組織図とは?
組織図とは、企業をはじめとする組織の階層や役職、指示系統などといった内部構造を図で示したものです。部署や部門の配置・役割を示すものや指揮系統を示すものがあり、組織図の用途によっては従業員の氏名や顔写真、連絡先など、より細かい情報を載せているものもあります。
企業の外部(株主や取引先などの関係者)に向けて作るものは、主に企業の骨組みを示すために用いられ、内部(従業員)に向けて作るものは、社内での立ち位置を認識させるためや組織構成を最適化させるために用いられます。
組織図を作ることで得られるメリット
組織図を作る目的や使い方は企業によって異なりますが、作ることで得られるメリットはいくつかあります。
従業員の組織への理解が深まる
企業の内部構造が可視化されることで、従業員の組織理解を深めることができます。「誰がどのような業務を担当しているのか」「分からない場合に指示を仰ぐべき人は誰か」といったことがひと目で分かりやすくなり、社内における自身の役割や自分の部署と周りの部署との関係性が把握できるため、業務をスムーズに進められるようになります。
特に新入社員にとっては、それぞれの部署や部門が社内でどのような役割・業務を担っているのか、といったことを理解するのは難しいものです。組織図があれば、より早く企業への理解を深めることができるでしょう。
社内の指揮系統が明確になる
組織図を作ると、社内の組織を網羅的に把握できるだけでなく、指揮系統がひと目で分かりやすくなります。業務を進めていく中で誰が判断を下すのかが明確でない場合、新たな施策を始める時やトラブルが発生した時に現場が混乱してしまうかもしれません。
従業員数が増えてくると、報告や判断を下すプロセスはさらに複雑化していきます。業務を円滑に進めて大きなトラブルを防ぐためにも、組織図を作成して指揮系統を明確にしておくのは有効な施策であると言えるでしょう。
業務の偏りをなくして効率化を図ることができる
組織図で内部構造を俯瞰してみると、部署ごとに業務の偏りが生じていないか、似たような業務を行う部署が複数できていないか、など社内の状況を把握することができます。
業務や権限に偏りがある場合、他の部署に分配したり部署を新設して業務を細分化したりといった施策を講じた方が良いこともあります。その際、各部署の状況と指揮系統がひと目で分かる組織図があると、企業の現状を分析しながら最適な部署に業務を依頼しやすくなるでしょう。
社内コミュニケーションの活性化につながる
従業員の氏名や顔写真などの情報も記載されている組織図であれば、従業員同士の相互理解を深めてコミュニケーションの活性化を図るのにも役立ちます。特に従業員数の多い企業では、他部署で働く従業員がどのような人なのかを知る機会が少ないケースもあるでしょう。そういった時に組織図があれば、従業員同士がお互いについて知ることができ、コミュニケーションのきっかけにもなります。
従業員同士が相互理解を深めて社内コミュニケーションが活発になると、業務をスムーズに進めやすくなったり、従業員満足度が向上したりといった効果が期待できるでしょう。
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社外に向けて企業の健全性をアピールできる
社外向けの組織図は主に企業の骨組みを示すもので、運営体制の現状を伝える情報開示ツールの1つとして作られます。監査役やコンプライアンス部門などの監査機構があることを明記しておくと、株主や取引先に企業の健全性をアピールできるというメリットがあります。
組織図の代表的な3種類をご紹介
組織図の形式は、ピラミッド型・フラット型・マトリックス型の3種類が代表的です。自社の組織体制に合った形式を選んで作成しましょう。
ピラミッド型(階層型)
ピラミッド型はトップから下に向かって枝分かれする組織図で、もっとも一般的な形式です。最高経営者や最高経営層の1グループをトップに置き、その下に各役職者や部門・部署・チームが配置されます。
指揮系統が1つしか存在しないため、責任の所在が分かりやすいのが特徴です。ただし、階層が増えすぎると情報伝達に時間がかかることや、組織構造を臨機応変に変えづらい点はデメリットであると言えます。
フラット型
フラット型はピラミッド型と同じような形式ですが、上下に多くの階層を持たないのが特徴です。一般的なフラット型組織図では、トップ層から現場レベルの従業員まで2〜3階層となっています。
階層が少ないため情報伝達や意思決定を迅速に行えますが、中間管理職の人数が少なくなるため、1人あたりの負担が大きくなるのがデメリットです。そのため、役職数が少ない、各部署の人数が少ないなど少数精鋭の企業に適しています。
マトリックス型
マトリックス型は、プロジェクトやエリア、職種など複数の要素をかけ合わせた形式の組織図です。たとえば「プロジェクトAの営業担当は〇〇さんだが、プロジェクトBの営業担当は□□さん」といったようにプロジェクトごとに担当者が異なる場合は、マトリックス型が適しています。部門・部署や職種を超えてプロジェクトを進めていくため、社内コミュニケーションが活発になり新たな発想が生まれやすくなります。
ただし、プロジェクト上の管理者と職種上の管理者といったように上司が複数人になることがあるため、組織図だけでは指揮系統が分かりづらいというデメリットがあります。プロジェクトの進行中はプロジェクトリーダーが指揮を執るなど、責任の所在を明確にして従業員の混乱を招かないよう工夫が必要です。
