年功序列制度とは?運用のメリット・デメリット、留意点なども解説

    公開日 :

    更新日 :

    日本企業の伝統的な人事制度であり、長期的な雇用と人材定着ができる「年功序列制度」。近年、この年功序列制度は見直され、成果主義へとシフトするケースも増えています。

    オフィスコンビニ型の健康社食の導入増加中!  1品100円で、24時間いつでも食事を提供できる「置き型社食︎のオフィスおかん」。  普段の食事補助だけでなく、人材定着、従業員満足度向上などの目的で全国で導入されています。 「オフィスおかん」の詳細をみるこちらの記事では、年功序列制度のメリットやデメリット、成果主義へ移行した企業の事例などを解説します。

    年功序列制度とは

    年功序列とは、年齢および勤続年数を重視し、賃金と役職(地位)を決定する制度のことです。勤続年数が長ければ長いほど、その分、ナレッジやスキル、経験が蓄積されるため、賃金がアップし、昇進昇格する仕組みとなっています。

    年功序列制度を知っていく上で、併せて知っておきたい関連ワードは、次の3つです。

    終身雇用

    終身雇用とは、倒産や従業員自身のルール違反がなければ、退職まで安定した収入を得られ、雇用が保証される雇用のことです。終身雇用の特長は、長期的な労働力と人材の確保ですが、仕事で成果を得ても、得なくても収入が安定するので、従業員のなかには努力を怠る従業員に不満を抱くというケースがあるかもしれません。

    成果主義

    成果主義とは、年齢や勤続年数に関係なく、企業の業績と従業員個人の成果によって、賃金と昇進昇格が決まる仕組みです。例えば、2年目の従業員が勤続10年目の従業員よりも圧倒的に個人の成績が良かった場合、賃金も上がり、早い段階で昇格昇進できる可能性も見込まれます。つまり、成果主義は、年功序列制度と内容が対極となっています。

    ジョブ型雇用

    ジョブ型雇用とは、職務を明確にしたうえで専門的な知識やスキルを持った人を採用し、雇用契約を締結する雇用スタイルです。

    こちらのワードは、近年、新聞やWebメディアでもよく取り上げられているワードの一つです。企業のグローバル化や生き残りを図る上でも、専門知識やスキルを持ったジョブ型雇用の人材のニーズが高くなっている傾向です。なお、終身雇用とは、真逆の雇用システムとして位置づけられています。

    関連記事
    コロナ禍で注目されるジョブ型雇用。仕組みやメリット・デメリットを解説 | おかんの給湯室 | 働くをおせっかいに支える

    年功序列制度の運用メリット

    年功序列制度の主なメリットは、次の3つです。詳細について解説していきましょう。

    人事評価の管理と人材配置がしやすい

    企業が年功序列制度を設ける場合、年齢と勤続年数によって賃金や役職が上がるので、評価基準が見える化されやすくなります。勤続年数が長い従業員であれば、性格や特性も熟知しているので、人材配置がしやすいので、人材のミスマッチが回避できるでしょう。

    長く働こうという意識が芽生え、人材の定着率の向上につながる

    勤務年数が長ければ長いほど、賃金が上昇し、昇給ができる環境は、「頑張って、長く働こう」という思いとなり、モチベーションがアップする見込みがあります。加えて、離職率も低くなり、人材が定着しやすくなるでしょう。

    若手従業員の育成体制が確立されている

    長年、年功序列制度で運用する企業は、社歴が長く、経験豊富なベテラン従業員が多数在籍しています。そのメリットと現場での経験を活かし、若手を育成するノウハウとプログラムが確立されており、現場で活かせるスキルをスムーズに伝授できる見込みがあります。

    年功序列制度の運用によって生じるデメリット

    多様性に富んだ働き方へのシフトなどといった時代の変化とともに、年功序列制度のデメリットもクローズアップされるようになりました。ここでは、企業が年功序列制度で運用するデメリットを紹介しましょう。

