育児休暇とは?制度の概要や期間と企業がすべき対応を解説

    目次

    男性の育児休暇を促進させるには?現状や企業の取り組み事項を解説!政府の重要政策として始められた働き方改革。中でも、育児休暇は社会的にも関心を集め、各企業でも対応が急がれるテーマです。ただ、育児休暇という言葉は幅広い意味で使われているため、実務を行う企業の総務・人事などの担当者は、育児休暇制度の正しい知識や必要な対応を知っておかなければなりません。この記事では、育児休暇の基本的な3つのポイントと給料・給付金・社会保険料などの扱いを詳しく紹介します。

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    育児休暇・育児休業とは?3つの基礎知識

    まずは「育児休暇」について基本的な意味や背景、現状を紹介します。また、育児休暇とは別に、法的制度の「育児休業」というものもあります。ここでは、その違いについても説明します。

    育児休暇とは

    「育児休暇」という言葉は、育児のために休暇を取得することを指す総称です。取得の仕方や期間が決められているわけではなく、特に法律で育児休暇そのものの定めがあるわけでもありません。ただし、企業独自に育児休暇について規定を設けることも増えているため、中には子どもが2~3歳になるまで育児休暇を取得できる企業もあります。

    たとえば、会社に育児休暇の規定がある場合、女性従業員が出産後、子どもがある程度大きくなるまでの一定期間休職することは育児休暇に該当します。女性従業員が出産後、長期間育児休暇を取得したいと考えている場合は、企業に育児休暇の制度が整っているかどうかを確認しておくことが大切です。

    一方、日常的に子どもの育児に関連して会社を休む必要が出たとき、従業員個人が年次有給休暇を使って仕事を休むことも育児休暇に含まれます。また、育児休暇は女性だけが対象のものではなく、男性に対しても使われる言葉です。

    たとえば、男性の育児休暇取得も社会的に注目されるようになってきたことで、男性従業員が配偶者の出産前後に数日間年次有給休暇を取得して休むことも増えているでしょう。以上のような休暇すべてが育児休暇として認識され、あくまで育児に関して休みを取得することを指す、実に広い意味で使われる言葉なのです。

    育児休業との違い

    「育児休業」は育児休暇とは違い、「育児・介護休業法」によって規定されている「子を養育する労働者が法律に基づいて取得できる休業」です。育児休暇も育児休業も育児のために取得できる休みとして趣旨自体は同じですが、育児休暇は育児休業のように法律で規定されているわけではないという点が特徴です。育児休業の場合は法律に基づいて父母問わず取得することができ、申し出をすれば子どもが1歳に達するまで取得が可能とされています。

    企業によっては独自に育児休暇制度を設けているところがあるので、育児休業と合わせれば最長2~3年休暇を取得できるケースもあるでしょう。育児休暇は育児のために必要な休みとはいえ、あくまで休暇であるため、休んでいる間の給料がない場合も多くあります。一方で、法律で規定された育児休業は、一定の条件を満たしていれば育児休業給付金が支給されることも特徴のひとつです。

    背景と現状

    夫が外で働き、妻は家で家事や育児を受け持つという家族の形が当たり前だった時代、働く女性が結婚・出産後も仕事を続けられる環境が整っていたとはいえませんでした。その頃から続いてきた雇用慣行では、女性従業員が妊娠・出産・育児のために一旦職場から離れると、同じポジションに復帰することが難しいことも珍しくなかったでしょう。女性従業員自身が働きたいという意欲を持ち、その能力も十分あるのに制度が整っていないことで妨げになっていたのです。

    また、妊娠したことを理由に解雇されたり、配置転換や降格されたり、女性従業員の能力とは関係ない不当な人事が横行するなど、マタニティハラスメントも珍しくありませんでした。そのため、出産後に育児と仕事を両立しながら生活することが簡単ではなく、仕事を続けたいと思いながらも、結果的に退職せざるを得なくなるケースは多かったのです。

    しかし、女性の社会進出が進み、管理職に就く女性も増加してきたことで、従来のような制度のままでは企業も機能しなくなってきています。女性が働きやすい職場環境を作ることが求められるようになり、法的には「男女雇用機会均等法」や「育児・介護休業法」などが整備されるに至りました。

