サンクスカードは、企業内のコミュニケーションを活性化させる施策です。感謝の気持ちを言葉にして送り合うサンクスカードは、職場の雰囲気を前向きにさせるだけでなく、仕事のモチベーション向上やチームの信頼関係の醸成につながります。
ここでは、サンクスカードがもたらすメリットについて解説するとともに、デメリットを踏まえ運用を成功に導くコツについて紹介します。

サンクスカードとは?
サンクスカードとは、会社の中で社員同士が感謝の気持ちを伝える際に利用するメッセージカードのことをいいます。社内コミュニケーション活性化や、チームでの信頼関係を高めるための施策として活用されます。
「資料作成手伝ってくれてありがとう」「この前の提案、〇〇が素晴らしかったよ」のように、感謝の気持ちや期待を言葉にしたり、成果を称えたりすることで受け取った側のモチベーションが向上するほか、送る側も言葉を気持ちにすることで生まれるポジティブな影響を実感することができます。
サンクスカードが注目されている背景
サンクスカードが近年注目されている背景には、社内コミュニケーションの変化があります。テレワークが普及したことで、遠隔地にいる社員とやり取りする機会が増えました。リアルな場で顔を合わせたことがなく、メール・電話のみの関係ということも少なくありません。
また、テレワークでなくても、リアルな場の交流は新型コロナウイルス感染症の影響で制限されてきたことから、同じオフィスに勤めていたとしても、直接顔を見てやり取りする機会は減っています。オンラインでのやり取りが増えたことから、「上司はどう思っているのか」「部下は大丈夫だろうか」と、「わからないこと」への不安を抱える人もいます。
サンクスカードは、日頃なかなか伝える機会のない気持ちを言葉にし、コミュニケーションを円滑にするための効果的な施策なのです。
サンクスカード導入のメリット・デメリット
サンクスカードを導入する上でのメリット・デメリットを見てみましょう。
サンクスカードがもたらす5つのメリット
サンクスカードを活用することで、日頃のコミュニケーションが活性化されます。また、部署などの壁を超えたつながりを作るきっかけになるだけでなく、仕事に対するモチベーション向上も期待できます。
①コミュニケーションが活性化する
サンクスカードを、「サンクス制度」や「ありがとうカード」といった名称で導入する企業は少なくありません。その多くの目的は、社内コミュニケーションの活性化です。
たとえば、東京ディズニーランドを運営するオリエンタルランドでは「ファイブスター・プログラム」と称し、素晴らしい行動をしたキャストに、上司がサンクスカードを渡す取り組みを1995年から導入しています。
行動の判断基準となるのは、同社がもつ「The Five Keys」の行動指針です。キャストとのコミュニケーションを通じ、上司自身もキャストの行動がゲストの笑顔につながると実感しています。
参考:企業風土とES活動
②部署や役職の壁を超えることができる
普段の仕事では、決まった社員としかやりとりがないケースは珍しくありません。そんなとき、社内横断プロジェクトや懇親会など、違う部署やチームの社員と関わりをもつと緊張してしまいます。
サンクスカードは、こうした「新たなつながり」の際に、コミュニケーションのきっかけとなります。部署や役職が異なれば、話す機会が滅多にないということも少なくありません。サンクスカードを使うことで、機会を逃さずに感謝の気持ちを伝えられるのです。
③モチベーションの向上が期待できる
サンクスカードを受け取った側は、組織や仲間に対して「貢献している」という実感を得られます。また、サンクスカードを通じてフィードバックを受け取ることで、自分が正しいことをしているという肯定感を得られます。
サンクスカードは受け取る人だけでなく、第三者に対してもポジティブな影響をもたらします。サンクスカードに憧れを抱き「自分ももっと頑張ろう」とやる気を高めるのです。
④企業のブランディングにつながる
サンクスカードの制度は、企業文化や制度として対外的に紹介できます。コミュニケーション活性化や、社員の心理状態に気を配っている会社というポジティブなイメージにつながります。
昨今では、働く側の環境整備に企業がどのように関わっているかは、就職や転職において重視されるポイントの一つです。採用シーンなどで、アピールポイントとして活用できるでしょう。
