エンプロイアビリティとは、従業員のキャリアアップや転職シーンなどで使われるワードの一つです。
本記事では、企業担当者が知っておきたいエンプロイアビリティの概要と種類、構成要素、そしてエンプロイアビリティポイントを高める方法について中心に解説します。

エンプロイアビリティとは?
エンプロイアビリティ(Employability)とは、「Employ(雇用する)+Ability(能力)」の2つの英単語を組み合わせた造語です。意味合いとしては、雇用されうるだけの能力と可能性を指します。
つまり、エンプロイアビリティが高い従業員は、チームならびに企業の成長発展に重宝される存在ともいえるでしょう。
そのため、企業が自社社員のエンプロイアビリティを高めることが重要なのです。
日本でエンプロイアビリティが浸透しはじめた社会背景
近年、日本でもエンプロイアビリティが幅広い層で知られるようになりました。
日本では終身雇用のスタイルがこれまで定着していましたが、社会情勢の変化も相まって、人材が流動しています。労働者の就業意識も変わり、「転職は当たり前」と考える風潮が一般に浸透したことで、エンプロイアビリティが注目されています。
なお、厚生労働省では、エンプロイアビリティに関するさまざまな情報を公開しています。
エンプロイアビリティの種類
エンプロイアビリティには4種類あります。詳細については次のとおりです。
相対的エンプロイアビリティ
相対的なエンプロイアビリティとは、時代の流れと、需要と供給の関係によって左右されやすい能力です。仕事場で「必要」という場合であれば、事前に人材の需要も高まりますが、その分、同じようなスキルを持った人材と供給が増えるとレッドオーシャンとなります。
つまり、時代のニーズや環境変化によって、必要または不必要となってしまう職種のことです。
絶対的エンプロイアビリティ
絶対的なエンプロイアビリティとは、時代の流れや景気のアップダウンを問わず人々から必要とされる存在として仕事を安定的に得られる能力のことです。
主に医師をはじめとした医療系の国家資格取得者や、弁護士や会計士といった士業系の国家資格取得者がこちらのカテゴリーに該当します。日本だけでなく、チャンスがあれば海外でも仕事を獲得できるといえるでしょう。
外的エンプロイアビリティ
外的エンプロイアビリティは、社内だけでなく、社外でも活躍できるスキルと知識を十分に兼ね備えている能力のことです。この能力があれば、転職しても採用されやすく、環境が変わっても臨機応変に業務をこなせます。
内的エンプロイアビリティ
内的エンプロイアビリティとは、企業や組織において特定のスキルを用いて一定の評価がされ、継続的に雇用される能力を指します。ほかにも、従業員のなかでも長期にわたって企業の業績に貢献できている層も内的エンプロイアビリティが高いといえるでしょう。
エンプロイアビリティの3つの要素
厚生労働省は、2001年に「エンプロイアビリティの判断基準等に関する調査研究報告書について」を発表し、公式ホームページでは以下の3つの要素について触れています。
出典
エンプロイアビリティの判断基準等に関する調査研究報告書について|厚生労働省
①知識とスキル
主に職務を遂行するために必要な、特定の知識および技能といった顕在的なことを指します。事例で挙げるなら国家資格と、これまでの経験をベースとした技術です。
②思考特性と行動特性
協調性や積極性、主体性などといった、業務をこなす際の本人の姿勢のことを指します。こちらは周りから見えやすい部分であり、従業員を評価する際の物差しといえるでしょう。
③パーソナリティ
ここでのパーソナリティは、個人の人柄や性格、価値観、信念、嗜好といったものが含まれます。何を考えているかがわからないということもあり、第三者の評価が難しいとも言われています。
エンプロイアビリティのメリット
企業がエンプロイアビリティを重視するメリットは主に以下の2つです。
従業員の能力とモチベーションが向上する
雇用される力を高めることは、従業員の各々のスキルアップに直結できます。エンプロイアビリティを従業員の評価対象にすることによって、自身のキャリアアップを目指す従業員が増えるとともに、モチベーションが向上し、企業にとって良いインパクトを与えることができます。
