業務で使用するシステムやWebサービスが増えると、IDやパスワードの管理も煩雑になります。管理が大変だからとパスワードを使いまわしたり、簡単なものに設定するとセキュリティ面で大きなリスクになる可能性も。
従業員1人1人が適切にID・パスワードを管理し、効率よく業務を行う環境をつくるには、パスワード管理ソフトの活用がおすすめです。
この記事ではパスワード管理ソフトの基本的な機能や仕組み、おすすめの管理ソフトについて解説します。

パスワード管理ソフトとは
パスワード管理ソフトとは、システムやWebサイト、アプリのログインに必要なID・パスワードを管理するツールです。多くのパスワード管理ソフトは、マスターIDとパスワードさえ入力すれば、管理している複数のサイトへ自動でログインできます。
また、ID・パスワード以外にも住所や電話番号といったプロフィール情報の保存や、新たにパスワードを設定する際にパスワードの自動生成機能が搭載されたものもあります。
なぜパスワード管理ソフトが必要なのか
なぜパスワード管理ソフトが必要なのでしょうか。ここではセキュリティと業務効率の2つの点から解説します。
情報セキュリティの強化
セキュリティを強化しなければ、個人情報漏洩やサイバー攻撃などの被害にあう可能性があります。
サイバー攻撃を仕掛ける犯罪者のターゲットになれば、従業員のIDやパスワードを不正に取得・悪用したり、パスワード解読のためにあらゆる攻撃を仕掛けてきます。これらの攻撃から企業の資産である情報を守るには情報セキュリティを強化する必要があります。
企業は知的財産や開発途中のアイディア・顧客情報などさまざまな情報資産をもっており、これらの情報が流出すると、莫大な経済的利益の損失や取引先・顧客からの社会的信頼損失につながります。
一度失った信用を取り戻すには相当な時間と労力が必要になるため、事前に情報セキュリティ対策する必要があるのです。
パスワード管理ソフトには強力なパスワードの提案をしてくれるものや、使い回しているパスワードがないかのチェック、本人確認を複数回間違えればデータをすべて削除する機能付きのものなどがあります。
これらの機能によって、情報セキュリティが強化されるでしょう。
業務効率の向上
複数のWEBサイトやアプリのID・パスワードを従業員1人1人がPCやスマホで管理するのは大変です。限られた業務時間の中で効率よく業務を行うには、スムーズに仕事ができる環境が求められます。
パスワード管理ソフトを使用することで、複数のサイトのID・パスワードを瞬時に入力することが可能。
また管理ソフトによっては管理ソフトにログインするためのパスワードを入力すれば、社内すべてのシステム・ツールにログインできるシングルサインオンも実現でき業務効率が向上するでしょう。
パスワード管理ソフトの基本的な仕組みとは
そもそもパスワード管理ソフトの仕組みはどのようになっているのでしょうか。ここからは基本的な仕組みを解説します。
1.マスターパスワードの作成
使用するパスワード管理ソフトを決めたら、そのソフトのマスターパスワードを作成します。マスターパスワードとは管理ソフトで保管するすべてのパスワードにアクセスするためのものです。
覚えやすい強力なパスワードを設定しましょう。
また、パスワード管理ソフトではマスターパスワードを保管しないため、万が一マスターパスワードを忘れると、指紋認証や顔認証機能がないかぎり管理ソフトにアクセスできなくなります。
どんなに覚えやすいマスターパスワードに設定しても紙などに書き留め、オフィスの金庫など安全な場所に保管しておきましょう。
2.管理ソフトに情報を追加していく
管理したいパスワードは手入力で管理ソフトに入力可能。
新しいパスワードが必要な場合には、管理ソフトが強力なパスワードを提案してくれるものもあります。
3.管理ソフト内で暗号化
管理ソフトに入力したパスワードはすべて暗号化され、ハッカーなどの犯罪者から情報が守られます。
4.登録した情報を使ってスムーズにログイン
ユーザーがWEBサイトを訪れると、管理ソフトが適切なパスワードを入力します。管理ソフトの多くはユーザーのすべての端末でパスワードを自動同期してくれます。
パスワード管理ソフトの機能
パスワード管理ソフトの機能はID・パスワードを管理するだけではなく、使用するソフトによってさまざまな機能が搭載されています。たとえばパスワードの自動更新機構や住所・電話番号の保存、アクセス制御なども便利な機能でしょう。
自社にあったら便利な機能があるか、ソフトを選ぶ際の参考にしてください。
パスワードの自動生成
パスワード自動生成機能はその名のとおり、パスワードを自動的に生成してくれる機能です。
また、パスワードの設定時に「アルファベットの大文字・小文字・数字・記号などを組み合わせて8文字以上で設定する必要がある」などルールが指定されることも多いでしょう。その際には管理ソフトにルールを設定すればそれに適した複雑なパスワードが自動生成され、保存ができます。
パスワードを自動登録・入力
Webサイトのログイン画面で入力しているID・パスワードを、自動で入力してくれる機能です。
