フィードバックは、仕事をする上で大変重要な役割があり、日々の業務に何らかの良い効果をもたらし、かつ改善策が把握できるだけではなく、人材やチーム全体の育成にもつながることもあります。
こちらの記事では、企業でフィードバックを実施するときに役に立つ手法やポイントを中心に解説していきましょう。

フィードバックとは
ビジネス上でのフィードバック(feedback)とは、上長が部下の業務やアクションにおける評価や軌道修正すべき点を的確に伝え、部下の成長につなげることを指します。
そして、企業でのフィードバックは、基本的に評価面談および1on1の時間帯などで行われています。ほかにも、プロジェクトの振り返りのタイミングでも、フィードバックが行われているケースもあります。こちらではフィードバックする際に知っておきたいワードも解説していきましょう。
フィードフォワードの違い
フィードバックと類似したワードに、「フィードフォワード」があります。
フィードバックは、評価される側の過去と今の仕事への取り組みにコメントすることがメインですが、フィードフォワードにおいては目標達成に向けて何をしたら良いかを話し合う場。つまり、フィードフォワードの軸は未来(これから)のことになるわけです。
また、フィードフォワードが注目される理由として挙げられるのが、主体性のある意識が高い社員の育成ともいわれています。
コーチングとの違い
コーチングもフィードバックを検索するときに紐づくワードです。
コーチングというのは、相手に何らかの「答え」があるという前提で考えられており、コーチングする側はその答えを引き出すことに徹する手段です。
1on1
1on1とは、上長と部下の2人で実施する定期的なミーティングを指します。評価面接といった人事系の面談とは異なるものであり、あくまでも部下の成長を促すためのミーティングです。
この1on1はフィードバックの時間にあてられることもありますが、仕事の悩みを話してもらったり、これからのビジョン、目標の進捗などを擦り合わせたりすることもあります。
1on1の目安の時間は15〜30分の短時間であり、頻度は毎日や毎週、隔週、毎月といった比較的短いスパンで実施されるのが一般的です。
360度評価
360度評価とは、通常のフィードバックや人事評価とは異なり、上長やマネージメント層、同僚といった社内メンバーだけでなく、社外関係者なども交えて行う評価です。ポジション(立場)や関係性が異なる複数の評価者が、あらゆる角度から評価する手法です。
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フィードバックの種類
フィードバックには、主に2つの種類があります。立場上、フィードバックをするという人は知っておくと良いでしょう。
ポジティブ・フィードバック
ポシティブ・フィードバックとは、部下の日々の業務のなかで評価が高い部分をピックアップし、「○○さんのこの取り組みが良かった」といったニュアンスで言葉にして表すことです。上長から褒められることで部下は自己肯定感が高くなり、モチベーションの維持やアップにもつながります。
「褒める」要素が多いポシティブ・フィードバックですが、ただ褒めて終わりではなく、ゴールがどこに向かっているかという点を改めて確認し合うのも忘れずに行いましょう。上長と部下が本来の目的を再確認することで、部下は原点に戻って新鮮な気持ちで日々の業務に取り掛かかれるようになるかもしれません。
ネガティブ・フィードバック
ポシティブ・フィードバックとは真逆でネガティブ・フィードバックというものも存在します。ネガティブフィードバックは、部下の生産性が低い、目標がなかなか達成できない……などの気がかりな点があれば、上長はそれを放置せず何らかの軌道修正を促し、適切なアドバイスをすることです。
ネガティブ・フィードバックをする際に注意したいのが、部下をなるべく傷つけないような言い回しをすることです。上長が厳しい口調でフィードバックしてしまうと、部下のモチベーションが下がるリスクがあります。主観的ではなく客観的な口調で対応しましょう。
ほかにもネガティブ・フィードバックをする場合、複数のメンバーがいる場で行ってしまうと評価される側のプライドが傷つくので個別に対応しておくことがポイントです。
企業でフィードバックを活発に行う効果
企業でフィードバックを活発にさせる効果については、次の4つです。
モチベーションアップと、やる気を引き出せる
前のポシティブフィードバックでも触れていますが、フィードバックで上長やリーダーからポシティブなコメントをもらうと、受ける側のモチベーションがさらに向上し、やる気も引き出せる効果をもたらします。
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仕事のパフォーマンスアップが期待できる
上長やリーダーなどのフィードバックのテーマが、仕事を効率的に進められるコツなら、それを実践した部下の仕事のパフォーマンスアップが図れたという事例も。フィードバックは、部下の最適な仕事の進め方も確認できます。
