休業手当の申請マニュアル!対象や条件、コロナによる休業対応も解説!

    労働基準法では、従業員が休業した場合に、企業が手当を支払う「休業手当」が定められています。

    そもそも休業とは何か、休業にはどんな種類があるのか、休業手当と休業補償との違いなどを解説した上で、雇用形態による対応方法や手当金額の計算方法など実務に役立つ説明もしていきますので、ぜひ参考にしてみてください。

    また、2020年4月に発令された新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言下での休業に対する現段階(2020/5/8日時点)の措置についても簡単にご紹介します。

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    「休日」「休暇」「休業」の違いは?

    休業手当について理解を進める上で、そもそも休業とは何なのかを確認しておきましょう。

    休日、休暇、休業はどう違うのでしょうか?従業員にとって全て「お休み」として混同されやすい部分でもあるため、人事労務担当者は理解しておく必要があります。

    休日:元から労働義務のない日
    休暇:労働義務のある日に、従業員の申し出により、労働義務を免除すること
    休業:労働義務のある日に、連続して一定期間の労働義務を免除すること

    実は、休暇と休業に法律上の明確な基準はありません。休業という場合には「連続した期間」であるということを理解しておけば問題ないでしょう。

    休業手当とは

    休業手当とは、労働基準法で定められている「従業員が休業した場合に、企業が賃金と同様に支払うべき手当」のことです。

    労働基準法 第26条
    使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は休業期間中当該労働者に、その平均賃金の 100 分の 60 以上の手当を支払わなければならない。

    ただし、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合」とあるように、全ての状況で当てはまるわけではなく、一定の条件を満たす休業に対してのみです。

    もし、休業理由が企業の都合であるにも関わらず、休業手当が支払われなかった場合、労働基準法違反として30万円以下の罰金に処される可能性がありますので、認識しておく必要があります。

    休業手当と休業補償の違いとは?

    言葉が似ているので、混同されやすいですが、休業手当と休業補償は全く異なる制度です。どちらも労働基準法で定められている制度ですが、支給理由や支給元に違いがあります。

    休業補償とは、業務上に起きケガや病気を理由に、業務が行えない状態になった従業員を補償するための制度であり、企業ではなく労災保険から支払われます。休業手当てはあくまで賃金ですが、休業補償は賃金ではなく補償という扱いであるため、非課税になるという部分も大きく異なります。

    法律で定められた休業の種類と取り扱い

    法律で定められている休業は労基法26条で定められている以外にもいくつか種類があります。それぞれ取り扱いや支給すべき手当や支給金額の計算方法が異なりますので、確認していきましょう。

    業務上の負傷・疾病の治療のための休業

    従業員が勤務中や通勤中の事故によるケガ、もしくは業務によって引き起こされた病気の療養により、業務を行うことができず休業する場合。こちらは労働基準法の「災害補償」で規定されており、休業手当ではなく休業補償の対象になります。

    業務外の事故や病気による療養のための休業

    従業員が勤務中や通勤中ではない事故によるケガ、もしくは病気の療養により業務を行うことができず休業する場合。この場合は、健康保険の「傷病手当金」が支給されます。

    産前・産後の休業

    産前・産後の休業については、労働基準法や育児介護休業法に定められています。

    出産前の休業は、従業員の出産予定日よ6週前(多胎妊娠の場合は、14週前)より利用できる休業です。申請があった場合は、該当の従業員を就業させてはいけません。また、出産後については、原則、産後8週間を経過していない従業員を就業させていはいけません。

    1点、注意点としては、産前の休業は、希望請求された場合の休業であるのに対して、産後の休業は本人からの請求あるなしに関わらず、休ませる必要があります。ただし、本人が希望し、医師も認めた場合は産後6週より就労することが認められています。

    企業が産前産後休業の期間中の賃金保証を行うことを、就業規則で定める場合もあります。逆に、就業規則で「産前産後休業期間中は給与を支払わない」と定めれば、事業所は休業期間中に給与を支払わう必要がありません。給与が支払われない場合は、健康保険の保険給付として「出産手当金」が支給されます。

    育児休業

    育児・介護休業法によって定められた、育児休業制度(育休制度)を利用した場合の休業です。

    育休制度は、1歳に満たない子供を育てる男女の労働者が休暇を取得できる制度です。女性の場合は産後休業終了後から、男性の場合は出産日から、子供が1歳を迎えるまで育児休業を取得することができます。
    育児休業をする場合は、条件を満たせば国から「育児休業給付金」が支給されます。

    関連記事:
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    介護休業

    育児と同様に、育児・介護休業制度(育休制度)を利用した休業です。要介護状態の配偶者、父母、子供、配偶者の父母がいる際、従業員の申し出によって休業が認められます。

    介護休業中の賃金の支払いについては、就業規則によって、各企業が定めます。ただ、条件を満たせば雇用保険の「介護休業給付金」が給付されます。

    企業都合による休業には「休業手当」を!

