優秀な人材に長く働いてほしいというのは、どの会社も抱く共通の願いです。優秀な人材を採用するためには、会社の魅力が伝わる、競合の会社と比較して選ばれる、採用した人が辞めない、など幅広い努力が必要で、いずれがかけても採用につながりません。今回は、「採用力」とは何か、売り手市場の今できることはあるのかなど、採用の知識を紹介しつつ、優秀な人材が定着するために必要なポイントを紹介します。
売り手市場における企業の対応状況とは
表は求人と求職の数、そして求人倍率を表したものです。2種類の棒グラフは月間有効求人数と月間有効求職者数を示しており、それを元に有効求人倍率の推移を折れ線グラフで表しています。この表を見ると、平成21年度以降は有効求人倍率は上昇を続け、とくに平成30年から令和元年のグラフを見ると求人数が求職者数を安定的に上回っており、強い売り手市場であることがわかるでしょう。採用難が落ち着く気配がなく、人出不足に悩む企業にとっては非常に不利な状況が続いています。
業種による採用状況の格差
ひと口に採用難といってもその状況はそれぞれの業種によって異なります。インターネットでいろいろな情報が出回るようになって久しいですが、その流れの中で過労による問題なども取り沙汰され、今では企業の体質が問われるようになりました。そのため、求職者の多くが労働環境にこだわりを持つようになり、職場の選定にはいっそう慎重な姿勢をとっています。一般的に労働環境が悪いと言われる建設業界や介護業界、外食業界やIT業界などの業種は、不人気で選ばれにくい状況であることは間違いありません。
企業規模による採用状況の格差
求職者がこだわりを持つのは、業務における負担の違いだけではありません。心身共に健やかでいられるような業務内容であることはもちろん、働きやすさや福利厚生などの充実を求める傾向も強くなっています。福利厚生の充実度は企業規模の影響を受けやすく、中小企業はなかなか手厚いサポートを実現させることができないのが現状でしょう。そのため、求人倍率も大企業と中小企業とでは二極化が顕著になっています。
採用活動における課題
応募が無い、あるいは優秀な人材が定着しないといった会社には、採用活動に課題があるケースが多いです。ここで、それぞれのシチュエーションにおける問題点を洗い出してみましょう。
求人を出しても応募が無い・少ない
求人を出しても応募が無い、あるいは応募数が少ない場合、「自社の魅力が伝わっていない」「他社との差別化が出来ていない」「求職者の目に留まらない求人内容である」といった可能性が考えられます。求人を出すときに自社のアピールポイントをわかりやすく伝えられているのか確認したほうがいいかもしれません。
内定を出しても辞退されてしまう
面接まで進んだ人や内定を出した人が辞退してしまう場合は、「応募者の本音が面接で聞き出せていない」「面接ややり取りの中で入社意欲を高められていない」といった問題が原因になっているかもしれません。会社の方針を一方的に話していたり、仕事をするうえでの疑問点などを聞いてあげられなかったりすると、求職者は不安を抱きます。面接が適切に行えているのかもう一度考え直してみましょう。
採用しても長続きしない
採用した人材が長続きせず一向に定着しない場合の課題としては、「募集人材の要件が整理できていない」あるいは「適性や能力が面接や入社前に見極められていない」といったことが挙げられるでしょう。何通りかの明確な採用基準を設けるなどすると、判断にブレが生じにくくなり、適性や能力の見極めもしやすくなります。業務内容、職場の雰囲気などの要素を考慮しながら、自社で働くにはどのような人が向いているのかあぶり出しておかなければなりません。
採用力を高めるための3つのポイント
採用難の時代を乗り切るためには、採用力の向上を欠かすことはできません。採用力を高めるには押さえておくべき3ポイントがあります。どのようなことに気を配っておくと良いのかここで確認しておきましょう。
人材ニーズが明確で現場と共有できていること
優秀な人材を招き定着化させるには、採用すべき人材のニーズの明確化や現場との共有ができていなければなりません。求人を出すときは、自社はどのような人材を求めているのかをきちんと把握し、現場の求める人材と募集内容がマッチしているか確認することが重要です。
従業員が働きやすい環境であること
従業員が戦力となるためには、組織エンゲージメントが欠かせません。個人が主体的に動くことができる環境であること、組織の向かうべき方向性が理解できていること、個人と組織の間に信頼感があることは、優良企業の必須条件といえます。今いる従業員のためにはもちろん、採用力の向上にも好影響をもたらすので、労働環境の整備にもしっかり尽力しておきましょう。
企業理念が浸透している組織であること
