不安とストレスを取り除くだけでうまくいく。北欧スタイルと経験が組み合わさったクラシコムの独自の働き方 #EXSummit


    株式会社OKANが主催する、エンプロイー・エクスペリエンスに着目した日本初の経営者と総務・労務・人事担当者が集う日本最大級のカンファレンスイベント<Employee Experience Summit>が3月7日(水)に行われます。当日はより深い内容をお届けできるようサミットの前段として、トークセッションに登壇されるゲストに、株式会社OKAN代表取締役 CEOの沢木が、バックグラウンドや実践されている取り組みを伺ったシリーズを掲載します。

    今回は「テーマ1:なぜ急成長する企業は働く環境に投資するのか?」に登壇する株式会社クラシコム 代表取締役 青木耕平氏です。ECサイト「北欧、暮らしの道具店」の運営に携わる従業員の働き方は独自のものばかり。今回はそこに焦点を当てて、女性が多く働く環境で、そのような考え方で経営されておりのかをお伺いしました。

    株式会社クラシコム 代表取締役

    1972年生まれ。株式会社クラシコム代表取締役。2006年、実妹と株式会社クラシコム共同創業。単独、共同創業通算で同社で3社目。翌年、賃貸不動産のためのインターネットオークションサイトをリリースするが、一年足らずで撤退。2007年秋より北欧雑貨専門のECサイト「北欧、暮らしの道具店」を開業し現在に至る。

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    株式会社クラシコム 代表取締役 青木 耕平氏

    会社は不安とストレスを取り除くだけでいい

    ―まずクラシコムさんにおいて働くことに関して、どのようなテーマを持たれているのかお聞きしたいです。

    弊社は従業員の8割が女性で、その中でも20台後半から30台前半の年齢で固まっており、かつ既婚率が8割ほどです。ですから妙齢で出産の可能性のある女性たちが、大半を占めています。しかも今のところ企業規模は、毎期それなりのスピード感で成長しており、多くの方が入社する状況があります。そういう意味では、ウィークポイントになりうる面があるわけです。すると世の中でうまくいっている汎用的な方法が必ずしも弊社では機能しない可能性があります。逆もまた然り弊社で機能しているものが、他の企業で適用できるかわかりません。

    ただ僕らの場合、採用がまずまずうまくいっていて、年間1000人ぐらいの応募をいただいている中から10人~15人を雇っています。優秀でカルチャーを理解していている方しか採用しないアドバンテージを持っているわけです。

    ―そこに対してのアプローチがあるわけですね。

    はい。そこで優秀かつ真面目で、事業の向かうべき方向性を理解している人たちから、どうやったら最大の生産性を引き出せるのかという問いになってくると思います。僕らは同質性が高く、同質の問題を抱えている。だけども一方でかなり優秀かつ真面目な人達しかいないという前提で考えた時に、必要以上にモチベーションを上げなくとも頑張ってくれることが基本にあります。そして会社が何をすればいいかというと、「不安とストレス」を取り除くだけでいいと思っています。

    職場での「ストレス」の大半は、人間関係です。さらに人間関係のストレスを分けると二つあり、一つは居てほしくないと思う人がいる。つまり採用基準に納得がいかない。これは採用のエントリーマネジメントすることで解決します。もう一つは個人間のコミュニケーション部分でうまくいっておらず、お互い悪気は無いのですが齟齬が発生してしまう。あるいはコンフリクトが起きてしまうと。そして「不安」は、子供ができて産休に入り復帰したら、あるいは親が介護になったらなど、今後起きうるかもしれないことに対して、会社が対応する用意ができていないと感じてしまうことです。

    つまり人間関係の問題を最小限にする取り組みと、先があらかじめ見えている状態を作りさえすれば、将来に対する不安がなく現在にストレスがないっていう状況になり、仕事に集中できるということです。

    働き方のコース設定で責任を明確に

    ―なるほど。今お話をお伺いして、すっと理解はできたのですが。当初からそういう考えを持たれていたのでしょうか?

