ミッションステートメントは、企業の価値観や存在意義を社内で共有し、顧客や株主に自社の果たす役割を示すツールのひとつです。
ビジョンや経営指針などとの違いを理解し、ミッションステートメントに必要な9つの要素、作る際のポイントを企業の例とともに紹介します。

ミッションステートメントとは?
はじめに、ミッションステートメントとはどのような意味なのかについて分解して紹介します。
「ミッション」は使節や伝導という意味があります。ただ、最近ではミッションでも通用しますよね。
「ステートメント」は、政治・外交などに関する公式の声明や声明書という意味があります。
その組み合わせとなるミッションステートメントとは、
「企業とその企業で働く従業員が、共有すべき価値観や行動に関する指針や方針」
のことを示します。
企業は、各社員がそれぞれの力を発揮して初めて成り立ちます。
ただ、各社員がそれぞれ好き勝手に活動していると、コンセンサスが取れた会社とはいえません。ビジネスとして向かうべき方向や、優先とすべきものがずれていってしまい、ビジネスに対してよくないインパクトにつながる可能性があります。
それを防ぐ意味でも、会社の目指すべき方針を明確にして、それを周知させることで一定のベクトルを持って活動しようという考え方です。
ビジョンステートメントとの違い
ミッションステートメントと似ている言葉に、ビジョンステートメントがあります。
実は、この2つは似ているようで異なる考え方です。
ビジョンステートメントとは、企業が思い浮かべている将来的なあるべき姿を示したものです。また、将来的に企業としてどのような目標を持っているかを示しています。
ミッションステートメントは、今現在どの様な方向性を持って活動するかを示すものであり、位置づけとしては現在の視点にミッションステートメント、未来の視点にビジョンステートメントがあると考えても良いでしょう。
なぜミッションステートメントは必要?
では、ミッションステートメントを作るとどのような効果があるのでしょうか?ここでは、企業がミッションステートメントを設定する必要性について説明します。
では、ミッションステートメントを作るとどのような効果があるのでしょうか?ここでは、企業がミッションステートメントを設定する必要性について説明します。
企業の存在意義・目的を定めるため
企業経営を行ううえで、自社の存在意義や目的を設定することは無くてはならない取り組みです。事業を通して顧客に価値を生み出していくために、企業は従業員や顧客、社会に対して自社がどのような姿勢で活動するのかを明確にする必要があります。
一般的には、「企業ブランディング」とも呼ばれる、自社らしさを伝えるための社会的なイメージ作りにも繋がります。
社内の行動ベクトルを一致させるため
従業員に対して一定の行動ベクトル、いわゆる「行動指針」を示すことで、社員は日々どのように行動すべきかを認識しやすくなります。
反対に社内の行動ベクトルが定まっていなければ、あらゆる意思決定の際に意見が上手くまとまらなくなってしまいます。従業員個人の価値観ではなく企業としての価値観で考えることを定着させることが必要です。
企業の価値観を外部に伝えるため
ミッションステートメントは、顧客の潜在層や取引先など外部に向けてのアピールポイントとにもなります。たとえば、就職活動において求職者が重視する点には、理念やミッションステートメントが含まれます。自社に興味を持ってもらうきっかけとして、企業の姿勢を示すことは不可欠です。
また、ミッションステートメントは株主へのアピールにもつながります。株式会社の場合は、最大のステークホルダーは株主であり、株主にいかに利益を還元できるかが、重要なテーマでもあります。
その点で、株主にどのようなスタンスで事業を進めていくかをアピールするために、ミッションステートメントを活用します。株主総会においては、事業計画などへの承認や事業方針を示す必要がありますが、事業の方向性とも合致しているということが示せれば、株主も納得しやすいでしょう。
ミッションステートメントを作る3つのステップ
実際にミッションステートメントを設定するとなった際に、どのような手順で進めてゆけばよいかをここで押さえておきましょう。大きく分けて3つのステップで解説していきます。
①重要な要素9つを確認する
