株式会社ニット小澤さんによる、自社のフルリモートで組織運営の知見をまとめた連載【活躍し続けられる組織をつくる】。第11回目の連載は「選ばれる企業になるために 女性が働きやすい環境とは」です。
働き方改革により、日本企業が抱えている課題解決が進んでいるなかで、女性の働き方に関する支援は、多くの企業が重要視しています。今回は、小澤さんが自身の働き方や女性へのマネジメントの中で気づいた女性にとって働きやすい環境作りのポイントをお届けします。
活躍し続けられる組織をつくるシリーズ
Vo.1:企業存続のカギを握るテレワークの未来
Vo.2:オンラインマネジメントで強い組織をつくる方法
Vo.3:オフィスの存在意義
Vo.4:最強のチームを創る!ワークシェアリングの体制構築のポイント
Vo.5:チャットやメールで意識すべきテキストコミュニケーション
Vo.6:「テレワークうつ」のその先にある『サイレントうつ』を未然に防ぐ方法
Vo.7:4月からの新人育成は大丈夫?成長フェーズに応じた目標設定がカギ!
Vo.8:デジタルデトックスとワーケーションで組織に向き合う働き方提案
Vo.9:ワークライフブレンドを実現するオンライン仕事術
Vo.10:オンラインコミュニケーションは必須の時代!会議や雑談をスムーズに行うポイント

女性が輝く未来を目指す社会 しかし厳しい現実も
人口が年々減少するにつれ、人材確保が近年企業のテーマとなっています。このためには、企業をはじめ社会全体で、「女性が働きやすい環境」をつくり上げていくことがまずは大事なのではないかと私は考えています。
政府でも、内閣府男女共同参画局に「すべての女性が輝く社会づくり本部」が設置されました。これは様々な状況に置かれた女性が、自らの希望を実現して輝くことにより、「女性の力」が十分に発揮され、社会の活性化につなげるためのものです。
ただ、国も女性の活躍を推進していることが分かる一方で、私の周りには結婚や出産を機に退職し、その後の復職に苦労する方が多くいます。
出典:女性の活躍促進|男女共同参画局
内閣府男女共同参画局が発表した「仕事と生活の調和レポート2018」によると、育児休業制度を利用して就業を継続している者の割合が大きく上昇していることが分かります。一方で、第1子出産を機に離職する女性の割合が46.9%と、以前より高い状況となっていました。
出典:「共同参画」2019年5月号|男女共同参画局
第1子出産前後の就業異動の状況について見ると、「地位変化で就業」が正社員6.9%、パート・派遣が2.8%と就業形態の異動は少ないことが判明しました。正社員の場合は、育児休業制度を利用して、引き続き正社員として就業を継続する者が多数。一方でパート・派遣の形態の職員として働いていた者は、育児休業制度を取得しにくく、出産後、労働市場から離れてしまう者がほとんどだということが分かります。
私としては正社員・パート・派遣など形態に関係なく、どんなライフステージでも働き続けることができる環境づくりが必要だと思います。この環境づくりにより、労働力の回復にもつながるのではないでしょうか。
企業としても同じ方に継続して働き続けてもらうことで、組織として安定するだけでなく、次世代のロールモデルになる方が増えるため、採用ブランディングにも良い影響を及ぼします。
今回は女性が継続して働くことができる環境づくりのコツをお伝えしたいと思います。
継続して働くことができる環境づくりのコツ
2020年5月に発表された三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング株式会社の「女性管理職の育成・登用に関する調査」 では、管理職でない女性の 5 割弱が「役職にはつかなくてよい」と回答しています。管理職でない女性で管理職(課長相当以上)を目指したいと回答した割合は 15.1%にとどまり、管理職でない男性で目指している割合は31.1%という結果となりました。
