人材発掘やその確保の難しさの増す昨今、解決策としてリクルーター制度を導入する企業が増えています。ここで導入方法や成果につながるポイント、導入する際の注意点について説明します。
人材確保が急務の組織にとって課題達成のための一策です。検討や導入時の参考にしてください。

リクルーター制度とは?
リクルーター制度とは、社員が新卒者の採用活動に関わる制度です。
この役割を担う社員をリクルーターと呼びます。
優秀な新卒人材を確保するためには、先手先手の人事戦略が功を奏します。人事では動けない規制時期の活動、人事活動のマンパワー拡充の対策として導入されているリクルーター制度。人材の発掘、確保が重要課題の企業や新卒就活生のメリットが大きいとして注目されています。
リクルーター制度で押さえておくべき4つのポイント
1. 「集める」:志望度の高い候補者をより多く集める
まずリクルーターが最初に担う役割は、候補者を集めるというところになります。
自社で働きたいと思っている人、働いてもらいたいという人をなるべく多く集めるように、アクションをする必要があります。
注意すべき点としては、単にたくさんの人を無作為に集めるということにならないよう、きちんと「どんな人材に自社への興味を持ってもらいたいのか、どんな人材に入社してもらいたいのか」ということを定義し、それをリクルーターが共通認識として持っておく必要があります。
これができないままに人数だけを集めるとどうなるかというと、実際に自社とのマッチングがうまくできず、適切な人材が全く集まらないか、もしくはマッチング率が引き人材が入社してしまいその後の大量離職につながる、などの問題が発生します。
まず候補者を集めるというタイミングで適切な母集団形成ができていないと、その後のプロセスでも苦労が増えますし、結果として目標の人材採用(質、量)ができないということにつながってしまいますので、注意が必要です。
2. 「理解してもらう」:適切な情報を伝える
次に、リクルーターの役割として、形成した母集団に対して適切なコミュニケーションを行い、適切な情報を伝えるということが重要になります。
リクルーターの主な活動としては、各大学での個別説明会開催や、候補者への個別のオンライン、オフラインでのコミュニケーションなどがあります。
このコミュニケーションを通じて、自社の魅力を伝えるとともに、自社を志望している候補者の理解を深めること、及び自社の志望度が低い人材に興味を持ってもらうこと、などをしていきます。
まさに会社の顔としての立ち居振る舞いが求められます。
3. 「選抜する」:適切な人材を見抜く
リクルーターは実際に面接を担当することもあります。
採用面談という名目の場合もありますし、会社にとっては採用とは直接紐づかないという名目での相談会という位置付けで話をすることもあります。
一般的にですが、「採用面談」という名目での開催であれば、志望度の高い候補者を中心に集めることができますし、「採用とは関係のない相談会」という名目であれば志望度のそれほど高くない候補者を中心に集めることが可能で、「採用面談」と比べて参加のハードルが低くなりますので、人数自体は集めることができる傾向にあると思われます。
企業によっては、この両方を意識的に使いわけるという採用フローをとっている場合もありますので、ぜひ一度自社の採用フローについて検討してみてはいかがでしょうか。
4. 「囲い込む」:適切な人材を入社に近づける
面談が進んだ候補者に対して、人事や採用担当とは別の立場で、不明点の解消や自社の魅力の補強をするというのもリクルーターの大事な役割です。
採用面接では、緊張や時間の都合上、候補者が十分な情報を得られないケースもあります。
「聞きたいことは聞けましたか?」「わからないことはないですか?」「不安な点はないですか?」と候補者が安心して次の選考や入社の意思決定に進めるようにサポートしてあげるようにしましょう。
企業としては、きちんと候補者に対してリクルーターがコンタクトをしているかということを管理し、コミュニケーション漏れを防ぐようにするようにリクルーターへの進捗確認を定期的にするようにしましょう。
リクルーター制度の導入準備とポイント
リクルーター制度を導入する準備とそのポイントについて説明します。人事部としては準備が最も大事です。期待通りの成果を上げるためにも、このポイントは押さえておきましょう。
リクルーターにはどのような社員を選抜するか
リクルーターとして活動する社員の選考を行います。
新卒就活生が対象の場合、学生と年齢が近く、大学のOBという確率も高い1~5年目の若手社員の登用が一般的です。年齢が近ければ、より接触する機会を作りやすく、学生もリラックスして交流できるという狙いです。
また、面談回数が増えた段階で業務の詳細を深く理解し、学生に企業の情報を十分に伝えられる中堅社員が対応する企業も増えています。
基本的には選抜の方法は自薦もしくは他薦が望ましいです。自ら学生にコンタクトをして会社の魅力を伝えたいと感じている社員や、そういった役割に適任であるという社員を部署の中から推薦してもらうというのが良いでしょう。
選抜をランダムにやってしまうと、各リクルーターの質に差が出てしまうのでオススメしません。
リクルーターの教育・指導をどう行うか
リクルーターの役割は、学生と打ち解け、企業に興味を持ってもらい、自社のことを詳しく把握してもらうことにあります。
良好な関係を築いていくための指導が必要です。リクルーター業務の目的として、何でも話し質問しやすい機会の提供、最初の接点での対応の仕方、企業のことをよく理解してから入社を決めてもらうことの重要性などをリクルーターに理解してもらうことが大切です。
また、近年の学生がどういった傾向があるのか、どんなことに興味があるのか、どんな不安を就職活動に対して抱いているのか、という点をリクルーターは理解しておく必要があります。このあたりを個人に任せてしまうと、リクルーターの質を一定に保つことができずに、期待通りのリクルーティングができない恐れがありますので、人事で一括して大事なポイントについてはまとめ、周知することが必要です。
企業によってはリクルーター用のトレーニングの時間をとって、採用したい人材のイメージや、学生にお伝えする会社の魅力としてどんなポイントを伝えるか、などの共通認識を持っておくようにしているところもあります。
リクルーター制度がもたらすメリット
リクルーター制度にはさまざまなメリットがあります。企業(人事)と求職者それぞれの視点でのメリットを紹介します。
企業の人事戦略的なメリット
実際の採用活動以外の時期でも、優秀と思われる学生のコミュニケーションが応募母体の拡大につながります。
リクルーターとの良好な交流の中で自社を良く知ってもらうことは、学生の応募・入社の意欲を強固にします。自社についての事前理解が深いほど、早期退職も防げるでしょう。
また、信頼関係を築いたリクルーターからの内定後のアフターフォローにより、内定辞退の可能性も減らすことができます。また、リクルーター自身の企業に対するエンゲージメントの向上や自己成長にもつながっていくという副産物も得られるようです。
求職者のメリット
初めての就職で不安や疑問の多い就活生にとって、早い段階からリクルーターとの接点を持てることは心強いものです。企業や業務についての情報収集にも大いに役立ちます。
納得して応募でき、入社した場合もミスマッチの可能性は最小限になるでしょう。
まとめ
優秀な人材の確保、採用後のミスマッチの回避、長期的な人材育成を叶えるための人事の大きな課題です。採用担当者が採用活動のわずかな期間とステップの中で、新卒者を理解し、自社の魅力を伝えていく質量には限界があります。人事戦略としてリクルーター制度を導入してみてはいかがでしょうか。