求職者たちに働きたいと思ってもらうには、自社に魅力があることを伝えなければなりません。企業理念が浸透し、経営者と従業員がお互いを信頼しあっている組織は外部から見ても憧れを抱かれやすく、多くの人から関心を持ってもらえるでしょう。また、企業や組織、事業に対して誇りを持っていれば職場の雰囲気が自ずと明るくなります。日頃から自社の方針や考えをしっかり従業員に伝えられるような機会を設けるなど、組織としての一体感を築き上げる努力しておくことが大切といえるでしょう。
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従業員が採用候補者を紹介するリファラル採用とは
採用力向上に効果的な手法の一つとして「リファラル採用」というものがあります。従業員から自社の従業員に適切であると思われる候補者を紹介してもらうのがリファラル採用の特徴ですが、なぜこの手法が採用活動に有効なのでしょうか。ここではリファラル採用における3つポイントを解説していきます。
コネ採用との違い
リファラル採用は、紹介された人物は通常の採用試験や面接を経て公平かつ透明性をもって採用するかどうかを判断できるというメリットがあります。コネ採用の場合、有力者や取引先などの紹介で本人の資質に関わらず採用することが一般的ですが、必ずしも高い貢献度を期待できるわけではないでしょう。その点、リファラル採用は適性や能力を判断できるうえ、公平性も保てるので従業員に不満を抱かせることもありません。
採用コストが抑えられる
求人サイトへの掲載コストがかからないのもリファラル採用の特徴です。従業員からの紹介を受けることで、人材紹介会社やヘッドハンティング会社への報酬がかかりません。そのほか、就職イベントなどの出展料や、自社サイトやSNSを活用して情報発信するためのコンテンツ作成コストもかからないので、経費削減にも大きな役割を果たしてくれます。
市場にない人材を獲得できる
転職サイトやエージェントに登録していない人材、就業中で採用市場に出てこない人材、転職市場に出てこない人材といった「転職潜在層」を採用できるのも大きなポイントです。優秀層を単願でクロージングすることが可能なので、人材の確保を優位にすることができます。大学や専門学校の同窓生など、従業員と同じ専門的な知識や関心を持った人材であれば、適性や能力に大きな期待が持てるでしょう。すでにその企業で働いている友人に感化されたり、転職する気はなかったが友人の話に興味を抱いて転職したりする可能性もあり、自力では見つけられないような人材も採用候補になり得ます。紹介する側もインセンティブ報酬を貰えるので、双方にとってメリットの大きな手法といえます。
入社後の定着率が高い
リファラル採用で採用候補となる人材は、自社で働くことに誇りを持った従業員によって紹介された人です。従業員は一緒に働きたいと思う優秀な人材を紹介するため、紹介された人は長く勤める意思がある可能性が高いです。また、相談できる知人が社内にいることでコミュニケーション不足などの懸念を抱く必要もありません。リファラル採用は離職リスクも軽減できる効率の良い手法といえるでしょう。
優秀な人材が自然に集まる採用力の高い組織の特徴
採用力の高い組織は、優秀な人材が自然と集まるような要素が備わっています。そのような組織には共通する特徴があるので、ここで確認しておきましょう。
人材の可能性に目を向けている
多くの企業は、採用するか不採用にするかを検討する際、これまでの経験や能力に目を向けてしまいます。しかし、本当に活躍できる人材かどうかを判断するためには、人材の可能性まで目を向けなければなりません。採用力の高い企業は、そういうところまでしっかり想像して採用活動を行なっています。
挑戦や変化に対してもポジティブに捉えられる組織風土
企業理念や組織の進むべき方向性が浸透しているというのも、採用力の高い組織に見られる特徴です。そういう組織はゴールが明確なので、理想的な状態にするための方法を一人ひとりが主体的に考えることができています。また、全員の目指すところが同じなので、未知の領域への挑戦や変化に対しても会社や組織の信頼があり、不安を抱くことがありません。チャレンジすることに対してポジティブであるというのは、多くの人から働いてみたいと思ってもらうための重要な条件といえるでしょう。
組織で働くことへの誇りがありリファラル採用が多い
組織力が高いことはつまり採用力が高いということでもあり、優秀な人材を集めやすい環境が自ずと構築されます。そのため、リファラル採用を取り入れやすく、求職者も入社後の働き方や活躍できる場をイメージすることができるので定着率を維持することができます。リファラル採用はハードルが高い手法ではありますが、それを越えられる場合は採用の確度が高いので、組織力の高い企業は有利に採用活動を行うことができます。