    従業員の高年齢化による人件費の高騰

    年功序列制度の場合、従業員があまり離職することなく、長年同じ会社に在籍していると、企業全体の人件費も高騰します。そのため、企業に貢献につながる優秀な若手人材を雇用したくても断念することもあるかもしれません。社歴が長い従業員が増えている企業は、賃金を滞りなく払い続けるためにも、業績を伸ばせるよう、何らかの戦略を考えることが必須です。

    成果と給与が結びつかないことによるモチベーションの低下

    年功序列制度のデメリットは、優秀な従業員が成果を上げても、年齢などを理由にそれに見合った評価がされず、給与に直結できにくい点です。なかには、いくら努力しても報われないと感じる従業員も出てくるかもしれません。仕事へのモチベーションが下がり、離職に至る可能性が高くなります。

    年功序列制度を廃止した企業

    近年、年功序列制度を廃止し、成果とスキルを重視した制度へとシフトする企業が、増えています。では実際にどのような企業が、年功序列制度を廃止したのでしょうか。ここでは主な企業を紹介します。

    株式会社ファーストリテイリング|成果主義導入によって店長などにスピード出世

    出典:ファーストリテイリンググループ採用情報

    株式会社ファーストリテーリングは、「ユニクロ」「GU」といったブランドとして国内外でもおなじみの企業です。年齢や性別、国籍を問わず、きちんとした実績を残し、学ぶ姿勢を持っている従業員を正当に評価するという成果主義の人事制度を運用しています。

    この制度の導入によって、入社2年目でユニクロの店長として活躍している女性従業員や韓国人男性従業員などもいます。

    参考:社員たちの「使命」と「実行」 | ファーストリテイリング 新卒採用
    参考:社員紹介 | ファーストリテイリンググループ採用情報

    トヨタ自動車株式会社|自動車業界の変革期に対応できるよう、成果主義へとシフト

    出典:トヨタ自動車

    トヨタ自動車株式会社では、自動車業界の競争激化などにより、2021年1月より年功序列制度から、従業員の実行力や人間力といった評価軸を重視する成果主義へと変更。一律的に昇給する制度をなくし、個々の従業員の評価に基づいて賃金を決める仕組みを運用しています。

    楽天グループ株式会社|従業員が活躍できるよう、能力と成果で評価

    出典:楽天グループ

    楽天グループ株式会社では、従業員の勤続年数に関係なく、能力と成果をベースとした正当な評価を行い、ステップアップできる環境を提供しています。このシステムによって、従業員が活躍しやすくなり、社歴が浅くても昇給や昇進が見込まれます。

    株式会社ダイセル|従業員の強みと専門性を重視した組織作り

    出典:ダイセル

    株式会社ダイセルでは、段階的に年功序列制度を撤廃し、キャリアパスを複線化することで、より個々の従業員の強みに応じたキャリア形成によって組織の活性化につなげています。また、職種による専門性をより特化し、モチベーションアップしやすい環境作りにも尽力しています。

    株式会社愛知銀行|年齢に関係なく、「できる人材」が管理職に就けるシステムを導入

    出典:愛知銀行

    株式会社愛知銀行では、2021年10月に、年功序列制度型の給与体系のベースとなっていた「最低経験年数」を廃止しました。入行年次や年齢に関係なく、「できる人材」を支店長などの管理職に就ける人事制度を導入。それによって、中途の入行者や若手行員を積極的に登用し、モチベーションアップを促し、新しい風土を確立しています。

    伝統を重んじる銀行業界は、年功序列制度が基本ですが、国内企業のグローバル化や多様化に伴い、年功序列制度を廃止する銀行が今後も増えるかもしれません。

    年功序列制度を廃止する企業が増えている背景

    年功序列制度を廃止する企業が増えています。主な背景は、以下の3つです。

    若手従業員が増えにくい

    年功序列制度をそのまま運用すると、管理職の数が増えてしまい、若手従業員があまり増えず、先細りする状況に陥ることもあるかもしれません。

    この先も企業の繁栄を考えるなら、成果主義へとシフトし、スキルの高い若い人材を採用し、雇用する方が賢明でしょう。

    企業の発展に相応しい人材登用が好まれるようになった

    情報化社会の今日、有名企業でもベンチャー企業でも生き残りをかけて、時代の最先端を見据えて事業を展開できるよう尽力。国内の企業でも、学歴や年齢よりも、自社の発展に相応しいスキルやナレッジを兼ね備えた、人間性の豊かな人材の採用に取り組むケースが増えています。今後もその傾向は続くでしょう。

