オフィス環境の在り方は、個々にパソコンが支給され、働き方も多様化した現代においてオフィスに集って働くということ自体に存在意義を必要とされてきています。また、職種として内勤業務が増加してきた背景からも、単に机や椅子、FAXやコピーの複合機が設置してあるという物理的な役割だけでなく、業務がスムーズに行うことのできる導線や身体的且つ精神的な快適さ、個と公の使い分けなど、オフィスが持つことの役割は近年拡大しつつあるのです。1日の大半を過ごすオフィスでの過ごし方は、従業員のモチベーションの向上や従業員満足度につながり、会社への業績貢献という形で表れてきます。
それでは、現代の働き方の変化を反映した快適なオフィスの環境にするためには、どのようなことに配慮すればいいのか、見ていきましょう。

オフィス環境がモチベーションをあげる理由
ここにオフィス環境が従業員の働くモチベーションに関わることを示す重要なアンケート結果があります。コクヨファニチャーが20代の男女若手社員500人に対して実施した「オフィスのモチベーションアップに関する調査」(2010年)を参考に挙げると、「あなたは、オフィス環境によって仕事に対するモチベーションが上がったことはありますか」という質問に対する回答は、「ある」31.8%、「ややある」37.2%で、モチベーションの上がった人が合わせて69.0%と約7割をしめています。一方、「あなたは、オフィス環境によって仕事に対するモチベーションが下がったことはありますか」という質問に対する回答は、「ある」40.6%、「ややある」42.0%と、合わせて82.6%にも達しています。オフィス環境がモチベーションに大きく関与しているといえ、環境が整備されていないことによる働く意欲の低下にも繋がります。オフィス環境は、働く人のモチベーション管理において重要な要因の一つといえるのです。
オフィス環境改善で社内のモチベーションを向上させた事例
コミュニケーション課題のあるオフィスをフリーアドレス化で解消
派遣事業を手掛けるUYグループ株式会社、急激なスピードでの事業拡大によってスペースやコミュニケーション不足への懸念があったところに、思い切ったオフィスの全面リニューアル、フリーアドレスの導入によって快適なオフィス空間を実現した事例をご紹介します。
企業名:UTグループ株式会社
課題:増員によるスペース不足や部署間のコミュニケーション不足
解決方法:島型のオフィスから全席フリーアドレスの形式を導入したことにより、部署や役職など縦横の関係性にとらわれず、その日作業する場所を自由に選べることで、自然なコミュニケーションが生まれるようになった。物理的な効果としても、高さが異なるデスクを配置し、座る席によって視界による目新しさを演出したことで、リフレッシュ効果がうまれたようです。
URL:
http://www.building.co.jp/casestudy/24/
採光や温度など女性視点のオフィスで従業員が心身ともに快適に
イタリアでナンバーワンのパスタメーカーとして知られるバリラ社の日本法人であるバリラ ジャパン株式会社は、立地自体を見直したことにより、女性視点の快適なオフィスへと変貌を遂げました。急オフィスは青山エリアにあり、利便性も良くビジネスの拠点としては申し分なかったのですが、自然光が入らないことで身体的、精神的な満足感が低かったことに着目。そこで、明るく開放感があり、見晴らしも良いオフィスに移転することで、働きやすい環境を作り、社員のモチベーションを高めることに成功しました。
企業名:バリラ ジャパン株式会社
課題:立地に問題はないものの、採光性に問題があり、開放感や快適さに欠けていた。
解決方法:旧オフィスの立地の良さ、簡便性などを切り離して考え、女性視点で働きやすい気持ちの良いオフィスを目指し、移転を決意しました。開放感があり、風通しのオフィスに移転したことによりイタリア本社の雰囲気と価値観を合わせることができたのは、企業アイデンティティーという意味でも従業員満足度としても成功したといえます。
URL:http://www.building.co.jp/casestudy/104/
企業ブランディングやデザインを統一することで若手が働きたいオフィスに
意欲的な若手の活躍により急成長を遂げてきた注目企業である株式会社ネオ・コーポレーション。経済産業省から認定を受けた自社開発「電子ブレーカー」の企画・製造・販売を手掛ける。常に新しい人材が先頭を切っているこの企業では「若手が働きたくなるオフィス」「従業員が誇りを持って働けるオフィス」ということが企業コンセプトでもあるため、創業10年を超えたこともあり、新たなスタートとして、企業コンセプトをデザインにしっかりと落とし込んだオフィスへと変わりました。
企業名:株式会社ネオ・コーポレーション
課題:常に新しい考えをもった若手を惹きつける企業であり続けるための企業ブランディングの統一
解決方法:まずはデザイン面で企業コンセプトを伝えられるよう、エントランスはコーポレートカラーの青と爽やかな白を基調としたスッキリとしたデザイン。シンプルな空間に浮かぶLEDライトのロゴサインが上質感を演出しました。社名の頭文字をとってそれぞれコンセプトを持たせた3つの会議室「N(NEW YORK)」「E(EDEN)」「O(OSAKA)」は従業員と求職者、双方のモチベーションUPに大きく貢献。デザインによる企業ブランディングの威力をお客様にお届け出来たデザイナーズオフィスにすることで課題を解決しました。
URL:
http://www.neo-corporation.co.jp/
空調管理もオフィス環境を良くする重要なポイント
快適なオフィスとは、作業効率を高めることができるスペースを持っていることが要件になってきますが、もう1つ重要な役割を占めているのが、空調管理です。
夏場はクーラー、冬の時期はヒーターを効かすことが常ですが、冷た過ぎても暖かくし過ぎでも、仕事をする環境としてはよくありません。
特に、夏のクーラーは、節電の意味もあり、外気との温度差を小さくする取り組みをしている企業も増えてきましたが、オフィスの場所によっては、寒すぎたり、逆に全く効かないというギャップも生まれてくるので、均一化させることでより快適な空間を維持させることが大切です。
空気清浄機や加湿器も空調管理で無視できない
また、冬の時期は、どうしても室内は乾燥しやすくなります。
コンタクトレンズを付けている社員にとっては、乾燥しきったオフィスはとてもではないですが、集中できる環境とはいえません。
このようなことにも配慮する必要があり、加湿器や空気清浄機を設置することも、オフィス環境を良くすることになるのです。
リフレッシュルーム
また、長時間の作業で、精神的にも疲れが溜まった時に、ちょっとした時間に気持ちの切り替えをする必要があります。そのために、リフレッシュスペースを作ることも、良いオフィス環境の条件と言えます。
リフレッシュスペースでは、軽食やコーヒープレイクできる設備を設けたり、喫煙コーナーも設けることで、疲れた気持ちの切り替えをスムーズに行えるようになります。
また、このスペースはあくまでリフレッシュが目的なので、ここでの打ち合わせやミーティングをすることはしないようにルール作りをしておくこともいいでしょう。
まとめ
オフィスが従業員のモチベーションにどのようにかかわるかを具体的な事例を交えて紹介いたしました。オフィス環境を立地や物件から変えるのはとてもハードルが高いことではありますが、企業アイデンティティーの確立や優秀な人材の確保にもつながる重要な要件の一つであることも認識して長期計画に盛り込んでおくのもよいでしょう。また、空調や採光、整理整頓など身近で簡単なことからもオフィス環境は改善できます。目の前、短期、長期のスパンでできることを検討していくこともおすすめします。
