働くヒトにとって、1日の大半を過ごすオフィス環境は重要。
仕事の生産性や効率性を向上させていく上で、働きやすいオフィス・労働環境であること=業務がスムーズに遂行されることにつながります。
以前は前衛的な企業のみがオフィス環境を整備していたため、特殊な例として取り上げられることが多かったのですが、昨今様々な企業が取り組んでいることからも、オフィス環境・労働環境の整備・改善の一部の企業の活動ではなくなってきました
。
また、従業員満足度にも大きく影響を及ぼします。オフィス環境の悪化に伴い『働きやすさ』が損なわれます。この『働きやすさ』が失われると不満足がどんどん溜まってしまうのです。
何から手をつければいいのか?何が効果的なのか?について、「働きやすく」「働くがい」の持てるオフィス環境とはどういったものかご紹介していきます。
なぜオフィス環境・労働環境改善が必要?
かつてのオフィスは、「経費」とみなされ、「空間」としての機能しか持たされていなかったのに対し、IT環境の進展、生活スタイルの変貌とともに、クリエイティブをはじめとする知的創造空間として働く人のモチベーションに大きく影響することがわかってきました。
また、事業構造の主体が従来のモノづくりメインの業態からコトづくりへとシフトチェンジしている中、斬新なアイデアや優れた知恵が求められます。そのためには、人と人との交流によって、アイデアベースの想いがブラッシュアップされ、推敲を繰り返して、1つの企画や言葉やコトが生まれていくのです。
こういった社会においてはオフィスづくりも人と人との活気ある交流による知識創造のスペース、そして一人ひとりが集中して取り組む個のワークスペースという視点が欠かせない状況にあることを意識しておく必要があるのです。 オフィス環境・労働環境が転職理由の一つとなり得る時代、企業として環境改善は急務の投資要件ともいえます。
働きやすいオフィスや労働環境のメリットとは?
生産性の向上
環境が人に与える影響の大きさは計り知れず、人は環境によって生かされていると言っても過言ではありません。
1日の大半を過ごすオフィス環境・労働環境は、働き方だけではなく、人格や考え方にも影響を及ぼします。適切な広さや集中できる環境があることは時間における生産性を向上させます。
また、効率的な導線の確保もストレスを生み出さず、時間の無駄を省きます。これらの要件はあってしかるべきですが、リフレッシュできるカフェテリアやフリースペースの確保も重要です。煮詰まった頭を切り替えたり、人とのコミュニケーションの中でアイデアが研ぎ澄まされたり、新鮮な観点から創出できたりと生産性の向上も期待できます。
経営側のメリットとして、オフィス環境を見直すことは、経営理念を体現したり、グループ全体のシナジー効果を生み出すなどの波及効果が期待できます。
コクヨファニチャーが20代の男女若手社員500人に対して実施した「オフィスのモチベーションアップに関する調査」(2010年)によると、約90%の方々が、オフィス環境・労働環境が業務効率・生産性に寄与すると回答しています。
従業員満足度の向上
働く環境が整っていることで従業員の満足度もアップして、優秀な働き手の流出防止にも役立ちます。
上記のコクヨが実施した調査でも、「あなたは、オフィス環境によって仕事に対するモチベーションが上がったことはありますか」という質問に対する回答は、「ある」31.8%、「ややある」37.2%で、仕事環境でモチベーションの上がった人が合わせて69.0%と約7割をしめています。
一方、「あなたは、オフィス環境によって仕事に対するモチベーションが下がったことはありますか」という質問に対する回答は、「ある」40.6%、「ややある」42.0%と、合わせて82.6%にも達しています。オフィス環境がモチベーションに大きく関与しているといえ、環境が整備されていないことによる満足度の低下にも繋がるのです。
オフィス環境は、働く人のモチベーション管理において重要な課題といえるのです。
オフィス環境・労働環境改善で留意すべきポイントとは?
