5分でわかる入管法改正案|入管法により外国人労働者の何が変わるのか?

    目次

    少子高齢化が進み、日本では人材不足が大きな問題となっています。「人が集まらない」と嘆く企業も多く、人不足による倒産も相次ぐほどの事態となっています。

    そういった背景を受け、政府は2018年11月2日に「入管法改正案」を閣議決定しました。端的に言えば、「外国人労働者の数を増やし、国内の人材不足を解消しよう」という趣旨のものです。

    株式会社マイナビがおこなった「2019年卒マイナビ企業新卒内定状況調査」では、2019年卒採用において外国人留学生を採用した(する予定)」と回答した企業は全体の11.7%にとどまっています。採用しない理由として、「手続きが困難」「日本語能力」「現場の受け入れ体制が整っていない」などが挙げられています。
    【参考】「2019年卒マイナビ 企業新卒内定状況調査」

    こういった現状を打破するため、法改正をおこない企業が外国人労働者を雇いやすくする狙いがあると考えられます。しかしながら、まだまだ詰め切れていない部分が多く、「移民との違い」「増やすべき人数」など、議論の余地が残っているのが現状です。

    この記事では入管法が「なぜ今、改正が必要なのか」「どういった内容になるのか」といった素朴な疑問にお答えしていきたいと思います。

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    入管法改正案とは?

    まずは、入管法改正案をご説明する前に、現行の法律である「出入国管理及び難民認定法」の説明を簡単にしたいと思います。

    出入国管理及び難民認定法とは、入国・出国、外国人の在留資格、不法入国などに関する法律で、略して「入管法」と呼ばれます。もともと1951年にポツダム命令に基づいて制定された政令のひとつでしたが、その翌年「ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係諸命令の措置に関する法律」によりそれ以降は法律としての効力を持つようになりました。

    それ以降も社会情勢に合わせる形で、数回にわたり改正がおこなわれています。1982年の改正では、それまで地位が明確になっていなかった「戦前から日本に住んでいる韓国・朝鮮・台湾人」の特例永住権が認められました。

    その後、1980年代後半から1990年にかけては、不法入国者や不法就労者が社会問題化し、在留資格の明確化、不法就労者の雇用主への厳罰化が進めれています。2009年からは在留カード交付が開始されるなど、2000年以降も改正が複数回おこなわれています。

    入管法改正案が閣議決定された背景

    ではなぜ今、入管法改正案が閣議決定されたのでしょうか? 現行の入管法が閣議決定された背景はいくつか考えられますので、それぞれ説明していきたいと思います。

    生産年齢人口の減少

    改正案が閣議決定された一番の理由は、「生産年齢人口の減少」です。生産年齢人口とは15歳から64歳の年齢層のことで、2008年以降はこの層が減少の一途をたどっています。

    どれぐらい減っているのかというと、1990年代前半には約8700万人いた生産年齢人口が2016年には約7600万人まで減っており、この25年ほどで1000万人もの人口が減少に至っています。この傾向はこれからも続くことが予想されており、2036年には約6300万人、2060年には約4400万人まで減っていくと総務省は推計しています。

    この影響により日本国内では人材不足が問題視され始めています。そのため、求人を出しても人が集まらないという状況が各地で起きており、今後さらに深刻化していくと予想されます。

    そこで、入管法改正案が閣議決定されることになりました。

    【参考】総務省平成28年度版 情報通信白書

    都市部への一極集中、地方での過疎化

    都市部への労働人口一極集中も、入管法改正案の要因として見逃せません。

    日本全体の人口は減少しているものの、一方で都市部の人口は増加しています。地方の人たちが東京や大阪などの都市圏移り住むといったケースが多く見られるということです。

    特に若い世代が進学や就職を理由に地方から離れてしまうため、田舎や山岳部などでは労働力が特に不足している状況です。さらに地方の高齢化率は都市部よりも高く、介護分野や1次産業の分野で特に人が不足しています。

    人手不足による倒産が増加している

    また、人材がいないという理由で倒産する「人手不足倒産」が増加しています。

    2017年度の人手不足倒産は114件。4年連続で増加しており、5年前の数字と比べて2.5倍に膨れ上がっています。種別に見ると「建設業」「サービス業」「製造業」での倒産が上位を占めています。