    また、1991年に定められた「育児・介護休業法」は、制度ができた当初のままというわけではなく、時代の流れに合うように改正されています。待機児童の問題を解決に導くことが急務とされている背景や、ワーク・ライフ・バランスへの関心の高まりから、育児休業や育児休暇の制度には注目が集まり、改善も進められているのです。

    育児・介護休業法が制定された背景には少子化対策もあります。女性従業員にとっては、妊娠・出産・育児で離職すると、キャリアを中断しなくてはならなくなったり、復帰することすら難しくなったりするケースも多くありました。

    そのため、子どもを持つことや複数の子どもを産んで何度もキャリアを中断することを躊躇することもあったでしょう。妊娠・出産・育児をしやすい環境が整えば、子どもを持つことに前向きになる人も増え、結果として少子化対策になることも期待されています。

    参考:
    【厚生労働省】改正育児・介護休業法及び改正男女雇用機会均等法の概要

    育児休業制度について企業が知るべき3つのポイント

    法律で定められた育児休業制度は一定の条件を満たしている従業員なら取得できるものなので、事業主側もしっかり制度を把握しておくことが必要です。そこで、ここでは育児休業制度について、事業主の担当者が知っておくべき3つのポイントについて詳しく紹介します。

    制度の概要

    育児休業に関する法律は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(通称「育児・介護休業法」)として1991年に制定されました。子どもを産み、育児をしなければならないからといって、育児か仕事かどちからか1つを選ばなくてはいけないということではなく、仕事と家庭を両立できるよう支援するために作られた制度だといえます。ただし、社会で起こる問題やニーズは常に変化しているため、制度もそんな変化に合わせる必要があります。実際に、育児・介護休業法は最初に制定されてから数回改正が繰り返されており、2019年10月時点では2017年10月1日に施行されたものが現行法です。

    現行版で従来のものと比べて大きく改正されたポイントは「育児休業期間の延長」と「育児・休業制度の個別周知の努力義務の創設」および「育児目的休暇制度の努力義務の創設」の3点です。事業主は従業員が休業期間の延長を申し出た場合、延長に対応しなければなりません。また、育児休業や介護休業の対象となる人、つまり子どもが生まれることがわかった従業員に対しては、個別に制度を知らせる努力をすることも義務になりました。さらに、事業者は小学校就学前の子どもを持つ従業員に対して新たな育児目的の休暇を新設することも努力義務としています。

    期間と延長要件

    育児・介護休業法で規定されている育児休業期間は原則として子どもが1歳に達するまでです。ただし、申し出れば条件によって期間が延長される場合があります。従来の制度でも、子どもが1歳に達する時点で保育所が見つからない場合など、仕事に復帰できない理由があれば、1歳6カ月まで育児休業を延長することが認められていました。2017年10月施行の法改正分からは、やむおえない事情で復帰できないときに延長される期間が最長2年まで変更されています。

    また、子どもに関することだけが理由として認められるのではなく、父母の負傷や疾病、障害、死亡、離婚などの事情があるケースでも延長申請が可能です。育児給付金の支給期間も延長されるため、経済的な面での心配もありません。

    パパ休暇とパパ・ママ育休プラス

    育児・介護休業法では、両親そろって育児休業を利用できるようになったことも大きなポイントです。育児休業には「パパ休暇」と「パパ・ママ育休プラス」という2つの制度があるなど、各家庭で異なるニーズに対応できるようになっています。「パパ休暇」は夫が二度育児休業を取得できる制度です。妻の出産後8週間以内に夫が一度目の育児休業を取ったのち、特に理由がなくても妻の育児休業期間内に夫がもう一度育児休業を取得することが可能です。通常育児休暇の取得は一度まででしたが、この制度を活用すれば出産後の大変な時期と、妻が仕事復帰するためにサポートが必要な時期の二度夫も休みが取れます。

    「パパ・ママ育休プラス」は両親ともに育児休業を取得した場合、子どもが1歳2カ月になるまで期間が延長されるという規定です。この制度を利用すると、夫と妻が切れ目なく交代で子どもが1歳2カ月まで育児休業を取得することができます。

    また、取得の仕方によっては、夫婦2人が同時に休める期間を含めて1歳2カ月まで延長することも可能です。また、祖父母など子どもを見てくれる人がいる場合のように、子どもを見てもらえる期間は2人とも働き、見てくれる人がいない期間に交代で育児休業を取得するなど、連続していなくてもかまいません。