優秀な人材を育て上げ、チーム力(組織)を強められる
フィードバックを定期的に続けて得られる効果は、部下が上長から求められていることを把握でき、「目標に何をすべきか」ということが認識しやすくなることです。このような取り組みによって、優秀な人材を育て上げ、強いチーム(組織)へと導けます。
業務上の問題点が洗い出される
日常業務でなかなか成果として表れないこともあるかもしれません。上長の視点や知見からフィードバックをすることで、部下本人が気づいていない問題点に気づくことができ、問題解決につながる見込みがあります。
フィードバックの手法
部下を納得させるフィードバックをするなら、手法についても知っておきたいものです。主なフィードバックについて解説していきましょう。
SBI(Situation Behavior Impact)型
SBIとは、「Situation(状況)」→「Behavior(行動)」→「Impact(影響)」の順でフィードバックする手法です。
この手法の特徴は、「どのような状況で」「どのような行動をとったか」という原因と、「(周りに)どのような影響が生じたか」という結果を段階的に伝えやすい点です。そして、SBI型のメリットは、フィードバック受ける側からの話をじっくりが聞けるので、聞き忘れの防止にもつながります。
また、SBI型形式で行う場合、ネガティブフィードバックとなる場合は注意が必要です。
評価者とフィードバックされる側の関係性があまり深くない、付き合いの日数があまり経過していないというケースの場合、良い関係性が構築されにくいことがあるので、おすすめできません。ネガティブフィードバックになる可能性があるなら、相手の今後を考慮してサンドイッチ型でフィードバックをした方が良いかもしれません。
FEED型
FEED型とは、Fact(相手が取った行動)→Example(取った行動を指摘する理由)→Effect(取った行動による影響)→Different(これからに向けての代替案および改善策)の4つの順序で説明していくフィードバック方法です。
相手の行動から次回の改善策まで一連の流れで伝えられるのが特徴で、相手に行動変容を促しやすい伝え方だと言えるでしょう。
KPT型
KPT型とは、エンジニアの開発現場における1週間の振り返りで活用されている手法であり、フィードバックをする際にも使われています。
「Keep(今後も持続するべきこと)」→「Problem(抱えている課題)」→「Try(改善すべきこと)」の順序で伝える流れとなっており、評価者と被評価者の双方がコミュニケーションを取りながら、評価者が被評価者が自発的に行動できるよう改善点を提案し、それを実践できるよう促します。
サンドイッチ型
サンドイッチ型とは、「褒める」というポジティブなフィードバックをする間に、改善点を指摘するといったネガティブ寄りなフィードバックを挟み込んで行う方法を指します。
「褒める」→「改善点を指摘する」→「褒める」という流れでフィードバックをすると、「○○を直した方が良い」などの改善点を指摘された相手のモチベーション低下による仕事への悪影響を抑えられる効果があるといわれています。改善点を伝えたい相手向けのフィードバックに適しているやり方といえるでしょう。
ペンドルトンルール
ペンドルトンルールとは、フィードバックする者が評価される側に対し、一方的に評価に関する内容を伝えるとともに、評価される者が主体的にアクションプランを考えるよう促し、サポートする手法です。
評価者と対象者の間でコミュニケーションを密にとりながら、対象者の主体性を最大限に引き出すのが特徴です。
効果的なフィードバックにするためのポイント
評価者が部下などの被評価者に効果をもたらすフィードバックをする場合、以下のポイントを考えましょう。
定期的にフィードバックをする時間を設ける
週1回や月1回などの定期的なフィードバックの時間を設けることは、お互いの信頼関係を高めることができます。仕事がやりやすくなり、仕事に対する意欲が高くなり、チーム全体にも良い効果をもたらしやすくなるかもしれません。
また、定期的なフィードバックはビフォーアフターをチェックできます。例えば「○○の仕事が前回はできなかったけど、今回はできるようになった」という成長も発見できるかもしれません。
次のステップに活かせるような具体的な内容を考えておく
上長といったマネージメント層などがフィードバックをしても、目標を定めないなど内容的に曖昧になってしまうと、フィードバックされる側も次に何をして良いか迷ってしまうのは言うまでもありません。
そんな状況を回避するには、フィードバックをする前に振り返る事項やヒアリングしたいことを具体的にピックアップすることが大切です。事前にフィードバックをする内容を考えるだけで、相手にも伝えたいことが具体的に伝わり、次のステップで何をしたら良いかが明確になります。
結果や実績のみの評価ではなく、取り組む態度に着目する
フィードバックをする際に大切なのは、被評価者の取り組む態度を評価することです。