    人手不足が経済成長を阻害している

    政府はこの状況を危惧し、人材確保のための動きをはじめました。そこでおこなわれたのが、この入管法改正案です。入管法を改正することで、海外人材が日本で活用しやすくなります。

    生産年齢人口を増やすためには、「出生率向上に向けた対策」「女性の社会進出」も有効な策ですが、いずれも効果が表れるには時間がかかります。そのため、即効性のある入管法改正に踏み切ったと言われています。

    改正案で「就労目的の新在留資格」を明確に位置づける

    現行の制度では、日本で働けるのは以下の3パターンです。

    ・留学生
    →留学生は週28時間までアルバイトとして労働が可能。
    ・技能実習生
    →農業や工場などで働き、最大5年間の滞在可能。その後母国に帰って身に付けた技術を役立てていく。
    ・医師や大学教授などの高度な人材
    →医師や教授、外交官など高度な専門知識を要する職業が対象となる。

    2017年10月時点で日本における外国人労働者の数は128万人。この数字は日本で働いている人口総数の2%に当ります。ここ5年間で約60万人も増えており、もはや外国人労働者なしでは成り立たないといってもおかしくない状況です。

    現行の入管法では、長期で働けるのは原則「医師や教授などの高度な人材のみ」となっています。しかしながら、この128万人のうち就労ビザ(労働を目的としたビザ)を得て働いているのは18.6%しかいません(厚生労働省「外国人雇用状況」の届け出状況まとめ)。

    留学生や技能実習生が実状の労働力となっており、そういった人材に長期間日本で働いてもらうために、入管法を改正しましょうということです。

    閣議決定された入管法改正案の内容

    入管法改正案の詳細については、まだ閣議決定の段階なので、細かいことははっきりとわかっていません。「生煮えの状態」ともよく言われるように、今後さらなる議論が必要です。

    では、2018年11月2日に閣議決定された内容を見てみましょう。

    特定技能を持つ外国人労働者の受け入れ

    閣議決定された入管法改正案によると、日本で働ける外国人の枠が広がります。前述した3パターンにくわえて、以下の2つの在留資格が設けられます。

    【特定技能1号】
    条件:生活に支障のない会話ができる、一定の知識や技能を持っている
    在留期限:最長5年
    家族の帯同:不可

    【特定技能2号】
    条件:生活に支障のない会話ができる、熟練した技能を持っている
    在留期限:更新可能(最長何年まで更新できるのかは不明)
    家族の帯同:可

    この2つの在留資格が設けられますが、まだまだはっきりとした条件基準は決められていません。「生活に支障のない会話」がどのレベルに相当するのか、「一定の知識や技能」「熟練した技能」がどの程度まで要求されるのかなど、不明確な部分が多いのが現状です。また、この特定技能1号・2号が移民に当るのかどうかも議論が分かれるところです。

    ちなみに国連による移民の定義は、「移住の理由や法的地位に関係なく、定住国を変更した人々」となっています(正式な法的定義は存在しない)。移住理由は関係ないため、この特定技能2号が移民に相当するのではないかと一般に言われています。
    【参考】国際連合広報センター|難民と移民の定義

    14業種での適用を検討

    入管法改正案によると、在留資格が適用される業種は以下の14業種が対象となります。ただし、これもまだ決定ではなく、あくまで検討段階です。

    【対象となることが検討されている14業種】
    ・介護
    ・ビルクリーニング
    ・素形材産業
    ・産業機械製造
    ・電気・電子機器関連産業
    ・建設
    ・造船・舶用工業
    ・自動車整備
    ・航空(空港グランドハンドリング・航空機整備)
    ・宿泊
    ・農業
    ・漁業
    ・飲食料品製造(水産加工業含む)
    ・外食

    これらの業種ではすでに外国人労働者の方が多く働いており、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの統計では食品製造業で8%、繊維工業などで6.7%となっています。