業務環境の充実
仕事に集中できる個のスペースの確保は業務環境において必須条件です。
ミーティングルームやリフレッシュルームで交流を持てる場所を確保したら、今度は自分のデスクではパソコンや電話での業務、事務作業などに集中できるスペースが必要です。また、デスクの位置からコピー機や会議室までの導線など使用する機器や場所への導線を部署ごとに考慮してあるとさらに充実した業務環境といえるでしょう。
身体的な快適性
オフィス内における室内温度設定は重要です。
かつて営業部隊の多い会社では外出先から戻ってきた社員のために常に冷房が強めにかけられていて、内勤業務の社員が震えているという時代もありました。現在は適度な温度設定がされており、内勤業務者も自分の状態にあわせて冷房対策を工夫していることもありますが、従業員の多くが快適だと感じる温度設定にしておくこと、また空調とデスク配置の距離も重要です。
また、冬にはインフルエンザや風邪の流行も考慮して、適度な湿度が保たれたオフィス環境も従業員の健康管理を考える上では欠かせません。そして、業務に煮詰まったときや一息つきたいときに休憩できるスペースの確保も改めて検討してみましょう。
喫煙者は喫煙ルームで一服できるけれど、非喫煙者はトイレ休憩とお昼休み以外は休憩する場所がない・・・というのでは残念なオフィス事情です。
コミュニケーション動線の設計
フリースペースだけでなく、普段から簡単に聞いて解決する事項は、顔と顔をあわせてのコミュニケーションをとりたいものです。なぜなら、メールやチャットでのやり取りは多くの連絡事項を複数人数に伝えることに適していますが、細かい行間の想いを伝えるにはやはり口頭で伝えるほうが齟齬なく伝わるからです。
簡単な内容程口頭で。それを可能にするには、個のスペースを確保しつつもコミュニケーションの取りやすいデスクの配置や、サンキューカードの導入も考慮されるべきです。また、メールとチャットツールの併用と使い分けも効果的です。
簡単な質問や確認はカジュアルに伝えることのできるLINE等のチャットツールを導入しているという企業も昨今増え続けています。
オフィス環境改善の事例
それでは、具体的に企業はどのような労働環境改善を行っているか、事例を見ながら参考にしていきましょう。
事例1:日本電算機販売株式会社
分散したフロアを集約、フリーアドレスも導入したことでコミュニケーションの促進、スピーディーな課題解決を実現
人に優しく高性能な医療ITシステムとソリューションの提供によって、医療現場の業務効率やサービスを向上させ、人々の健康に貢献してきた日本電算機販売株式会社では、フロア分散による業務効率を重視したために、相手の顔がみえにくく、円滑なコミュニケーションがとれておらず、そのことが業務効率低下へとつながっていることが課題でした。
そこで、創業以来20数年ぶりにオフィスを移転し、顔がみえる自由闊達な社内文化を蘇らせるため、分散したフロアを全社員が見渡せるワンフロアに集約、ソフト、ハード開発、セールス、サービス部門の壁をなくしたフリーアドレス制を導入したことで、各部署の垣根をなくし、お互いの仕事ぶりを肌で感じながら業務を進行することができるようになったということです。そのことが、業務改善、従業員のモチベーションアップにもつながった事例です。
引用:ビルディンググループ
事例2:株式会社ニコン
コミュニケーションの緩急の区別を計算された設計構築で秘話性にも考慮された安心オフィス
大手企業では人員の増減・組織変更の頻度も高くなります。
そのため、こちらの企業では、家具配置の大幅な変更・間仕切工事をおこなわずとも、いつでも対応できるようににするため、ユニバーサルレイアウトを採用したことで、毎回の社内レイアウト変更の手間を縮小したようです。コミュニケーションエリアは、人々の出入りがしやすく、リフレッシュエリアとして明るく開放的な空間になっています。
他事例と一線を画するアイデアが、会議・役員エリアにガラスの間仕切を採用することで、採光に配慮しつつも、隣室の会話が気にならないようサウンドマスキングを採用していることで、秘話性にも考慮し、安心して会議に集中できる環境を整えています。
引用:清和ビジネス
事例3:一誠商事株式会社
サロンスタイルの接客空間で顧客満足度と従業員のモチベーションアップ
接客をメインとする不動産業態においてカウンターのイメージはお客様にとっても、従業員にとっても、重要な要素です。
以前は、隣の話し声が聞こえたり、お客様の目線から奥にあるオフィス空間が丸見えだったオフィス、まずは応接用の個室空間を設置し、初期の相談や除法収集目的の来店客向けに、曲線を描くカウンターボードとパーティションを活用した接客スペースを構築しました。
より集中できる環境で、対面接客出来るようになり、従業員の労働環境としても落ち着きました。契約や資産運用など深い商談用には、空間デザインや家具等に徹底してこだわった応接室を準備し、サービス精神や高いホスピタリティを表現できたことも、より高級感をもったイメージで他社との差別化を図ることができたのです。