ミッションステートメントを設定するにあたって確認しておきたいのが、以下の9つの要素です。
①顧客
②市場(マーケット)
③技術(テクノロジー)
④企業理念
⑤製品、サービス
⑥企業の強み(競争優位性)
⑦企業の成長性や財務の健全性
⑧社会的責任・自然環境への配慮(パブリックイメージ)
⑨社員に対する姿勢
①~③は環境に関する要素、④~⑨は企業に関する要素となっています。
これらのうち、特にどの要素に重きを置いたミッションステートメントを作るべきか、従業員の意見を取り入れながら考えていかなければなりません。
②専任チーム中心にワークショップを開く
次に、社内にミッションステートメントを決定するための専任チームを発足し、従業員全員が参加できるようなワークショップ等を開きます。
この段階では、従業員ひとりひとりが納得できるミッションステートメント作成のために材料を集める作業をします。9つの要素から、さらに自社の価値観に必要となるポイントを抽出し、優先順位をつけていきましょう。
ワークショップが難しい場合には、社内アンケートなどを利用して従業員の意見を集めます。
③日常に落とし込めるように言語化する
ミッションステートメントを作るステップで最も重要なのが、この3つ目です。
自社の価値観として必要である要素を絞ったところから、さらに具体的な言葉に落とし込んでいきます。自社らしさを出すために、日本語だけでなく英語を用いて表現するのもよいでしょう。
ここで大切なのは、「従業員一人ひとりが決定した価値観に沿って日々の業務に向き合えるかどうか」という点です。従業員が企業の掲げる価値観に納得して行動できるよう、従業員の声を反映して作ることを意識しましょう。
ミッションステートメントの参考にしたい企業事例
ここでは、ミッションステートメントを作るにあたって参考にしたい企業を紹介します。企業規模によっても設定するミッションが変化するため、さまざまな企業を参考にしながら考えていきましょう。
ソフトバンクグループ株式会社
国内通信事業の枠を超えて事業を展開するソフトバンクグループ株式会社で掲げられているバリューは、「努力って楽しい。」です。
「困難や課題を乗り越えた先にお客様の笑顔がある」という表現には、ミッションステートメントに必要な要素のうちのひとつ「顧客」が表れており、日々の仕事に取り組む姿勢が示されています。
このバリューを実現するために、「No.1」「挑戦」「逆算」「スピード」「執念」の5つの行動指針がともに設定されています。
株式会社メルカリ
フリマアプリ「メルカリ」やメルペイを提供する株式会社メルカリでは、「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」というミッションステートメントを掲げています。
創業者 山田進太郎の創業時の想いを反映しながら、グローバルな発展を目指す企業の姿勢が表れているミッション。抽象的ですが、従業員の目指す方向性が明確に示されているといえます。
株式会社SmartHR
クラウド型人事労務ソフトを提供する株式会社SmartHRは、「社会の非合理を、ハックする。」というミッションステートメントを掲げています。
雇用契約や入社手続き、年末調整などの手間のかかる労務作業をペーパーレスで効率的な作業をサポートする同社にとって、このミッションは企業としての義務を果たす役割を外部に示すものとなっているといえるでしょう。
株式会社OKAN
置くだけ社食サービス「オフィスおかん」で知られる株式会社OKANでは、「働く人のライフスタイルを豊かにする」というミッションステートメントを掲げています。
同社では、従業員の食の福利厚生のほかにも、離職原因を特定する組織サーベイツールも提供しています。「食」に限らず働きにくさを改善する解決策を提示し、企業の人材定着をサポートする同社にとって、目指す社会での在り方が表現されています。
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ミッションステートメントは、企業の価値観や姿勢を外部に示すとともに社内のベクトルを揃える役割を担っています。
企業として、社会にどのように貢献していきたいのか、大事にしたい価値観を明確にし、自社らしいミッションを通して組織の団結力を高めていきましょう。