組織図の作り方5ステップ
ここからは、組織図の作り方について解説していきます。組織図の作成自体は難しいものではありませんが、目的と使い方に沿ったものを作るためには情報収集が必要になります。
①目的・対象を明確にする
まずは組織図を作成する目的を明確にしましょう。社内・社外のどちらを対象に公開するのか、作成する組織図を使う目的は従業員の相互理解を深めるためなのか、指揮系統を可視化して分かりやすくするためなのかなど、具体的に洗い出していくことが大切です。
また、どこまでの範囲を記載する必要があるのかについても検討します。社内全体の組織図なのか、部門やチーム内のものなのか、従業員の氏名や顔写真まで載せるのか、組織図を作る目的に沿った最適な範囲を定めましょう。
②情報収集をする
組織図作成の目的と記載範囲が定まったら、必要な情報を収集します。従業員の個人情報を記載する場合は、メールやチャットツールを活用して個別で収集したり、部署ごとに担当者を設けて収集すると良いでしょう。
指揮系統を可視化するのが目的の場合、人事や総務担当者、経営層と意見交換をしながら情報整理した方が良いケースもあります。自社内の組織について正確に把握し、それぞれの関連性や役割についても再確認しましょう。
③形式とツールを選んで情報を落とし込む
記載する情報が集まったら、前述のピラミッド型・フラット型・マトリックス型といった形式の中から自社に合ったものを選んで、組織図の中に情報を落とし込んでいきましょう。
なお、組織図作成用ツールの中には無料のソフトも多数あります。簡易的なものであれば、ExcelやPowerPoint、Googleスプレッドシートなどでも作成可能です。
④レイアウトを整える
情報を落とし込んだら、見やすくなるようにレイアウトを整えます。情報が伝わりやすく、作成の目的が果たせる組織図になるよう、部署ごと・階層ごとに色分けをしたり、文字サイズを調整したりといった工夫をしましょう。
⑤共有・公開する
完成した組織図は作成担当者だけでなく複数名でチェックを行い、問題がないことを確認してから共有・公開します。更新担当者以外が安易に書き換えてしまうことの無いように、閲覧のみ可能な設定をしてから共有すると良いでしょう。
組織図を活用するためのポイント6つ
目的に沿ったより良い組織図を作ってうまく活用していくためには、いくつか押さえておきたいポイントがあります。作成の際は、次の6点を意識できているかどうか確認してみてください。
①作成の目的を明確にする
組織図は、ただ情報をまとめて可視化するだけでは長く活用できるツールにはなりません。「何のために組織図を作るのか」「どのような活用方法を想定しているのか」といった点を明確にすることは、組織図を作るにあたって最も大切なポイントの1つです。目的によって組織図に記載すべき情報が変わってくるため、作成前には必ず目的の洗い出しを行いましょう。
②公開する対象に合わせて情報を整理する
社外に公開する組織図と社内で使用する組織図とでは、記載すべき情報の範囲が異なります。公開する対象に合わせて、社外向けの場合は部門や部署のみを記載し、社内向けの場合は個々の従業員についても詳しく記載するなど、情報整理を行いましょう。
③雇用形態をわかりやすくする
従業員の情報を記載する場合は、雇用形態を分かりやすくするのもポイントの1つです。雇用形態によって文字の色を変える、雇用形態ごとに並べるなど、分かりやすく表記しましょう。
④見やすいレイアウトを心がける
組織図はひと目見て分かりやすい方が好ましいものです。ただ情報を羅列するだけでなく、色分けやフォントの調整、配置を工夫して見やすいレイアウトになるよう心がけましょう。ただし、色の数やフォントの種類が多すぎるとまとまりに欠け見づらくなってしまうため、注意が必要です。
また、同じ階層に従業員の氏名を羅列する場合は、入社日順や五十音順で規則性を持たせて記載すると見やすくなります。
⑤業務の負担に偏りがないかをチェックする
組織図を作る過程で情報収集をしていくと、各部署の抱える役割や業務量が見えてくることがあります。このときに業務負担の偏りがないかをチェックして、自社の現状を把握しておきましょう。必要があれば最適な部署への分配や部署の新設などを行うと、業務の効率化を図ることができます。
⑥変更があればすぐに反映し最新の状態を保つ
従業員の異動や組織体制の変更、部署の新設・統合などが発生した場合は修正が必要になります。修正を行いやすいよう、今後の展開を見据えてゆとりを持たせた組織図を作りましょう。共同編集ができるツールやクラウド上での編集が可能なツールを活用して組織図を作ると、必要なタイミングでスムーズに変更を反映できます。
組織図は一度作れば終わりというものではなく、随時更新していくことが望ましいものです。更新の担当者とタイミングを明確にしておき、社内で共有しておくと良いでしょう。
働きやすい職場作りのために組織図を活用しよう!
組織図は企業の内部構造を分かりやすくするだけでなく、さまざまなメリットが得られるツールです。うまく活用していくためには、従業員の移動や運営体制の変更に合わせてスムーズに更新できる仕組み作りを行うことも大切です。
作成する目的や公開対象を明確にし、それに沿った情報整理と見やすいレイアウトを心がけることで、質の高い組織図を作ることができます。より良い組織図を作り、業務の効率化や社内コミュニケーション活性化に役立てていきましょう。