    そうですね。僕自身それが普通であるという前提で会社を経営しています。たとえば僕は創業以来一回も残業をしたことが無いですし、そもそも社員に対して「僕たちの企業ビジョンはこうだから」という話をしたことも一回もありません。

    「やりがいがあって仕事が好きだ」というのも重要ですがその気持ちを長続きさせるのは大変です。だからこそこの会社で働くことが嫌ではないという状態を、作ることが重要になってきます。今はやる気を出させることにコストをかけすぎているイメージがありますね。最初から不安やストレスを潰せば、大したコストかからないという意識を持っています。

    ―そういう不安やストレスを潰している施策として、代表的なものはありますか。

    一番大きいのは採用ですね。誰と働くかが重要になってくるので、エントリーマネジメントに6〜7割注力しています。もう一つは時間的な制約がある人がいかにパフォーマンスをできるかを制度設計の中に組み込んでいます。

    僕らは基本的に全員が残業禁止なので、残業できない人は不利になりません。そうすると時間制約がある人が、みんなよりもハンデを背負って勝負していると思わない。これは結果的に、子供がいる・いないが成果を左右しないことになります。

    さらに弊社では働き方にコース分けをしています。Advancedコース、Basicコース、Shortコースの3つですね。Advancedのメンバーに、みなし残業代が入っており、何かトラブルで緊急対応しないといけないときなどに優先的に対応します。Basicは所定労働時間が8時間で、基本的に残業をしない。Shortは時短勤務となっています。Basic、Shortのメンバーは、トラブルが起こったとしても、定時に帰る権利がありますということですね。残ることが不利に感じることや、帰る人を申し訳ないという気持ちにさせないように、処遇でしっかりと差をつけています。

    ―なるほど、明確にしてしまおうということですね。

    そうですね。滅多にトラブルは起きませんが、「もしものことがあったら自分が」という覚悟を持ち続けるコストに、会社が給与で補う仕組みをとっています。またお子さんが認可保育園に入れない時に、認証や無認可の費用価格差を全額会社で負担するなど、どのポジションになっても生産性を強く引き出すために、会社は全力をサポートしているのがわかるようにしています。「充実して働ける」という事例を作り続けるってことが我々の中心的な組織上の課題で、成果を出すよりも、機嫌よく働いてくれることが重要です。

    ルーキーではないからこそできたこと

    ―ちなみに途中で「これはやはり少し違ったな」ということや時期がありました?

    それはないですね。

    ―ない!すごいですね。

    それにはいくつか理由があって、僕がまず34歳でこの会社をつくり、今の事業を始めて、人を雇い始めた時がすでに35歳だったというのが一つあります。また僕はこの会社の前にも別の会社を経営していて、ルーキーではなかった。あとは共同創業者の妹(佐藤友子氏)も結婚して、僕も結婚して子供もいました。

    ―先までこうしようと決めていたのですね。

    そうですね。それは大きいと思います。次に会社を作るなら、こういう風にやろうという状態から始めました。

    僕はもともとサラリーマン時代に、急成長したがゆえに歪みが出てしまい、その負の遺産をなんとかする業務に何社もあたっていました。そもそもその企業が最初からしっかり準備しておけば自分の仕事も存在せず、そして2、3年もかかってよい状態にわずかしか盛り返せない状態を経験していました。だから負の遺産がない状態で経営してみたいと、その頃から強く思っていたんです。

    またどの会社も共通して、女性の起用がうまくいっていませんでした。この部分に関しては、もったいないなとも思いながらも、自分がやるとしたらということも考えていました。そして重要なビジネスパートナーである人が女性で、家族があった。彼女がパフォーマンスを最大に発揮できる状態にならなければ、何の成果も出ず、僕だけだは何もできません。ではその人達の生産性を引き出すとしたら、こういう事が出来るよねという話になりました。シミュレーションを積み重ねて、成功事例がある状態で始めたからこそのこととも言えると思います。