このデータだけでも、女性と男性の考え方に大きな差があることが分かります。女性と男性で差別的に対応を変えるわけではありませんが、「職場によっては、女性であるがゆえにチャレンジできない環境、育児との両立が難しい環境がある」ことを理解しておくことで、コミュニケーションがスムーズになる場合があります。
出典:女性管理職の育成・登用に関する調査|三菱UFJリサーチ&コンサルティング
では、女性と共に仕事をする上で、日頃のマネジメントではどんなことを意識すれば良いでしょうか。
(1)期待を言葉にしてあげること
昇進意欲に限ったことではないですが、女性は周囲から期待されたり、認められたりすることが男性以上に大切だと思います。本来ある高い能力を自分で押し殺してしまっている場合があるのではないでしょうか。
女性の場合は「家庭的で控えめな方が良い」という刷り込みがどうしても昔からあります。近年はそういった考え方が払拭されてきましたが、女性自身や周囲でそういった考え方を持っている人もいます。
私がメンバーを率いる上で意識しているのは、「期待を言葉にすること」です。自分で自分の気持ちを奮い立たせることも大事ですが、誰かから期待されることで、より力を発揮しやすくなります。私はそういうパワーアップした女性を何人も見てきました。
そのため、能力が高く活躍しうる女性には、頻繁にその期待を言葉にしてあげましょう。「仕事をこれだけ任せているのだから、期待していると分かっているはず」と思っている方、相手には伝わっていないと考えたほうが良いと思います。言葉にしなければ、相手には届きません。
(2)コミュニケーションの頻度・内容
1か月に1時間のコミュニケーションより、毎日5分のコミュニケーションを重視しましょう。会話の頻度が増えることで、信頼関係の構築につながります。
「新しい仕事はうまく進んでいるかな」「この資料すごく分かりやすいね!」「商談を成功させてくれてありがとう!」など些細な会話から、成果に対しての褒めや感謝の気持ちを伝えることでモチベーションアップにつながります。特にテレワークでは意識して言語化することが大切です。
「分かってくれると思った」ではなく、良いと思った点はしっかりと伝えましょう。
(3)女性ならではの体調不良に配慮が必要
月に1度の生理では、出社するのが辛いほど体調不良になる方もいます。薬を飲んでも、体調がすぐれなかったり、気分が憂鬱になったりするのです。
また、妊娠中の方は、つわりが軽い場合でも、大きなお腹を抱えたまま働くこと自体が大変です。元気に見えたとしても、働きすぎないようにケアをし、急遽休んだ場合にもフォローができる体制を作っておきましょう。
このように女性には自分でコントロールできない身体の不調があります。テレワークの場合、家で休みながら仕事ができるイメージを持たれがちですが、体調不良の際には業務量を調整するなど配慮が必要です。
(4)様々な環境の方を尊重する
一人ひとりの家族の状況は様々です。子どもの人数によって忙しさが違ったりする場合もありますし、中には持病があったり、頻繁に体調を崩す子どももいます。子育てだけでなく、家族を介護している人もいるでしょう。
同じライフステージでも一人ひとり環境が異なると考え、臨機応変に対応できるようワークシェアシェアリングを行うなど日頃の業務設計を工夫する必要があります。
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全員が働きやすい環境へ
上記でお伝えしてきた通り、一人ひとりのキャリアやライフステージの変化に合わせて、対応ができるように備えておくことは企業として必要だと私は考えています。
退職後も希望に応じて復職することができるリターン制度を設けたり、1時間から有給がとれるような制度にしたり、社員の特性に応じて企業が働きやすい環境作りを推進していくと良いでしょう。リモートワークの導入や副業の容認もその取り組みの一つだと思います。
世の中は日々猛スピードで変化しています。過去の常識にとらわれているだけでは、社員が企業から離れ、組織の弱体化に繋がります。選ばれる企業になるためには、従業員に対して配慮が必要です。
女性に限ったことではないですが、最終的には男女共に働きやすい環境になれば良いなと思っています。