    在留資格認定証明書の交付を停止もできる

    入管法の快晴により、外国人労働者の積極的な受け入れをおこなっていきますが、万が一増えすぎてしまった場合には、在留資格認定証明書交付の停止も可能とのこと。これは、人材が増えすぎてしまって人余りになった場合の対応策と言えるでしょう。

    企業に求められる対応

    さて、入管法が改正した場合、企業にはどのような対応が求められてくるのでしょうか? その点を詳しく見ていきましょう。

    仕事面以外の生活支援を充実させる

    法務省入国管理局の資料によれば、「受け入れ機関は外国人に対する日常生活、職業生活、社会生活上の支援をおこなう」と記載されています。そのため、外国人労働者(特定技能1号)を受け入れる企業においては、仕事を用意するだけでなく、「生活ガイダンスの実施」「社宅の確保「行政手続きの支援」などをおこなう必要があります。

    【参考】法務省入国管理局 新たな外国人材の受入れに関する在留資格「特定技能」の創設について

    登録支援機関との連携

    外国人労働者を雇う場合、多くは仲介機関を利用して人を探します。現在の主な仲介機関は「ハローワーク」「外国人雇用サービスセンター」「民間派遣業者」などですが、今回新設される特定技能1号・2号の労働者を採用する場合には、登録支援機関との連携が必要になってきます。

    この登録支援機関が、官営なのか民営なのかはまだはっきりとしていませんが、それらの機関と連携しながら、採用を進めていくことになるでしょう。

    語学や風土についての研修

    外国人労働者に日本語を覚えてもらう、社内風土を教育するということも欠かせません。たとえば、ヨーロッパの国々では他国から人を集めるため、500時間以上の無料の語学研修を用意する国も存在します。

    日本語や日本の商習慣をしっかりと理解してもらい、お互いに齟齬なく働ける環境づくりが重要です。

    医療・年金制度の整備

    外国人を雇う場合には、「外国人雇用状況の届出」の提出が義務付けられています。今後、これがどうなるかはわかりませんが、おそらく届出の義務付けはなくなることはないでしょう。

    それと同時に、特定技能の労働者に対しては公的年金の保険料を給与から天引きする必要があります。医療費についても同様です。

    ただ、働く本人は社会保障が適用となりますが、その家族がどういった扱いになるかはまだ不明です。入管法の関連法として、健保法改正案も国会提出される見込みです。

    ダイバーシティ化を進めている企業事例

    入管法改正案についてご説明してきました。

    最後にすでに外国人労働者とうまく協調している企業を紹介します。

    株式会社マイベスト

    株式会社マイベストは、webメディア「mybest」を運営している会社です。日本だけでなくアジアやヨーロッパなど海外12カ国でも事業展開をおこなっています。

    この会社で働く従業員の約3割は外国人の方で、国際色豊かな人材が集まっています。多様性に富んだ人材を生かして、海外への事業展開につながっています。

    福利厚生制度も充実しており、「ピアボーナス制度」「ドリンク無料」「フレックスタイム」など、働きやすい職場づくりにも力を入れている会社です。

    【参考】https://my-best.com/company

    アデコ株式会社

    グローバル企業のアデコグループの日本法人「アデコ株式会社」は、総合人財サービスを提供している会社です。アデコは、バングラディッシュにある株式会社BJITと業務提供することを2018年8月に発表しています。

    今後1年間で日本におけるバングラディッシュの人材20人の就業を目指します。BJITはソフトフェア開発を手掛けており、バングラディッシュのIT技術者をアデコが日本の顧客企業に紹介していくということです。

    IT人財はニーズが高まっているものの、まだまだ技術者不足の問題があるため、海外から優秀な人材を誘致してアンマッチの解消を目的としています。

    【参考】https://www.adecco.co.jp/about/pressroom/pressrelease/2018/0813/

    まとめ

    入管法改正案についていろいろと説明してきました。これが「人材不足解消のための有効な一手」となるかはまだわかりません。野党のみならず、与党内でも議論はまとまっておらず、具体的にどうなっていくのか注目してみていきましょう。

    もしも改正となった場合、企業としてはこれを好機ととらえ、うまく外国人労働者と融和していく姿勢が大切です。

     

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