    新規事業をやる時の重要視する3段階


    ―なるほど。ちなみに仮に青木さんが他の会社の経営を任されるとしたら、何からテコ入れしていますか。

    これはもう明確にありますね。僕らには新規事業をやる時の重要視する3段階があります。まず現場が乗る。客様の期待値を超える。そして儲かる。とりあえず最初に現場が盛り上がる設定をしなければ、何も起きないですよね。たとえば記事広告を始める際に、世間の一番高い記事広告の1.5倍で売れる設計を考えてもらう。すると「1.5倍で売れたらかっこいい」となる。でもどうせ売れないので、気軽にできる。もし1個でも売れたら現場は盛り上がるし、一番高い値段で売るというテーマも面白いですよね。その間、僕は何も関与していません。だから現場が乗る設定になっているかを、まず見ていますね。

    ―それを積み重ねて、今に至る分けですね。

    そうです。だからこそ「とはいえ」「結局〜」というのは言って欲しいと伝えています。「とはいえこっちの方が面白いけど」や「こっちのほうが乗るけど、結局できないから」を一個ずつ潰していくと、本当に面白くなりますね。まずは成果の出しやすいポイントを探して、小さくていいので成功させていく。それを水平展開させていくことをやっていくと思いますね。

    おしゃべりをできる環境が重要

    ―話題が少し変わってしまいますが、オフィスに対して何か意図してやっていることはありますか。

    オフィスは投資の一つですよね。まず快適さを重視しています。そのなかでも日当たりと風通しでしょうか。どのフロアも三面採光なので、日当たりはすごくいいです。かつ窓が開くので風通しもよくて、時期によっては開けっ放しにしています。あとはパーソナルスペースが広いです。一人あたりの机が160cm×80cmぐらいのサイズですが、それでも今では狭く感じています。リラックスできたりすればよいぐらいなので、あとは造作をかけていないですね。

    ―国立というオフィス立地はいかがでしょうか。

    中心地だとリクルート的に有利であるとか、さまざまな利便性あるかと思います。ですが僻地でやっているからこそ、活かせる部分はしっかり活かしていこうと思います。僕らにとっては坪単価が安価だからこそ手に入るフロアの広さなので、コミュニケーションスペースは充実させています。そういうスペースをおかないと、コミュニケーションがシームレスに行えなくなってしまうので。

    ―コミュニケーションスペースを設置している企業は多くて、機能していないケースがあると聞きます。御社ではなぜ機能しているのでしょうか。

    喋る時間があるからです。おしゃべりが本業って言っているぐらいなので。今の世の中は何かを作って出すところは圧倒的に効率化されています。ではなぜ時間がかかるかというと、意思決定の質が低いからです。だから意思決定の質が高ければ、アウトプットには本来そんな時間がかかることはない。そうすると十分なコミュニケーションすること以上に重要なことはないと思っています。インプットとコミュニケーションが本業で、アウトプットはおまけのようなものですね。

    今の時代は単純にミーティングを短くしようという動きが多いです。参加する意義を感じない人がいればムダですが、みんなが意義を感じているなら、長くてもよいとは思います。ただ「いいんじゃない」と言える生産性をどう作るかが大切で、システム面のサポートやフロー整備、やるやらないを明確にするとか。

    それができていたら、コミュニケーションスペースでおしゃべりはしますよね。ただ忙しすぎたり、会社のカルチャーとしておしゃべりを許さない空気があれば難しい。そうならないために収益性の高い経営をしなければならないのではないでしょうか。

    ―オフィス移転や社内制度はどなたが推進されているのでしょうか。

    僕ですね。総務部長のようなものなので、そういうことぐらいしか仕事がないです。

    ―普段どういうことに時間使われているんですか?

