チームに属するメンバーたちが自分の能力や特性を十分に発揮し、成果を上げられる組織づくりの手法として「チームビルディング」というものがあります。
本記事では、チームビルディングの目的やメリット、機能させるポイントなどを解説します。

チームビルディングとは?
チームビルディングとは、メンバーが個々に持っている能力やスキル、経験を最大限に活かすことで、目標を達成できるチームを築くための取り組みのことです。今よりもより良いチームにするためのワークやプログラムを行ったり、研修などでも採り入れたりするケースがあります。
また、チームビルディングと関連性のある言葉が2つあります。その違いについては次のとおりです。
チームワークとの違い
チームワークとは、団体スポーツでよく使われる言葉です。「目標達成」という軸では、チームビルディングと共通していますが、チームワークには人材を生かす点と効率を上げる点という要素が含まれていません。
チームマネジメントとの違い
チームマネジメントは、管理職といったリーダー層が生産性を高める目的でチームのメンバーをマネジメントすることです。チームビルディングとの相違点は、主体が「誰」になっているかという点です。チームビルディングは「チーム全体」が主体ですが、チームマネジメントは、あくまでも管理職が主体であり、部下はどちらかというと「受け身」動く流れとなります。
チームビルディングの5つの目的
企業や組織単位で行うチームビルディングの主な目的は、次の5つです。
①ビジョンの浸透
内定者や新入社員、新プロジェクトのキックオフや内定者の集まりでチームビルディングを導入するケースがあります。
チームビルディングを行うことで、チーム全体のビジョンが浸透しやすくなり、チームビルディングを行う意味も伝わりやすくなります。
②ステージに応じた人材育成
チームビルディングは、新人研修や若手社員の戦力化、中堅社員のリーダー育成などの人材育成でも使われています。
特に2020年以降に入社した新卒(20代の若手)従業員は、コロナ禍の影響で社会人としてのコミュニケーションが不足しがちであり、人材育成がなかなかできなかったケースがあるかもしれません。そのような場合、チームビルディングを活用すると若手社員の様子を垣間見ることができるとともに、人材の育成がしやすくなります。
また、中堅社員であれば、担当する役割分担をリーダーとしての要素を入れることで活躍や成長する機会を増やすことができ、人材育成に直結できることでしょう。
チームのメンバーが成長できるよう、まずはお互いを知り、自由な意見交換をできる場を設け、コミュニケーション不足を解消することが重要です。課題や悩みを一人で抱え込まず、気軽に相談できる雰囲気を作ることで、早期離職の防止にもつながります。
③マインドセットの形成
チームビルディングの魅力の一つとして、一人ではやる気があまりなくても、チーム単位で動けば最後まで頑張ることができ、満足感を得られます。
例えば、ゲーム要素があるチームビルディングを実施することで、チームで一つのことをやる楽しさや大切さを肌で感じることができ、「目標を達成したい」という思いが強くなることでしょう。
④チームメンバーの関係強化
チームメンバー同士の関係性を強める手法の一つが、チームビルディングです。年齢や社歴に関係なく普段からコミュニケーションが取れているチームは、結束力が強く、かつ業務効率が上がりやすくなります。
⑤コミュニケーションの活性化
チームビルディングには、リラックスした状態で会話を楽しむアイスブレークや、ゲーム形式の研修など、さまざまな手法があります。メンバー同士のコミュニケーション量を増やし、関係性を深めることで、一人ひとりが共通の目標を認識できるようになり、チームの課題解決能力が向上します。
チームビルディングのメリット
チームビルディングを行うメリットは、従業員各々の業務でプラスになる要素が含まれています。主なメリットは、次の3つです。
モチベーションアップ
チーム一丸で一つの目標に向かって頑張っている過程で「認められたい、貢献したい」という承認欲求が芽生え、達成することでモチベーションがさらに上がります。
新たなアイデアの創出
チームメンバーには、さまざまなバックグラウンドを持っている人たちがいます。チームビルディングの活動を通しコミュニケーションが増えることで、自分にはない意見や思いに触れる機会が増え、新しいアイデアが生まれ、視野が広がることがあります。
生産性の向上
チームのメンバー同士の理解とコミュニケーションが進むと、チーム内の役割が決まってきます。「自分の強みをどこで生かせるのか」「チームメンバーの良さを生かせる場所はどこか」などを考えられるようになるので、業務の生産性向上につながります。
チームビルディングの5ステップ
チームビルディングを成功させるには、段階を踏むことが必要です。こちらでは、心理学者のブルース・ W・タックマン氏が提唱した「タックマンモデル」の5ステップを解説します。
ステップ1:形成期
形成期とは、チームが結成されて間もない時期であり、種まきの時期です。チームのメンバーがお互いを知らないことが多々あるため、リーダーに任命された人は、メンバーの個々の目標を聞いたり、チーム全体の目標を共有したりするだけでなく、相互理解する時間を設ける必要があります。例えば、ランチ会や交流会など雑談する時間を作るなど、コミュニケーションを取る機会を作ることが必要です。
ステップ2:混乱期
混乱期とは、チームでのプロジェクトが進み始めた時期のことです。チーム単位で活動を進めると、メンバーの仕事の進め方や考え方の違いが明確になる場合があります。状況によって意見や考えの衝突が生じることもあります。リーダーは、相互理解を第一に考え、課題の解決の原因を発見できるよう努めましょう。