結果や実績に着目したフィードバックになってしまうと、それに到達できなかった被評価者にとっては苦痛なものとなるのはいうまでもありません。フィードバックをする場合は、被評価者が日々どのような取り組みをしているかをフォーカスして評価しましょう。
適切な言葉を選んで対応する
あくまでもフィードバックを行う目的は、被評価者の成長を促すことと、目標の達成です。とげのあるような言葉を用いて話をしてしまうと、相手もやる気をなくしてしまい、フィードバック自体が無意味なものとなってしまいます。
フィードバックする側は、相手が腑に落ちるような建設的な言葉を用いて対応する必要があります。ほかにも相手が不安症や神経質な性格の持ち主であれば、より慎重に言葉を選びましょう。
早いタイミングでフィードバックを行い、先延ばしにしない
フィードバックをするタイミングが遅くなると、被評価者によっては「どうして早く言わないのか」「もっと早く言ってほしかった」などと不安を抱くかもしれません。フィードバックを早く行わないと、相手の問題点の解決ができず、成長する機会を失ってしまう可能性もあります。
仕事などの対応で忙しいかもしれませんが、早いタイミングでフィードバックする時間を作り、相手の目標達成ができるようにしましょう。
フィードバックを行う場所を考慮する
前にも触れていますが、ポジティブフィードバックであれば、内容的にも個別でもチームでもフィードバックしても良いでしょう。フィードバックを受ける側が良い評価だったことを周りに認知されることは、自信につながることもあります。
ただし、ネガティブフィードバックだと、内容的に周りに知られたくない内容もあるので、相手の立場などを考えて個別で行いましょう。
伝達方法(テキスト/対面)を最適なものにする
コロナ禍の影響で、フィードバックする形式も対面だったり、Webカメラだったりなど、やり方もさまざまです。じっくり話したいのであれば、対面やWebカメラの方が良いですが、相手の業務量などによっては、チャットやメールといったテキスト形式でフィードバックするのも良いかもしれません。
ただし、文字でフィードバックする場合、思っていることや改善したいことを記す際に、ストレートに書いてしまうと相手が傷つく可能性があります。全体的にやんわりとした表現が妥当なので、最初に労いのコメント→評価している点と改善点を盛り込んだ本題(※ここが肝心)→締め(※「何かありましたら質問して下さい」というニュアンスで締める)の構成で対応しましょう。
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目標や期待値に結び付ける内容にする
フィードバックの目的は、褒めたり、問題点の解決に向けて話すだけではありません。目標や期待値について話すのも、フィードバックの時間として含まれています。
目標や期待値が安定して達成している相手なら、それを維持するポイントを擦り合わせ、それが未達成の相手ならどうしたら達成できるかなどを考えさせるのも必要です。状況によっては、相手に何らかのアドバイスができるようにしておきましょう。
フィードバックで成長が見えない場合の対処策
フィードバックを行うことで、業績が上がったり、仕事への取り組みが変わったなどの良い効果を得られたというケースもありますが、一方でフィードバックを行っても改善されないという場合もあります。主な対処策については次の2つです。
伝え方を再考する
フィードバックを定期的に行っても改善が見られない場合、相手に原因があるだけでなく、フィードバックする側にも原因があるかもしれません。
これまでを振り返ってみて、口調がきつかった、話す内容がきれいにまとまっていなかったなどの思い当たる点があれば、伝え方を再度考えましょう。そして伝える相手の性格や個性についても、もう一度リサーチしましょう。
関係性をきちんと構築する
フィードバックする側と相手の関係性があまり良好でない、または希薄という場合、フィードバックをしても相手も十分聞き入れる状況でないかもしれません。コミュニケーション不足になっている可能性もあります。
このような場合は、フィードバック以外でも相手に対し「何かあったら連絡お願いします」というニュアンスで、こまめに連携を取る姿勢でいましょう。最初は、相手の反応も薄いかもしれませんが、やがて声をかけてもらっている安心感を抱くようになり、お互いの信頼関係を築けるようになるかもしれません。
効果的なフィードバックをしたいなら手法とポイントを深く理解することが肝心
フィードバックには、ポシティブフィードバックとネガティブフィードバックの2種類あり、業務の進捗や目標の確認、そして軌道修正すべき点などを話し合える発展的な場として位置づけられています。
企業でフィードバックの活性化させたいなら、フィードバックする側の手法とポイントの理解を促すことも必要です。相手の状況と性格によって、フィードバックする手法を変えるとより効果的なフィードバックができるようになります。
このような細やかな取り組みが、やがて優秀な人材の育成につながり、組織力が強いチームへと成長することでしょう。