⑤人材の定着化につながる
サンクスカードを通じたコミュニケーションの活性化やモチベーションの向上を通じ、社内の雰囲気が明るくなることが期待できます。「働きやすい」「仕事をするのが楽しい」という実感は、人材定着の上で重要な要素です。
サンクスカードがあることで、社員は「自分のがんばりを認めてもらえる」と実感できる機会が増えます。日々の感謝をサンクスカードで吸い上げることで、従業員の心理的安定性を高め、人材の定着につながるのです。
サンクスカード導入で注意したいデメリット
さまざまな効果が期待できるサンクスカードですが、導入や運用ではデメリットもあると理解した上で進めることが重要です。
①導入から効果が出るまで時間がかかる
サンクスカードを導入しても、その行動が社員のなかで習慣化するまでには時間がかかります。目的や運用方法をきちんと組織に周知させられなければ、同じ人同士で送り合うことになり、マンネリ化してしまうかもしれません。
初期段階で、なぜ導入するのか、利用することでどんなメリットがあるかをきちんと社内で説明しましょう。共感を受けた人が増えることで、運用に乗せることができるでしょう。
②運用にコストがかかる
新たな制度の運用は、人手や予算などの労力がかかります。とくに、メンバーが多い部署ではマネージャーの立場にいる人はプレッシャーを感じるかもしれません。また、紙で運用していると「書く作業」「手渡す時間」が負担となるだけでなく、紙のコストも発生します。
運用を効率的に行うために、アプリなどのwebツールの活用も検討しましょう。
③サンクスカードは必要ないと感じる社員もいる
企業としてサンクスカードのメリットを感じていても、かならずしも社員に受け入れられるとは限りません。サンクスカードの制度があることで、「感謝を強制させられている」と感じる社員が出てきてしまうかもしれません。「月に〇枚はサンクスカードを送ること」のように細かい数字を決めてしまうと、運用に乗る前に形骸化する恐れもあります。
社員の負担にならないためにも、目的とあわせて運用ルールの明確化を行いましょう。
サンクスカードの運用手順
サンクスカードの導入には、責任者の選定やスケジュールを設定しながら進めましょう。
運用の責任者を決める
まず、サンクスカードの運用責任者を認定します。一人の担当者ではなく、チームを立ち上げるのも、「自分ごと」として制度を捉える人が増えるため、制度浸透に効果的です。プロジェクトチームのように複数人が関わることで、組織から公認されている活動と印象づけることができます。
運用目的を明確化する
運用の目的を明確にしたうえで、運用メンバーおよび社内に周知を行いましょう。コミュニケーション活性化やモチベーション向上が代表的ですが、これらでも制度の最適な設計が異なります。
スケジュールと目標の設定
サンクスカードのマンネリ化・形骸化を避けるためには、管理者や運用チームのなかでルールを事前に決めておきましょう。月ごとに、どれくらいのサンクスカードがやり取りされたのか、レポートでまとめて可視化することで、制度の社内浸透度を把握できます。目標枚数は従業員には伝えず、運用チームで共有し、振り返りの際の改善基準にするといいでしょう。
導入後は定期的な見直しを行う
導入後は、定期的な見直しを行いましょう。導入後、改善は必須です。うまく定着すれば従業員のモチベーション向上や職場の雰囲気改善につながりますが、効果は社内全体を巻き込めるかどうかにかかっています。
定期的なモニタリングで、利用する社員の声を聞いてみましょう。たとえば「誉める基準がわからない」という声があれば、企業が掲げているビジョンや行動指針などを一つの基準とする方法もあります。
サンクスカードの運用を成功させるコツ
サンクスカードの組織内で定着させるには、利用する側の視点に立った工夫が必要です。デメリットが浮き彫りにならないよう、サンクスカードの運用のコツを確認しましょう。
工数をシンプルにする
サンクスカードを送る際、従業員が負担と感じないよう、手軽に作成できる工夫を行いましょう。カードの例文があれば、従業員が文面を作成する時間や手間を削減できます。また、アプリ等でオンライン化を図るのも工数削減に有効です。
