産業カウンセラー

    産業カウンセラーとは?企業に求められる背景と3つの役割を解説

    メンタル不調やハラスメント問題などのさまざまな課題に対し、適切に向き合うには専門的な知見が求められます。産業カウンセラーは、こうした悩みの解決に向け、支援を行う専門的資格であり、人事・労務業務との関連性も高いことから、管理部門で働きながら資格取得に興味を持つ人も少なくありません。

    ここでは、産業カウンセラーの役割や、その知見が求められる背景について解説します。

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    産業カウンセラーとは?

    産業カウンセラーとは、働く人々が抱える問題を自らの力で解決できるよう支援する資格や人のことをいいます。産業カウンセラーの資格を持つ人は、応用心理学の一分野である産業心理学に基づき、職場での人間関係の問題や従業員のメンタルヘルス対策、またキャリア形成への支援等を行います。

    産業カウンセラーは、2001年までは公的資格でしたが、現在は「日本産業カウンセラー協会 が認定する民間資格となっています。企業の経営者や人事担当者が取得し、従業員の支援に役立てたり、民間・公的機関などで働く人が取得し仕事に役立てるケースが多い点が特徴です。

    キャリアコンサルタントとの違い

    産業カウンセラーと同じく、企業の相談的役割として似たイメージを持たれるのが「キャリアコンサルタント」です。両方とも、「仕事の悩み」「職場のストレス」など、働くことに関連する支援職のため、関心を持つ人事職の人も多いでしょう。

    これら二つは、心理学的知見に基づき相談者の悩みに傾聴するという点で重なる部分はありますが、資格の種類やアプローチする領域に違いがあります。具体的には、産業カウンセラーは民間資格ですが、キャリアコンサルタントは国家資格です。そして、産業カウンセラーが「働く人々が自らの力で問題を解決できるように援助する」のに対して、キャリアコンサルタントは、「相談者が望むキャリアを示し、達成にむけて支援」を行います。

    産業カウンセラーは、キャリアコンサルタントと同様にキャリア支援も行いますが、メンタル不調やハラスメントの相談に乗る役割を担うこともあります。対して、キャリアコンサルタントの仕事は、理想のキャリアを実現するために求職者や学生への支援が中心です。

    どちらも「働く分野」で求められる資格という点では共通ですが、「誰に」「どんなふうに」アプローチするかに違いがあります。

     

    産業カウンセラー

    キャリアコンサルタント

    資格

    民間資格

    国家資格

    対象

    働く人々やその家族

    学生、求職者、労働者

    領域

    メンタルヘルス対策、キャリア支援、職場環境の改善

    職業能力の開発、職業の選択といったキャリア支援が中心

    スキル

    心理的手法、傾聴

    傾聴、助言、キャリア指導

    アプローチ

    相談者自身が自らの力で悩みを解決できるよう、心理学的知見に基づいてサポートする

    話し合いを通じ相談者の望むキャリアを示し、そのキャリアを達成するために必要なアドバイスを行う

    活躍の場

    ・社内のハラスメント相談窓口
    ・メンタルヘルス対策研修
    ・メンタル不調を抱える従業員の相談

    ・ハローワークの相談員
    ・大学の就職課
    ・人材紹介会社
    ・企業の人事部での組織開発

    産業カウンセラーの3つの役割

    働く人々の悩みの解決をサポートする産業カウンセラーは、主に以下の3つの領域で支援する役割を担っています。

    ①メンタルヘルス対策

    健康経営や従業員支援プログラム(EAP)など、近年、職場におけるメンタルヘルス対策の重要性が高まっています。産業カウンセラーは、メンタルヘルス対策の普及や、不調の際の対応、職場復帰の支援に加え、ストレスチェック後のフォローといった幅広い領域を受け持ちます。

    ②キャリア形成のサポート

    働き方の多様化が進む現代では、組織内だけでなく、企業の外に出ても通用するキャリア形成に興味を持つ人が多くいます。そうした人々に対して、キャリア開発の支援を行うのも産業カウンセラーの役目です。相談者のキャリアに関する悩みに耳を傾け、本人の希望を引き出すとともに、その人らしいキャリアが歩めるようアドバイスを行います。

    ③職場環境の改善

    人々がイキイキと働ける職場作りにも、産業カウンセラーは貢献します。パワハラやセクハラなどハラスメントの相談に乗ったり、組織診断に基づいた職場環境の整備を提案したりします。

    産業カウンセラーが求められる背景

    産業カウンセラーの役割が求められる背景には、企業におけるメンタルヘルス対策の重要性の向上があげられます。従業員がイキイキと働ける状態が、組織の成長や生産性に深くかかわっているとの認識が広まっていることから、そうした点を支援できる役割が求められているといえるでしょう。また、以下に挙げるストレスチェックの義務化やパワハラ防止法の施行など、法律面での変化も関連しています。

    ストレスチェックの義務化

    ストレスチェック とは、労働者のストレス状態を調べる検査です。労働安全衛生法の改正により、2015年12月からは、50人以上の労働者がいる事業所で、年に1回のストレスチェックが義務化されています。

    ストレスチェックの目的は、労働者一人ひとりが自身のストレス状態を知ることで、メンタルヘルス対策を学び実施するきっかけになります。また、部門やチームなど集団ごとの結果を分析し、職場環境の改善に活かすことができます。