優秀な人材が集まりやすくなる
優秀といわれる人材は転職する際、自身の成長およびスキルアップ全般をサポートする企業を選ぶ傾向にあります。企業の求人広告でも、エンプロイアビリティの向上をサポートする旨をアピールすると、これからエントリーしたいと思う人が増えるかもしれません。
エンプロイアビリティの注意点
エンプロイアビリティの考え方には、注意点もあります。
離職の可能性が高まる
人材が買い手市場になってしまうと、自社の貴重な人材が流出し、離職者数が増えてしまうかもしれません。それを回避するためにも、企業は従業員向けのスキルアップのフォローと、従業員の能力に合わせた目標設定を考える必要があります。
導入コストがかかる場合がある
従業員全体のエンプロイアビリティを底上げする場合、企業側の導入コストがかさみます。例えば、スキルアップのセミナーの負担、学びを習得しやすい環境づくりは、多かれ少なかれコストがかかります。しかも継続的なサポートになるので、コストのことも考えなくてはなりません。
【従業員】エンプロイアビリティを高める方法
従業員がエンプロイアビリティを高める主な方法は次の2点です。
キャリアプランを明確にする
従業員のエンプロイアビリティを上げるには、「3年後にマネージメント職につく」など、各々が自分のキャリアプランを描けるようにすることが必要不可欠です。
そのためには従業員の自己分析が必要であり、自分の強みや弱み、克服すべき部分が何であるかを知っておくと適切なキャリアプランが立てやすくしやすくなります。
厚生労働省が作成した以下のリンクチェックシートを活用すると、キャリアプランを立てるヒントになるかもしれません。
エンプロイアビリティチェックシート 総合版|厚生労働省
市場でニーズのある人材要件を整理する
企業や組織で末永く重宝される人材になるためには、今、社会全般で求められている人材要件をニュースやWebで確認しておきましょう。ほかにも国内外の経済情勢によって、求められている人物像が変化する場合があるため、自身に足りないものを洗い出し、エンプロイアビリティを高める努力が必要です。
【企業】エンプロイアビリティを高める方法
企業側が行うエンプロイアビリティを高める主な方法は、以下の5つです。
社内の研修制度の土台を整える
従業員のキャリアを磨くには、個々でウェビナーを受講するのも一つの手ですが、社内主催の研修内容を企画し、それを制度化し、利用できるような土台を作りましょう。
人事評価基準に盛り込む
従業員が各々のエンプロイアビリティを高められるようにするために、定期的な人事評価基準として盛り込むと、従業員のブラッシュアップができるだけでなく、企業単位としても発展し続けるでしょう。
定期的なキャリア面談を実施する
従業員が企業や組織で長く活躍するためには、これからのキャリアにつながる業務のアサインをして成長する機会を設けていくことが大切です。とはいえ、アサインした業務が望まない業務というケースもあるので、お互いの齟齬をなくすためにも定期的に部下にチャレンジしたいことをヒアリングするなどのキャリア面談の実施をしましょう。ときにはキャリアコンサルタントといった専門家の力を借りながら、従業員各々がエンプロイアビリティを高める環境づくりに努めましょう。
研修制度のアップデート
エンプロイアビリティを高めるために研修は大切です。自社の一定水準のエンプロイアビリティまで高めた後は、それぞれに合わせた応用編のような研修内容を展開できるよう、研修制度のアップデートも視野に入れましょう。
リカレント教育
働き方の多様化や、定年引き上げによる勤続年数の長期化に伴い、その時代のニーズに対応できる教育が提案されています。その中でも「リカレント教育」が重視されており、従業員の能力開発やキャリアップにつながる施策がなされています。
参考:リカレント教育|厚生労働省
今後の企業発展のために
エンプロイアビリティを高めることは、社員個人の成長だけにとどまらず、企業の発展につながります。エンプロイアビリティの概要や種類、3つの構成要素を把握するだけでなく、今一度、自社のミッションや各社員の理想の姿を確認しましょう。