紙に手書きで文章を書くこと自体を手間と感じる人は少なくありません。オンラインサービスであれば、「いま感謝を伝えよう」という瞬間に、その場でカードを送ることができます。サンクスカードのアプリやオンラインサービスは複数あるため、比較検討してみるといいでしょう。
送った感謝を可視化する
感謝されることは、大きな喜びです。本人にこっそり伝えるのではなく、周りにもわかるような形でサンクスカードを運用することは、感謝を送られた人の肯定感を高め、仕事のモチベーション向上につながります。
さらに、サンクスカードの送り合いが目に見える形になれば、サンクスカードの制度そのものを「あたりまえのこと」として組織に定着させられるでしょう。レポートとして可視化する、送ったサンクスカードを掲示板に貼るというアナログな手法のほか、オンラインサービスを利用すれば送った内容や周りの人からのリアクションを可視化できます。
まずは経営層やリーダー層が積極的に活用する
サンクスカードの運用を成功させるため、経営層やリーダー層が積極的に活用するのも大切です。その際、普段は表に出てきづらい感謝を伝えてみるのもいいでしょう。
マネジメント層からの感謝は、普段は人事評価に関連する部分に偏りがちです。サンクスカードでは、あえて数字とは関係のない、気遣いやフォローといった目に見えない成果に触れてみましょう。部下は「見てもらえる」という実感を得ることができ、サンクスカードに前向きな印象を抱くでしょう。
社内イベントと合わせて運用する
感謝を送り合うこともポジティブな効果をもたらしますが、サンクスカードと社内イベントを結び付け、表彰やボーナスといった制度を利用してみると、さらなるインセンティブを提供できます。
このとき、「カードをもらった数」だけを取り上げるのではなく、数字とは関係のないテーマをあえて設定してみるのもおすすめです。サンクスカードだからこそ伝えられるような感謝に焦点をあて、表彰を演出してみましょう。
サンクスカードの効果的な運用を助けるアプリ
従業員の手間を減らし、サンクスカードの効果的な運用を助けるアプリにはさまざまなものがあります。グループウェアの機能の一つとして活用できるものや、サンクスカードに特化したもの、さらには感謝の気持ちを福利厚生の一つとして利用できるものまで。自社の目的にあわせて選択してみるといいでしょう。
サンクスカード|サイボウズOffice
サイボウズOfficeは、組織の作業効率化を目的としたグループウェアです。スケジュール管理やメッセージ機能などを中心に、組織にとって有益な機能が揃っています。サンクスカードは、カスタムでつけられる機能の一つです。従業員も日々の業務で利用しているグループウェア上でサンクスカードを利用できるため、抵抗感なく導入を進められます。
参考:サイボウズOffice カスタムアプリ
サンクスカードアプリ|株式会社NSKK
株式会社NSKKのサンクスカードアプリは、サンクスカードに特化したアプリです。スマホやタブレットで、どこにいても簡単にサンクスカードを送信でき、管理側の集計作業も不要に。運用の手間を削減し、効果的に使いたい場合に適しています。
参考:株式会社NSKK サンクスカードアプリ
GrazieCoin(グラッチェコイン)|株式会社バリューソフトウェア
サンクスカードだけで終わらせるのはもったいない、そんな風に感じている会社に適しているのが、「ありがとう」の気持ちを「コイン」に変えられる福利厚生とつながったアプリです。GrazieCoinは、ありがとうの気持ちを送ると、受け取った側の従業員にポイントが貯まりコインがもらえる仕組みとなっています。貯まったコインは商品と交換可能。組織の活性化、従業員のモチベーション向上につながります。
参考:GrazieCoin(グラッチェコイン)
サンクスカードは組織の活性化につながる
サンクスカードは、日頃の感謝を忘れずに言葉にして送り合えるため、従業員同士の信頼関係の構築やモチベーション向上につながります。コミュニケーションの形が変化するビジネスシーンにおいて、表に出にくい気持ちを可視化する有効な方法といえるでしょう。
運用にあたっては、従業員の負担とならないよう、工数を削減するような工夫を設けましょう。サンクスカードの目的を明確にし、社内イベントとの併用など運用に力を入れることで、社内制度の定着につながります。