    冒頭で紹介した通り、労働基準法では、使用者の責任において発生してしまった休業については、休業手当の支払いが義務付けられています。

    具体的には、以下のようなケースが会社都合の休業になります。

    ・生産調整のための一時帰休
    ・経営難から仕事量が減少し休業
    ・ストライキの結果
    ・原材料の不足による休業
    ・監督官庁の勧告による操業停止
    ・違法な解雇による休業

    つまり、企業側の都合による休業かどうかが基準となり、企業側の都合によらない不可抗力による休業については、対象外となります。

    例えば、天災地変による休業、電休による休業、法令に基づく検査のための休業等は、使用者の責めに帰すべき事由に該当しません。

    休業手当は、派遣社員やアルバイトも対象になる?

    気になるのが、休業手当の対象となる従業員の範囲だと思います。休業手当は派遣社員やアルバイト社員も支払い対象になるのでしょうか?

    休業手当は雇用形態に関わらず、全ての従業員が対象になります。パートタイム社員、派遣社員、有期契約社員のいずれも、適用されます。

    派遣社員、内定者については、判断に迷う部分があると思いますので、留意点をもう少し詳しくみていきましょう。

    派遣社員の場合は、派遣元に義務がある

    派遣先の「使用者の責に帰すべき自由」により休業を余儀なくされた場合は、適用されます。ただし、重要な点として、休業手当の支給義務は、派遣先の企業ではなく、派遣元の企業にあります。また、労働者は、派遣元に、その他の派遣先企業の紹介を求めることもできます。

    内定者の場合は、労働契約の有無次第

    内定者については、労働契約の締結がすでにあるかを確認しましょう。もし労働契約が成立している場合は、休業手当を支払う義務があります。

    休業手当の支払い額の算出方法

    休業手当は冒頭で示したとおり、平均賃金の 6割以上の手当を支払うとされています。具体的な計算方法をステップに分けて説明します。

    【ステップ1】

    休業手当を支払う際の計算をするには、まず、該当する従業員の平均賃金を計算します。

    平均賃金とは、労基法第12条で規定されている計算方法で、算定すべき事由が発生した日以前の3ヶ月間に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で割ることで算出します。

    平均賃金 =(該当の3ヶ月間※1の賃金の総額※2)÷ その期間の総日数

    ※1 賃金締切日が設定されている場合は直近の賃金締切日から起算します。
    ※2 賃金総額は、基本給のみではなく、残業代や通勤手当などの各種手当も含む税控除前の金額です。

    【ステップ2】

    算出した平均賃金の60%を1日あたり支給金額とし、休業日数分にした物が支払うべき休業手当の金額になります。

    1日あたりの支給金額= 平均賃金 × 0.6
    休業期間の手当=1日あたりの支給金額 × 休業日数

    ただし、規定では6割と定められているのではなく、あくまで6割「以上」とされていますので、6割を超えて支払うことも可能です。

    新型コロナウイルスの影響による休業は?

    新型コロナウィルスによる緊急事態宣言の影響による休業は、休業手当の対象になるのでしょうか?

    厚生労働省の見解によると、すでにご紹介した自社の都合なのか、不可抗力による休業なのかによって支給義務が発生するのかが決まるとされています。

    例えば、感染が確認された社員が休業する場合は、不可抗力とし休業手当は発生せず、傷病手当を受けるこができます。一方で、感染が疑われる社員に、勤務自粛を要請した場合は、自社都合と捉えられ休業手当の支払い対象になります。


    出典:厚生労働省 新型コロナウイルス感染症について

    その他、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言や要請・指示を受けた事業の休止に伴う休業についてなど、詳細は厚生労働省のホームページでご確認ください。

    参照:新型コロナウイルスに関するQ&A(4月24日版)(厚生労働省)
    厚生労働省 新型コロナウイルス感染症について

    また、新型コロナウイルスに影響された休業時の休業手当については、政府から特別措置として雇用調整助成金が発表されています。

    雇用調整助成金とは?

    雇用調整助成金は、経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図るための休業手当に要した費用を助成してもらえる制度です。

    新型コロナウイルスに関しては特別措置が発表されており、緊急事態宣言を受けて休業する事業主の方は条件を満たせば、雇用調整助成金を活用することができます。(詳細は2020年5月上旬に発表予定)

    参照:厚生労働省 新型コロナウイルス感染症について

    また、学校の臨時休校や保育園の休園に伴い、保護者である従業員の休職に伴う所得の減少に対応するため、有給の休暇(年次有給休暇を除く)を取得させた企業に対する助成金も発表されていますので、合わせてご確認ください。

    厚生労働省:「小学校等の臨時休業に伴う保護者の休暇取得支援のための新たな助成金を創設しました」

    休業手当を正しく理解して対応を

    休業とそれに対する手当や補償は、働く人の生活を守る上で大切な制度です。ただ、解説してきた通り、各種の休業はそれぞれ手当の支給方法や金額が異なるため、ケースにあった対応をすることが重要です。きちんと違いや対応方法を理解した上で、各ケースに対応しましょう。

    また、休業手当を支払うことになった場合は、雇用調整助成金による支援を受けることも検討しましょう。特に、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言のような非常時には、特別措置が取られることもあるので、うまく情報をキャッチして活用し、雇用と事業の存続を守りましょう。

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