従業員にとっては、つくばにある本社と都内にある支社のオフィス環境が異なって公平さを欠いていた点が改善され、モチベーションを保つ機会となったのではないでしょうか。
職場環境改善と合わせて考えたい「働きやすさ」を向上させるツール・サービス
従業員に「働きがい」を持って満足度をあげて仕事をしてもらうためには、土台となる「働きやすさの」向上が必要です。
「働きやすさの」がそこなわれることで、不満足が蓄積されていきます。本章では「オフィス環境・労働環境の改善」とあわせて、考えてみたい「働きやすさ」を向上させるツール・サービスを紹介します。
社内コミュニケーション活性化を進めるツール・サービス
オフィスおかん|全国対応!食の福利厚生サービス「置くだけ社食」
『オフィスおかん』は、新しい食の福利厚生サービスとして注目を集めています。
冷蔵庫や専用の自動販売機を設置し、健康的で安心・安全な美味しいお惣菜を24時間いつでも1品100円で食べることができる全国対応の置くだけ社食サービス。提供するお惣菜は、管理栄養士が監修し、全国各地の季節の食材を使いながら、働く人たちの健康に配慮して作られています。
食のサポートだけにとどまらず、「健康経営」「従業員の満足度向上」「社内コミュニケーション活性化」「オフィス環境改善」「女性活躍支援」「人材定着」「新卒・中途採用促進」など、企業が抱えている多くの課題を解決する新しいアプローチのツールとして業種・規模問わず多くの企業で活用されています。
また、新型コロナウイルスの流行下においては、感染リスクを避けるために、外出せずにいつでも食事を社内で提供する目的での導入も増えています。
オフィスおかんの概要を知りたい方は下記の記事をチェック!
オフィスおかんの評判・料金・提供エリアは?導入事例や効果を徹底解説
Unipos|従業員同士のフランクな感謝の記し
Uniposはピア・ボーナスの代表格で、従業員同士が少額の成果給を送りあえるサービスです。従業員は、リアルタイムで誰に対して成果給を送ることができます。アドテク企業「fringe81」が2017年6月に開始したサービスで、TABI LABOやRetty、mercariなどの企業でも導入しています。
Uniposの特徴は、評価はタイムラインで共有され、他の従業員がそれに対して「拍手」というアクションをとれるところです。評価が全社に共有されることで、評価された社員のモチベーションアップにつながるだけでなく、企業の評価指針を明確にすることもできます。
Uniposは、部署単位で導入することも可能です。「まずは部署でお試しに」という使い方ができるのは便利ですね。
職場環境の改善を進めるツール・サービス
らくーざ|座席抽選サービス
らくーざ
フリーアドレスを導入することで社員同士のコミュニケーションが活性化し、社内の人間関係を改善することができます。
らくーざはフリーアドレス制度をうまく機能させるためにサポートしてくれるサービスです。フリーアドレスで問題となる、誰だどこにいるかわからない、座席が固定してしまう、といった事態を解消してくれます。初期費用0円、1IDにつき50円と安価で、手軽に導入できるのが特徴です。
多様な働き方を推進するツール・サービス
Slack|気軽なコミュニケーションから業務連絡まで
Slack
チャットツールとして有名なSlackは、プロジェクトの管理からコードの実装、データの共有などあらゆるやりとりを1つのプラットフォームで完結することができます。
また、相手の予定が把握できない、話しかけづらいといった場合にもチャットツールであれば気軽に連絡がとれるので、上司と部下のやり取りも増えます。それだけでなく、ユーザー同士で好きな人を誘ってチャンネルを作ることができるので、雑談をはじめとする社員同士のコミュニケーションが活発になり、労働環境の改善を助けてくれます。
CharWork|リモートワークをサポート
ChatWork
離職率を低下させた企業の事例でも多様な働き方を認めて、働きやすさを実現するというものがありました。
最近は遠隔地で作業をするリモートワークを求める声も増えいます。ChatWorkはタスク管理、ファイル共有、ビデオ通話などを提供することでリモートワークの実施を包括的にサポートしてくれます。ChatWorkを導入することで、企業は最低限の負担のみでリモートワークを実施することが可能になり、従業員の働きやすい環境を整備できます。
まとめ
働きやすいオフィス環境・労働環境を作るための小さな一歩、はじめてみませんか?
ここまで、働きやすいオフィス環境が持つポイントについてみてきました。充実したオフィス環境を一気に作ることは難しいと思います。まずは小さなことから、働きやすいオフィス環境・労働環境づくりをはじめてみてはいかがでしょうか。
コクヨ株式会社のオフィス改善委員会というサイトでは、例えば、部署内の郵便受けやごみ箱といった小さなところからオフィス環境変えていくことのできる提案をしています。一度覗いてみると今日から着手できる小さな一歩のヒントがあるかもしれません。