    おしゃべりしていますね。ほぼ1on1か面接です。部署ミーティングには参加しないですし、会議に参加すること自体、月に2回しかない。あとは個別のプロジェクト担当者なり、緩衝材となる部門のマネージャーに対して、提案や相談をしたり、思いつきの考えを投げてみてみたりしています。あっちこっち行きながら話していて…なんとなく羊飼いの牧羊犬みたいなかんじですかね。

    膨大な広告費を使っても世界変わらない

    ―女性が多い環境に対して、工夫されていることはあるのでしょうか?

    料理家の方が家族の分まで夕ご飯を作ってくれる週1回夜社食があります。持って帰れるので、週に1回は家に帰ってもご飯を作らないで済みます。それは旦那や同居されている親御さんがいいなと思ってくれればとも思っているんです。どうしても女性の人生は周囲の家族に影響を受けてしまいます。だから本当に家族まで含めてサービスをしていかないと、うまくいかないですね。たまに従業員の夫の相談にものったりします。

    ―そういった投資を抑えることはないですか。

    弊社はそもそも採用にメディアやエージェントをほとんど使わないので、お金がかかりません。オフィス賃料も安いので、根本的な立て付けが低コスト体質なんです。だから内装を良くしたり、料理を出したりするのは些細な出費という意識ですね。また全体の費用感からしても、びっくりするぐらい安い金額で済むので、抑えることはしないですね。

    ―意外と世の中の経営者の方は、そういうことに関して投資対効果があるという考えを持っていないと思います。

    社員自体が事業の価値であり、自社のファンであれば、「本当にお客様のためにやろうよ」の一言で全てが済みます。マーケティングコストに比べても、こちらの方が圧倒的に効率はいいです。そしてマネジメントもすごく楽で、会社が社員に対してここまでやっていると示すと、あとはその人自身が頑張ってくれます。膨大な広告費を使って宣伝したとしても、世界変わらないですよ。弊社ではマーケティング部がありません。だからCMOもいなければ、リスティング担当者もいない。何の技術継承もいらないので、弊社の仕事は極めて少ないです。


    ―すごくシンプルですね。その考えは、北欧からインスパイアを受けているものなのでしょうか。

    あります、まさにそうです。北欧はライフスタイル重視で成り立っています。社会が各サービスに求めているレベルが低い。全ての人はサービスの受益者であると同時に提供者なんです。僕らの国だと、サービスの提供者が受益者になった時に厳しい動きをする時がある。ですが北欧はサービスの提供者としてほどほどにやっていて、受益者としてもほどほどに要求している。結果として社会が成立するハードルが低くて、余裕があります。

    予備知識もなくはじめて行ったときに、名だたるグローバル企業のビルが19時には真っ暗になっていることに衝撃を受けました。その時はエンジニアである友達の家に泊まっていたのですが、ある日朝9時半に家を出て17時半に帰ってきて「びっくりするぞ。俺は今日最悪だった」というんです。理由を聞くと「なんと1日にミーティングが2本もあったんだ。信じられるか?」って。笑 こちらはあっけにとられました。

    日本と何が違うのかと思った時に、とにかく無駄なことを一切していないということだけでした。一人あたりのGDPみたら日本とスウェーデンで圧倒的な差がありますが、彼らの方が日本人より頭がよいわけではありません。日本人だって同じように真面目で、知識もあります。ただ仕事の2/3はやらなくてもいいことで、意味のあることは1/3しかないと気づきました。北欧の基本的な発想として、意味のある仕事だけに集中しようということなんです。この出会いがなければ、その可能性すら考えることはありませんでしたね。

    ―どのタイミングだったのでしょうか。

    前の事業から撤退した直後でした。だからそれまで色々思う部分はありつつ、北欧に行って気付いたことが混ざり、今の形になりました。

    ―大変興味深い話をありがとうございます。

    <Employee Experience Summit>関連情報


    【開催概要】
    ・日時:2018年3月7日(水)14:00〜20:00
    ・場所:東京都千代田区平河町2-5-3 Nagatacho GRID 6F
    ・主催:株式会社OKAN

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