強力なパスワードかどうかをチェックしてくれる
パスワード作成時に強力なパスワードになるようサポートしてくれる機能です。たとえば、パスワードが複雑か・推測されやすい簡単なものではないか・同じパスワードを使いまわしていないか、などを自動でチェックしユーザーに知らせてくれます。
自動的にデータを消去する
ハッカーなどが管理ソフトを開こうとして複数回マスターパスワードを間違えた場合に、データを自動的に削除する機能です。
ただし、ユーザーがマスターパスワードを複数回間違ってもデータがすべて削除される点に注意が必要。マスターパスワードは別の厳重な方法で保管しておきましょう。
プロフィールフォームに自動入力
サービスの登録・入会時に氏名や住所の入力が必要ですが、プロフィール管理機能があればこのようなデータも自動入力が可能です。
あらかじめ情報を登録しておけば、新しいサイトでの会員登録などの際に複数回クリックするだけで、氏名・電話番号・メールアドレス・住所・生年月日・クレジットカード番号などの情報が瞬時に入力されます。
新しいサイトごとにプロフィールを登録する手間を省く便利な機能です。
おすすめのパスワード管理ソフト16選
ここからはおすすめのパスワード管理ソフトをご紹介します。
LastPass | パスワードもメモも共有できる
・強力なパスワードを自動生成
・パスワードやメモなども共有できる
・アカウントを複数の方法で復元可能
LastPassのパスワード自動生成機能では、複雑なルールを設定できます。また、テキストでは送信してはいけない情報も安全に他の人と共有可能。
マスターパスワードを忘れた場合には、スマホに復元コードを送信したりパスワード変更から30日以内なら前のパスワードに戻すなど複数の方法で復元できます。
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1Password | パスワード管理が簡単
・パスワード保存件数上限なし
・複数の端末で同期
・パスワードのセキュリティ審査機能
「世界で最も愛されるパスワードマネージャー」というキャッチコピーがつくほど、簡単にパスワードが管理できるツールです。複数端末での同期が簡単であり、セキュリティが低いパスワードはどれか簡単に確認することが可能です。
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Keeper | セキュリティ機能に注目
・パスワードのセキュリティ審査
・ダークウェブモニタリング
・安全なストレージ(最大100GB)
強力なパスワードを自動生成して保存してくれるKeeper。2段階承認でセキュリティ面も安心して使用できます。また、写真や文書・動画もファイルストレージで保存できます。
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CloudLink | すべての業務ツールをシームレスに連携
・シングルサインオン
・アクセス制限機能
・多要素認証のサポート
クラウドサービスだけでなく、社内のシステムにもログイン可能なパスワード管理ソフトです。二要素認証・二経路認証に加え、ユーザーIDとパスワードによる認証とワンタイムパスワードによる認証を段階的におこなう二段階認証も使用できます。
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ID Manager(Windows) | シンプルで使いやすい
・シンプルで使いやすい設計
・さまざまな条件で検索できる
・パスワードの自動生成機能
ID Managerは見やすくシンプルな構成のパスワード管理ソフトです。ID/パスワードの入力支援機能や自動生成機能などパスワード管理に便利なさまざまな機能を搭載。
WEBサイトのURLも登録でき、ID Managerからサイトにアクセスすればフィッシング詐欺対策にも有効です。
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OneLogin | コンプライアンスレポートが出力可能
・多要素認証ができる
・スマートフォンからでも利用可能
・コンプライアンスレポートを出力できる
シングルサインオン機能のパスワード管理ソフトです。IDとパスワードの管理の手間をなくし、セキュリティを高めます。また、コンプライアンスレポートをいつでも出力でき、マルウェア感染や情報漏洩の予防、怪しい行動のユーザーを特定することも可能です。
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Bitwarden | パスワードもメモも共有できる
・二段階承認対応
・パスワードの漏洩監視
・クラウド、ローカルデバイスへのデータ保存
Bitwardenはお手頃なオープンソースのパスワードマネージャーです。基本的なパスワード管理機能に加え、セキュリティ機能も搭載されています。
