達した場合、労働基準法に違反することとなります。
③今月の残業が60時間を超えた。この調子だと来月もこのぐらいは残業するだろう。
企業が36協定を結んでいない、もしくは結んでいたとしても月あたりの残業時間の上限設定が60時間未満なら違法です。しかし、特別条項で例外が認められていた場合、この限りではありません。
労働日数や時間は、数字だけでは見えてこない
労働時間や労働日数は数字で管理されがちです。しかし、いくら数字上で労働基準法をクリアしていたとしても、週休0日が続いたり、実際に24日間も連続で働かせたりする職場が実際にあると、労働者は肉体的にも精神的にも負担が大きくなり、健康上の問題や最悪の場合には過労死を引き起こす可能性もあります。一般的には“ブラック企業”と呼ばれる職場であり、道義上の配慮や社内規則の整備などが求められることになるでしょう。