    パパ休暇やパパ・ママ育休プラスのような制度があることで、従業員は家庭の事情に合わせて柔軟に育児と仕事の両立ができるようになりました。ただ、事業主としては制度を熟知しておかないと、従業員が働きやすい環境を整えるのは難しい可能性があります。実際に制度を活用して育児休業を取得したいという申し出があった場合に備えて、制度の詳細を把握しつつ、人員配置なども考慮しておく必要があるでしょう。

    参考:
    【厚生労働省】育児・介護休業法について
    【厚生労働省】育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
    【厚生労働省】第1 改正育児・介護休業法のポイント
    【厚生労働省】改正育児・介護休業法のポイント

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    育児休業中の給料・給付金や保険料や税金の扱い

    育児休業中でも一定の条件を満たせば給付金が支給されるほか、企業独自に手当を支給していることもあります。また、保険料や税金の扱いなど、企業にとっては扱いを知っておかなければいけないことも多いです。そこで、ここでは育児休業中の給付金や給料、社会保険料や税金の扱いについて詳しく紹介します。

    給料・給付金の扱い

    「育児支援金」などの名目で、育児休業中の従業員に対して企業独自に手当を支給しているところもあります。しかし、それは義務で行っているというわけではなく、あくまで個別の企業が制度を設けているだけで、法律としては企業が従業員の育児休業中に給料を支払わなければならないという決まりはありません。一方、法的にも認められた制度としては、育児休業期間中に条件を満たせば雇用保険から従業員に支給される「育児休業給付金」があります。給付を受ける場合は事業主が従業員から申請を受け、事業主から書類を提出するというケースが一般的なので、企業の担当者は育児休業給付金に関する要件や提出方法などを把握しておくことが必要です。

    具体的に申請に必要な書類としては、「休業開始時賃金月額証明書」「育児休業給付受給資格確認票」「(初回)育児休業給付金支給申請書」があります。

    社会保険料・住民税の扱い

    育児・介護休業法では育児休業を取得している間、厚生年金保険や健康保険などの社会保険の保険料が、本人および事業主負担分ともに免除されます。この規定では育児休業だけではなく「育児に準じる休業」についても認められており、満3歳未満の子どもを養育することに関わる休みを取得する場合も対象になることが特徴のひとつです。手続きは本人から申し出があれば、事業主が日本年金機構に対して「育児休業等取得者申出書」を提出します。

    また、期間は子どもの年齢に応じて区分けがあり、次の期間に移行する都度、事前に手続きをしなければなりません。なお、住民税に関しては、今年度の税額が前年の収入によって決定されるものであるため、育児休暇中でも支払う必要があります。

    参考:
    育児休業給付の内容および支給申請手続について
    【日本年金機構】育児休業保険料免除制度
    【厚生労働省】育児休業や介護休業 をする方を経済的に支援します

    育児休業・育児休暇に関して企業が対応すべき事項

    2017年に行われた育児・介護休業法の改正ポイントは「育児休業期間の延長」「育児・休業制度の個別周知の努力義務の創設」「育児目的休暇制度の努力義務の創設」の3つがあります。これらの改正ポイントを踏まえ、事業主は従業員が育児休業を取得したいという申し出をした際に対応できるようにしておくことが大切です。従来は原則1年だった育児休業の延長が最大2年まで可能になったことや取得できる条件、手続き方法や対応方法など、具体的な内容を事業主自体がまず把握しておかなければなりません。

    それだけではなく、個別周知の努力義務が創設されたため、妊娠・出産した女性従業員や配偶者など、該当する従業員には個別で丁寧に育児休業等についての説明をして、制度を知らせる必要があります。また、法律で定められた育児休業とは別に、企業では新しく育児休暇制度を整備することも努力しなければならなくなりました。たとえば、男性社員の配偶者が出産するときに取得できる休暇や、入園式・卒園式など子どもにまつわる行事の際に取得できる休暇制度などです。

    育児休暇・育児休業は制度を確認のうえ適切な運用を

    育児に関連して取得できる休みは法律で定められた育児休業や企業が独自に設けている育児休暇があります。育児・介護休業法が改正され、企業には対応が必要なことも多くなったため、管理部門の担当者は改正点も含めて内容をしっかり把握しておくことが大切です。特に育児休業の期間や、該当する従業員への説明努力義務、会社個別の育児休暇制度の整備の3つのポイントを意識し、適切に運用をしてください。

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