ステップ3:統一期
統一期とは、お互いの考えや行動の特性を認め合い、かつチーム内でも役割ができ上がってくる時期です。チーム内でもメンバーが団結する行動や言動が見られるようになり、それぞれの持ち味や強みが生かされてる状態です。
ステップ4:機能期
機能期とは、メンバー各々のこれまでの成果が現れる段階のことを指し、一つのチームとして成り立つ状態です。
リーダーの指示がなくてもメンバーが自分で判断し適切な行動ができるようになる時期でもあります。現状に満足せず、さらに良いチーム作りを目指せるよう、チーム全体が自覚を持つようになります。
ステップ5:散会期
散会期とは、メンバーの異動およびプロジェクトの終了などにチームが解散する段階を指します。メンバー同士がお互いの成長を労ったり、共に称え合ったりする光景が見られれば、チームビルディングが成功だったという証といえるでしょう。
チームビルディングを機能させる4つのポイント
チームビルディングを機能させる場合、ポイントを知る必要があります。
①具体的チーム目標の設定
目標設定とは、思いや目標を実現するために設けるゴールのことです。目標設定が具体的でないと、進捗状況がわからなくなってしまい、途中で「何をゴールにしているか」がわからなくなる可能性が高くなります。最初にチームの目標を具体的にしておくと、やるべきことが明確化し、これからの計画も立てやすくなります。
②メンバー各々の役割を明確化
チームの目標に基づきメンバー各々の役割分担を明確にしましょう。どこまで責任を持ってやるべきなのかもわからなくなるので、チームリーダーは、メンバー各々のスキルや経験、強みを考えた上で役割分担を明確にしておきましょう。
③多様な価値観の容認
チームメンバーは、年齢や社歴、出身(国籍)など、さまざまなバックグラウンドの人たちで構成されています。異なる考えや価値観を持つ人たちがいるのは当然です。チームの結束力を強めるためにもお互いが認め合える雰囲気づくりが必要です。
④能力や関係性を考えたチーム編成
メンバー各々の能力を考えずチーム編成をすると、目標を掲げても達成が難しいというケースもあります。例えば、人前で話すことが得意なメンバーであれば、ファシリテーター役を任せるなどの能力に付随した編成を考えましょう。加えて、関係性も考えたチーム編成も大切です。メンバーの適性を誤って編成すると、チーム内で対立が生じる可能性があるため、関係性を慎重に踏まえた編成を考える必要があります。
チームビルディングの取り組み事例
これまではチームビルディングの概要や進め方のポイントを中心に挙げましたが、具体的な事例を知っておきたいという方もいることでしょう。
こちらの章では、お手軽にできる事例を紹介します。
食事会・レクリエーション
食事やレクリエーションをしながらのチームビルディングは、仕事から離れることができ、お互いがリラックスした状態でコミュニケーションが取れます。プライベートの話題で盛り上がることもあるので、そこから良い関係性が生まれることでしょう。季節的にバーベキューやクリスマスのシーズンなら、季節ならではのイベントとしてチームビルディングを企画するとメンバーのテンションも高くなり、楽しさがより一層広がります。
クイズ・ゲーム系
チームビルディングは、ゲーム感覚で楽しめるものもあります。謎解きクイズやジェスチャーを当てるクイズ、しりとりゲームなど、懐かしいものもありますので、盛り上がりそうなものを選ぶと良いでしょう。会社にまつわる内容をピックアップし、オリジナルの謎解きゲームをプロデュースする事業会社もありますので、活用するのも一つの手です。オンラインでも対応しているゲームもあるので、チームの規模などを考えて選びましょう。
グループディスカッション
チームビルディングとしてトークスキルを磨きたいのであれば、グループディスカッションとして実施するのも一つの手法です。グループディスカッションの種類として、主に「問題解決型」「選択型」「自由討論型」の3つがありますが、テーマの選択はメンバーの特性を見て決めると参加者が平等に活躍できるかもしれません。企画(主催)者は、普段自分から話す機会が少ないメンバーの配慮を行うことが大切です。
ボランティア活動
近年、SDGsの取り組みがクローズアップされている流れもあり、ボランティア活動をチームビルディングとして取り入れているケースもあります。例えば、海岸や河原のゴミ拾いなどは、今日のゴミ問題を改めて考える機会にもなり、新たな学びを得られるチームビルディングになるでしょう。一緒にゴミ拾いをすることで、チームの絆が強くなるので、ボランティア活動も視野に入れておくと良いでしょう。
スポーツ系
ラグビーやサッカーといったチームスポーツでは、メンバーの特性を考えることが重要です。これはチームビルディングでも共通している部分といえます。スポーツ系のチームビルディングでは、メンバーの持ち味をどう生かすかというトレーニングもつながり、これからのチームづくりに生かされるでしょう。特にドッチボールは、小学校のときにやっていたという層も一定数いるので、スポーツ系のチームビルディングとしておすすめです。
チームビルディングの導入は企業にも個人にもプラスの要素がある
チームビルディングは、目標達成に向けてチームメンバーが持って生まれた能力やスキル、これまでの経験を可能な限り活用する手法です。日頃の地道な取り組みが必要であり、一朝一夕で成し遂げられることとは異なります。
チームビルディングを実施すれば、業務の効率化や価値観の容認などさまざまなメリットだけでなく、人間関係にも良い効果をもたらします。今後、従業員および企業自体がさらなる飛躍を図りたいなら、こちらの記事をご参考にしながらチームビルディングを視野に入れると良いでしょう。