採用力に影響する4つの項目
採用力には4つの項目が影響します。どれもおろそかにすることができず、いずれもすぐに効果が出るものではありません。ここでは、4つの項目とは何なのか具体的に解説していきます。
企業力
企業力とは、知名度やイメージなど、企業ブランドの力そのものです。大企業の場合は広告などのブランドイメージによるところが大きく、中小企業の場合は地域での知名度などで判断されることも多いです。また、企業力=資本力といった見方をする人もいるでしょう。業種のイメージも企業力を左右する要素になるため、いくら業績が良くても業種のイメージが悪ければ企業力の高さを誇示することもできません。
理念や社風
理念や社風とは、企業が事業を推進するための方針であるともいえます。採用力を高めるには、企業理念が理解できているかということはもちろん、個人も組織も成長できる社風や環境があるかということも求められます。また、事業が社会貢献できるものかどうかというのも多くの人が目を向けている重要な要素であるといえるでしょう。
労働環境
労働環境とは、働きやすい環境を意味します。待遇や処遇、制度がしっかりしているか、あるいは多様な働き方のニーズに対応できるかということは、企業の体質を決定づける大きなポイントであることは間違いありません。
採用活動
採用活動とは、採用に至るまでのすべてのプロセスを指します。募集や面接は適切に行われているか、応募者とのやりとりがスムーズにできているかということは、採用力に直接影響を及ぼす重大な要素です。優秀な人材を確保するうえで一番おろそかにできないものといっても過言ではありません。
中小企業が採用力を高めるには
企業力では大企業には太刀打ちできないないのは確かですが、理念や社風、労働環境、採用活動については、努力次第で中小企業にも十分勝機はあります。中小企業が採用力を高めるにはどうすればいいのか、詳しく解説していきます。
ブランド力を強化する
企業のブランド力は、信頼や共感を得られる企業理念を築き上げ、それを継続することで向上を図ることができます。自社の価値観や信頼感を高めながら、この会社で働きたいと思ってもらえるようなファンを増やすことが大事です。
企業の魅力を候補者へ伝える
企業のブランドを候補者へ正確に伝えることで、働きたい意欲を高めることができます。求人を出すときは、単純に事業を説明するのではなく、その根本にある理念やミッションを伝えることで共感を持つ候補者を増やすことができます。
働きやすい環境を整える
他社の事情を細かな部分まで把握することはできないため、給与や待遇面などで他社との差別化を図ることは難しいです。「働き方の選択肢を増やす」「働く部署を柔軟に変更できるようにする」「個々の状況に柔軟に対応するよう心がける」など、自社でできることを考えながら、労働環境を整えることが大切です。
採用コンサルを活用するメリット
採用コンサルを活用することで、専門家の力を借りて採用に関するサポートを受けながら採用力を上げることができます。採用コンサルにはどのようなメリットがあるのか、もう少し詳しく解説していきます。
変動の多い採用市場に対応できる
採用のトレンドは毎年のように変化します。時代の動きを掴みながら最新のトレンドに対応するのは難しく、自力ではなかなかうまくいかないこともあるでしょう。採用コンサルに相談すれば、売り手市場、買い手市場で対応できる採用活動が可能になります。トレンドに合わせることはもちろん、業界動向なども踏まえて活動計画を立ててくれるので、確度の高い採用活動を実現できます。
採用に関する負担が軽減できる
採用までのプロセスは多岐に渡るため、採用担当者には大きな負担がかかってしまいます。採用関連の業務が多く、応募者や候補者へのきめ細やかな対応はなかなかできません。人事コンサルを利用することで単純作業はアウトソーシングしたり、自動化したりして負担軽減を行い、本来の業務に集中できる環境を作ることが大切です。
専門家による客観的なアドバイスが得られる
採用コンサルはこれまでの豊富な実績があり、蓄積されたノウハウがあります。自社だけでは見つけることのできないような採用課題を探り出し、専門家特有の客観的な視点で課題解決方法を提案してもらえるのは、採用コンサルの最大のメリットといえるでしょう。
優秀な人材が定着する企業を目指すには
採用力がある会社は、決して大企業や特定の業種だけではありません。中小企業であっても、地道な努力を続けられる会社、社会貢献できる会社などはどこも大企業に負けない採用力がある場合が多くなっています。しかし、どれだけ努力を重ねても結果が出ないこともあるでしょう。自社だけで難しい場合は採用コンサルを活用するなど、今一度採用プロセスについて考えてみることをおすすめします。