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NordPass | パスワードもメモも共有できる
・二要素認証機能
・生体認証によるセキュリティ
・データ漏洩スキャナー機能
シンプルで使いやすい機能が搭載されているNordPass。生体認証機能があり、唯一無二のログイン情報で大切な情報を守ってくれるでしょう。
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KeePassXC | オフラインでも使用できる
・オープンソースのパスワード管理
・パスワードを自動生成
・非クラウド型パスワード管理ソフト
KeePassXCの特徴は非クラウド型のため、オフラインでも管理が可能な点です。また、パスワードを自動生成してくれるため新しくパスワードを考える手間がかかりません。
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RoboForm | フォームの自動入力に特徴
・無制限にパスワード登録可能
・複雑なフォームにも自動登録が可能
・アプリにもログインできる
RoboFormは自動入力ツールが優れており、ネットショッピングなどの複雑なフォームの入力も簡単に自動入力ができます。また、アプリにもログインできる数少ないパスワード管理ソフトです。たとえばタブレットのZOOMアプリなどにも自動的にログインが可能です。
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StickyPassword | アプリにもログイン可能
・メモなども安全に保存
・プログラムをUSBにコピー可能
・アプリにもログインできる
基本的な機能のみでシンプルなソフトですが、アプリにもログインできる数少ないパスワード管理ソフトでもあります。プログラムをUSBに保存することができ、持ち運びたい場合には便利な機能です。
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Dashlane | ワンクリックでパスワード変更
・無制限でパスワードを保存
・複数端末で同期
・ワンクリックでパスワードを変更できる
基本的な機能に加え、緊急アクセスや安全なストレージ(1GB)がついているなど便利な機能が盛り沢山のパスワード管理ソフトです。特にワンクリックでパスワードを変更できる点は、1件ずつパスワードを設定する手間を考えるとかなりの業務効率化につながるでしょう。
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Aviraパスワードマネージャー | パスワードもメモも共有できる
・パスワード保存件数とデバイスが無制限
・段階承認ツール搭載
・データ漏洩の監視
Aviraパスワードマネージャーは直感的に使いやすいインターフェイスで、簡単にパスワードを生成・保存・自動入力が可能です。メモやクレジットカードも安全に保管してくれる機能も搭載しています。
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Enpass | 買い切りバージョンがある
・アプリのインターフェースを日本語表示できる
・基本的な機能
Enpassは基本的な機能がついた便利なパスワード管理ソフト。データはローカルデバイスにのみ保存可能です。他のパスワード管理ソフトが月額契約なのに対し、Enpassは買い切りバージョンがあるのが特徴です。
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ノートンパスワードマネージャー | 脆弱なパスワードを知らせてくれる
・脆弱なパスワードをお知らせ
・ワンクリックでフォームに入力
・マルチデバイス連携
シンプルかつ便利に個人情報を保護できるパスワード管理ソフトです。脆弱なパスワードが見つかった場合には知らせてくれ、ワンクリックで新たなパスワードを作成可能。
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GMOトラスト・ログイン | すべてのサービスへシングルサインオン
・複数のログイン情報を一括管理
・危険なアプリの自動チェック機能
・二段階承認
社内システムやクラウドにシングルサインオンできるパスワード管理ソフトです。ログインへのアクセス制限をかければ、一括で制限できるため不正アクセスのリスクを低減できます。
詳細はこちら
パスワード管理ソフトで安全に業務を効率化しよう
パスワード管理ソフトは業務が効率化できる便利なツールです。また、保存した情報は暗号化され、パスワードの脆弱性を検知し強力なパスワードにアップデートを提案してくれるなどセキュリティ面でも安全だといえるでしょう。
これまでご紹介したとおり、パスワード管理ソフトの特徴はさまざまです。社内システムとクラウドシステムの両方にアクセスできるパスワード管理ソフト、無料の管理ソフト、アプリにログインできる管理ソフトなど、自社のニーズにあった管理ソフトを選ぶことが大切です。