    多様な働き方を導入している企業が増えている

    時短勤務やリモートワークなどの働き方が多様化し、企業側としてもスキルとナレッジがあれば、年齢や性別関係なく、時短やリモートでも働ける風土作りに力を入れるようになっています。年功序列制度の企業に働いていた層が、多様な働き方ができる企業に心を惹かれて転職するケースもあります。

    年功序列から成果主義へ移行する際の留意点

    ここでは、年功序列から成果主義へ移行(予定)する場合にやっておきたいポイントを解説します。

    賃金体系と評価制度の設定を明確にする

    成果主義で運用する賃金体系は、基本給・賞与・評価基準などを細かく設け、明確にしておきましょう。詳細内容が定まったら、全従業員に公表します。

    なお、これから入社する人たちに対しても、賃金などの詳細の提示が必要です。トラブルが生じないよう、入社時に雇用契約書や労働条件通知書に賃金体系を抜け漏れなく作成しましょう。

    成果主義を徐々に移行することも視野に入れる

    急なタイミングで年功序列制度から成果主義へ制度を切り替えると、成果主義の恩恵を受ける従業員と、そうでない従業員の差が生じるリスクが発生し、退職につながるとも言われています。役職別や業種別といった、一部の層で成果主義を導入しながら、様子を観察し、徐々に成果主義へと広げていく方が従業員も心の準備ができるかもしれません。

    従業員が平等に学べるチャンスを設ける

    企業の雇用形態が、年功序列制度から成果主義へと移行すると、仕事ができる優秀な層にとって活躍できる機会が増えます。一方で、そのような職場環境によって、従業員間の平等不平等が生じるリスクが高まるでしょう。

    これを回避するには、従業員が安定した心理状態で働けるよう、研修や資格取得といった「学ぶ」チャンスを設ける必要性があります。学んだことで、従業員のナレッジが多くなり、仕事でも成果を発揮できることもあるかもしれません。このようなチャンスを設けることは、企業全体の発展に結びつくので、ぜひ従業員に「学び」のチャンスを設けましょう。   

    年功序列制度を見直すなら、成果主義のシステムなどを理解しておこう

    自社の年功序列制度を見直し、成果主義へと移行を検討するなら、年功序列制度のメリットやデメリットを理解するのが先決です。企業の事例などもチェックしながら、「自社が年功序列制度から成果主義へと移行したらどうなるか」ということをシミュレーションしておくと、課題点がピックアップされるかもしれません。そして新しいアイデアも生まれることでしょう。

    こちらの記事を参考に、自社の雇用事情や業績、社会の動きなどを踏まえた上で、最適な人事制度が何かということを考えてみてはいかがでしょうか。

    編集部おすすめ無料ダウンロードコンテンツ  自社の課題を可視化!「働きやすさチェックシート」を配布中         * ハード面・ソフト面、それぞれのカテゴリー別のチェックリスト   * オフィス環境、人間関係、人事評価、福利厚生・・・従業員は自社のどこに“働きにくさ”を感じているのかが丸わかり お役立ち資料を無料ダウンロード 

    メールマガジン登録はこちら

    週に1度、最新情報をまとめてお届け!

    • 働き方に関する最新トレンド 
    • オウンドメディア「おかんの給湯室」の最新記事 
    • OKAN主催のセミナーレポート
    • 健康経営や従業員満足度向上などのトレンド

    個人情報の取扱い

    プライバシーポリシーに同意の上お問い合わせ下さい。