    ストレスチェックは、医師や保健師、公認心理士などストレスチェック実施者が行いますが、それ以外に実施者の補助を行う「ストレスチェック実施事務従事者」が必要です。産業カウンセラーは、ストレスチェック実施事務専従者として、高ストレス者への補足的面談を行うことができます。

    また、メンタルヘルスへの知識を活かし、企業内での円滑なストレスチェック実施にむけ、導入サポートを行うことも可能です。

    参考: ストレスチェック制度導入マニュアル |厚生労働省

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    パワハラ防止法の施行

    2020年6月改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)により、大企業を対象にパワハラ防止対策が義務化されました。2022年4月からは、義務対象が拡大され、中小企業もパワハラ防止対策を行わなければいけません。

    パワハラ防止法では、事業主にパワハラ防止のための方針の明確化と周知、相談に適切に対応できる体制の構築、ハラスメントが発生した際の迅速かつ適切な対応といった措置を定めています。

    産業カウンセラーは、持っている知識やスキルを活かし、相談窓口の担当者として適切な対応ができます。また、社内でハラスメントを発生させないための研修を実施するなど、パワハラ防止につなげます。

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    メンタルヘルス対策の重要性の向上

    厚生労働省による「 令和2年 労働安全衛生調査 」によれば、メンタルヘルス対策に取り組む事業所の割合は61.4%と、平成30年の調査から2.2%増加しました。メンタルヘルス対策研修など、管理職によるラインケア、本人のセルフケアを高める取り組みのほか、心身ともにイキイキと働ける施策の実施など、さまざまなメンタルヘルス対策が企業で行われています。

    自社での効果的なメンタルヘルス対策の実施において、現状を把握し、適切なアドバイスを行う存在が必要です。メンタルヘルスに精通した産業カウンセラーは、個々の従業員とのコミュニケーションのほか、職場での取り組みにも貢献するでしょう。

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    社内メンバーが資格を取得する際の注意点

    働く人々への支援について専門的知見を学べる産業カウンセラーは、企業経営者や人事の間でも興味関心が強い資格です。そのため、人事の業務を行いながら産業カウンセラーの資格を取得し、職場のメンタルヘルス対策に取り組むケースや、従業員からの相談に産業カウンセラー養成講座で身に着けたスキルを活かすケースがあります。

    また、社内に産業カウンセラーの有資格者がいることから、ハラスメント相談窓口を完全に内製化しようという流れになるかもしれません。

    このように従業員が産業カウンセラーの資格を取得し、その資格を活かした業務に従事する場合、産業カウンセラーとしての中立性やプライバシーの守秘義務について検討する必要があります。

    中立性への問題

    日本産業カウンセラー協会が定める、産業カウンセラーの 倫理要綱 には「二重関係の回避」があります。二重関係とは、カウンセラーと相談者(クライエント)が、カウンセリング以外の関係を持つことを指します。

    たとえば、カウンセラーと相談者が恋愛関係をもってしまった場合、恋慕や私情により客観的なカウンセリングが妨げられます。こうした事態を防ぐため、カウンセラーは相談者との二重関係を避けるべきであると定めているのが、二重関係の回避です。

    社内の従業員の誰かが、産業カウンセラーの資格を取得し、ハラスメント相談窓口の担当者となった場合、この二重関係が生じます。上司と部下、先輩と後輩、もしくは同僚など、普段の職場での人間関係があるからこそ、公平なカウンセリングを妨げてしまう問題が起こります。また、「知っている人には相談できない」といった相談する側に与える心理的負担も配慮しなければなりません。

    産業カウンセラーが求められる役割に、社内の人間が従事することが禁止されているわけではありませんが、相談者のプライバシーに踏み込んだ情報提供がなされるような役目においては、中立性の観点から第三者機関への委託も視野にいれて検討するのがよいでしょう。

    プライバシーへの懸念

    産業カウンセラーは、個人のプライバシー権を尊重し、職務上知り得た情報を正当な理由なく他者に漏らすことは禁じられています。

    社内の人間が企業内産業カウンセラーに従事する場合、職場での人間関係を通じて、メンタルヘルスやハラスメントなどの相談内容が第三者に漏れないよう、さまざまな配慮が必要になります。産業カウンセラー自身に高い倫理観が求められると共に、適切な運用が継続されるよう定期的な研修を行うのが望ましいといえます。

    また、有資格者の従業員が相談窓口を担当する場合でも、現場の管理職などといった直接的関係が多い人選は避け、管理部門などで働く人間を起用するといった配慮が必要です。

    産業カウンセラーの知見はイキイキとした職場作りに役立つ

    産業カウンセラーは、メンタルヘルス対策の取り組みやハラスメント相談窓口など、働く上で抱える悩みを解消するため、さまざまな支援を行います。また、産業カウンセラーという職種名で働かなくとも、傾聴など産業カウンセラーに求められる心理学的手法は、管理職・人事といった幅広い領域で役立ちます。

    従業員が抱える悩みにどのように向き合えばいいのか。組織が抱える課題をどう解決すればいいのか。産業カウンセラーの知見は、誰もがイキイキと働ける職場づくりに向け、必要とされるものです。

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