シエスタ制度とは、ランチタイムの後の時間帯に休憩時間を長く取り、昼寝などゆったりと心身を休息する制度のことです。
本記事では、企業におけるシエスタ制度のメリットと注意点、導入時のポイントについて解説していきましょう。

シエスタ制度とは?
シエスタ制度とは、就業時間の午後に長めの昼休みを設ける制度であり、従業員が心身ともにリフレッシュすることを目的としています。 企業の昼休みは基本45分~60分ですが、シエスタ制度を設けることで昼休みが長くなり、かつ昼寝も認められているので、一部では「昼寝制度」と呼ばれています。
シエスタ制度の由来
シエスタ(siesta)とは、スペイン語でお昼から夕方を意味する言葉です。スペインやイタリアなどのラテン系の国ではランチの後に昼寝をする習慣があり、企業や店舗では一旦クローズし、シエスタに充てています。
シエスタ制度導入の目的
企業がシエスタ制度を導入する主な目的は、お昼以降の生産性を向上させることです。例えば、「眠気があって仕事に集中できない」「疲れが溜まり、やる気になれない」などに陥った場合、生産性が下がってしまいます。シエスタ制度があれば、身体の負担が軽減され、生産性が維持できるのです。
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シエスタに必要な時間はどのくらい?
スペインのシエスタの時間は、ランチタイムが過ぎた時間帯に相当する14時から17時まで(または16時まで)となっています。つまり約2時間から3時間が休憩となるわけです。
シエスタ制度のメリット
企業がシエスタ制度を導入する場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。こちらでは主なメリットを6つ挙げていきましょう。
①生産性が向上する
昼食後は午前の疲れが蓄積されるとともに、体内リズムが崩れ、パフォーマンスが落ちる時間帯です。昼食後に睡眠を取り入れることで、心身の疲れが緩和され、生産性のアップが見込まれています。
また、厚生労働省健康局の「健康づくりのための睡眠指針2014」によると、「午後の短い昼寝で眠気をやり過ごし能率改善」ができるという内容に触れています。
②労働時間をフレックス化できる
企業でシエスタを導入すると、従業員が働きたい時間帯に働くことができるようになります。例えば、定時に仕事を切り上げたいときはシエスタの時間を設けないで勤務できたり、午前中に何らかの用事があり午後の始業であればシエスタを取りながら夜10時まで勤務できたりします。
このようにフレックスタイム制度とシエスタ制度を併用することで、企業全体の業績アップにもつながることでしょう。
③認知能力を向上させられる
認知能力とは、記憶力・言語能力・判断力・計算力・遂行力などを指します。これらは、生産性を上げる上で必要不可欠な能力です。
NASAが宇宙飛行士に対し昼間26分間の仮眠を取らせた実験をしたところ、認知能力が34%向上したという結果があります。この結果からわかるとおり、昼食後の昼寝は従業員の健康管理面でも良いといえるでしょう。
また、眠気が襲ってくるとパソコンなどの機械類の操作ミスをしてしまうリスクが高くなり、多少なりとも業務にも支障をきたします。このようなミスが発生しないためにもシエスタの時間を設ける必要性があるかもしれません。
④体力・集中力を回復できる
体力や集中力が切れる原因の一つとして、睡眠不足と長時間労働、短時間の休息時間による疲れが挙げられます。
企業の事例ではありませんが、福岡県立明善高等学校では、企業のシエスタに相当する「午睡」の時間帯を取り入れたところ、生徒の体力と集中力がアップし、東大や九州大などの国立大合格者率がアップしました。シエスタは、体力と集中力を回復するためにも有効な手段といえるでしょう。
⑤ストレス解消ができる
睡眠は心身のリフレッシュだけでなく、ストレスを一時的にシャットアウトする効果があるといわれています。短時間でも睡眠を取るとストレスが解消され、穏やかな気持ちで仕事を再開できるでしょう。
⑥企業への満足度が高まる
企業がシエスタ制度を設けると、働き方の選択肢が広がり、従業員が満足して働けるようになります。長期で働ける従業員が増えるので、離職率を下げる見込みがあるかもしれません。
シエスタ制度の注意点
シエスタ制度はメリットもありますが、一方で注意点もあります。主な注意点については以下の3点です。
①退勤時間が遅くなる
シエスタ制度は、休憩時間が長いため、従業員の退勤時刻が遅くなりがちです。あまりにも退勤する時刻が遅くなってしまうと、プライベートの時間が少なくなる可能性があります。フレックス制度の有無に関係なく、シエスタの時間帯を16時までというルールを設け、始業時間が遅めの従業員の負担を少なくしましょう。
②寝すぎると良くない
睡眠時間が長すぎると、自律神経が乱れたり、ノンレム睡眠時に緩んでいた脳内の血管が急激に収縮したりするなどの現象が発生します。その結果、寝てもだるさを感じたり、また眠気が襲ったりする可能性が高くなるかもしれません。従業員が自分の健康状態と環境に合った睡眠時間をコントロールする必要があります。
③体内時計が乱れる
シエスタの時間を長く取り過ぎると、夜の睡眠の質が悪くなったり、夜に寝付けず睡眠不足になったりします。このような状況が続くと体内時計が乱れるリスクが高まるかもしれません。シエスタをするなら「1日30分まで」などのルールを考えておきましょう。
シエスタ制度の導入の際のポイント
企業がこれからシエスタ制度を導入する場合、いくつかのポイントをおさえておきましょう。詳細については以下の3点です。
①社内アンケートを実施する
シエスタ制度を導入する前に、従業員の働き方や生産性の状況を知ることが必要です。社内でアンケートを実施し、シエスタを導入する必要性があるかを考えていきましょう。
②メリットとデメリットを従業員に周知させる
企業におけるシエスタ導入は、心身を休めて生産性をアップすることが目的です。とはいえ、メリットもあればデメリットもあります。導入前に従業員に対し、メリットとデメリットを必ず知らせましょう。
③退勤時間への配慮
シエスタを導入すると退勤時間が深夜前の時間帯にずれ込むことがあります。従業員の負担を少なくし、生活リズムが乱れないよう、退勤時間のリミットなどを定めておきましょう。
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シエスタ制度を導入している企業事例
シエスタ制度を既に導入している企業の事例は次のとおりです。
お昼寝スペース「GMO Siesta」|GMOインターネットグループ株式会社
出典:GMOインターネットグループ
GMOインターネットグループ株式会社では、福利厚生の大幅拡充プロジェクトの一つとして「GMO Siesta」というお昼寝のスペースを設置。従業員が疲れた頭をリセットし、クリエイティブな発想を生み出すようサポートをしています。
参考:
GMOインターネットグループ福利厚生施設拡充プロジェクト第四弾大人気のおひるねスペースを拡充し「GMO Siesta」として5月1日にオープン
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仮眠スペース「ちょっと寝ルーム」|西川株式会社
出典:西川
老舗寝具メーカー西川株式会社では、従業員の健康増進の軸から仮眠に着目し、「ちょっと寝ルーム」を設けています。このルームは、日本睡眠科学研究所の監修のもと、効率の良い仮眠環境をコーディネートしているのがポイントです。企業にも仮眠(シエスタ)できる環境を提案する窓口を設けています。
参考
日本睡眠科学研究所 推奨『ちょっと寝ルーム』のご提案 - 健康経営
西川の社内仮眠スペース『ちょっと寝ルーム』が完成!
仮眠制度「木漏れ日タイム」|株式会社ナノコネクト
出典:ナノコネクト
株式会社ナノコネクトでは、従業員の生産性向上と、ワークライフバランスを保つ目的として仮眠制度「木漏れ日タイム」を運用。昼休み後の業務時間13:00~13:15の15分を仮眠時間とし、その間はオフィスを消灯し、緩やかなBGMを流しています。
参考:
Android搭載ロボットがリラックス空間を演出、お昼寝制度「木漏れ日タイム」を全社員に向けて導入開始 | ナノコネ
シエスタ制度を導入するならメリットとデメリットを把握しよう
シエスタ制度を導入するならメリットとデメリットを把握しよう
企業がシエスタ制度を導入する主な理由は、従業員の生産性の向上と健康管理です。シエスタ制度を導入した企業においては、従業員に良い効果が見られたという声が挙がっています。ただし、実際に企業がこれからシエスタ制度を導入する場合、メリットだけでなくデメリットもあるということを知っておくことも大切です。従業員の状況を踏まえた上で、シエスタ制度の導入を考えましょう。
