現代では懐事情が厳しい会社も増えてきました。なかには、リストラを断行して大量の失業者を生み出している会社もあります。ただ、その一方でワークシェアリングを使って従業員を守ろうとしている企業が存在します。できるものなら、1人でも多くの雇用を守りたいですよね?
そんな方におすすめしたいのが「ワークシェアリング」です。ただ、ワークシェアリングの言葉は聞いたことがあっても、概要を知らない方もいるでしょう。
そこで今回は「ワークシェアリング」の概要・メリットなどを中心に紹介します。ワークシェアリングの事例や、関連サービスも載せてありますので参考にしてみてください。

ワークシェアリングの概要を見てみよう
最初に、ワークシェアリングの概要を見てみましょう。
ワークシェアリングとは一体なに?
ワークシェアリングは、仕事を多くの従業員へ分け与えることを指します。1人当たりの仕事負担を減らすことを目的に実施されるケースが多いです。国内では、ワーキングシェアとも呼ばれています。
なぜ日本でもワークシェアリングが注目され出したの?
日本では、十数年前から認知されるようになったワークシェアリング。しかし、海外ではそれよりもずっと前から導入されてきました。この手法が導入されるようになった背景には、失業率の上昇や長時間労働等の労働条件の悪化があります。日本においては、「長時間労働の改善」や「ワークライフバランス」といった「働き方改革」の一環として広まってきました。とくに昨今は労働者不足の観点から、高齢者や女性の積極的登用やリモートワーク等の働き方の多様化により、効率的かつ生産性の高い業務運営手法の1つとして考えられています。とはいえまだ、日本では定着しているとはいいがたい現状です。しかし、2019年4月から(中小企業は2020年4月から)の働き方改革の一環としての法整備(時間外労働の上限化、同一労働同一賃金制度)等により、さらに広がってくるものと考えられます。
ワークシェアリングには4つの型がある
一口にワークシェアリングといっても、さまざまな種類があります。ここでは、厚生労働省の資料を基に4種類のタイプを紹介します。
雇用維持型
中高年者や退職者の雇用を維持することを目的に、1人当たりの労働時間を削ろうというものです。退職者の再雇用制度などが当てはまります。人材不足に陥っている会社は、雇用維持型のワークシェアリングが効果的です。
雇用創出型
求職中の方に対して、新たな雇用を提供するときに行われます。新たなインフラ整備、建物建設などもこれに当てはまるかもしれません。民間企業ではなく、国や政府が中心になって行われることも多いです。道路工事などが雇用創出型のワークシェアリングに当てはまるといえます。
緊急対応型
不景気などでリストラなどの可能性が高まったときに実施されるパターンです。従業員1人あたりの労働時間を一時的に減らして、会社での雇用を維持するときに発動されます。社内の稼働率を抑えるときに活用されやすいです。
多様就業型
社内の勤務形態の種類を増やして、1人でも多くの人に勤労機会を与えるパターンを指します。たとえば、フルタイム出勤のほかに「時短勤務」「午前中勤務」「パートタイマー」「テレワーク」など、複数種類のシフトを会社で提示するといった形です。
そうすることで、介護や子育てで労働時間がとれない人も働きやすくなります。
ワークシェアリングのメリット
はじめにメリットを3つ見てみましょう。
従業員数を増やせる
ワークシェアリングでは、1人あたりの業務量・勤務時間が減るため新たな雇用の創出ができます。たとえばフルタイム社員が100名だったのを、フルタイム社員80名、短時間勤務社員30名にするといった形です。1人あたりの賃金は減りますが、時短社員を増やすことで雇用拡大の効果が期待されます。
1人あたりの仕事の負担が減る
1人あたりの仕事量が減るのもメリットの一つです。仕事量が減れば「過労死の防止」「勤務時間の削減」などにつながり、快適に働ける確率も上がります。
また、会社によっては同じ額の給料なのに、従業員同士の仕事量が見合っていないケースもあります。従業員間の不満を解消したい場合も、ワークシェアリングが役立つかもしれません。
1人あたりの消費量が上がる
ワークシェアリングで従業員の勤務時間が減ると、従業員1人当たりの余暇時間は増えます。つまり、プライベートを充実させるために、お金を消費する人が増える可能性があるということです。外食や旅行店新たな趣味への消費など、いろいろな面で可能性があります。
お金を使う人が増えれば、各企業の売り上げが上がって税収増につながります。よって、日本の景気が良くなる可能性があるといえるのです。
ワークシェアリングのデメリット
前章でお伝えした通り、メリットも多いワークシェアリング。しかしメリットもあれば、デメリットもあります。ワークシェアリングを導入する場合は、これらの問題点を解決していく必要があるでしょう。
給料額の減少
ワークシェアリングでは従業員1人あたりの勤務時間・勤務量が減るため、給料額が減少する可能性が高いです。たとえば「フルタイム社員の勤務時間が1時間減って月給が3万円下がった」「いままでは時給1,200円だったのに、作業量が減って時給1,100円になった」という形です。現場では、正社員とパートタイマーの賃金格差の問題が是正されていません。ワークシェアリングを導入することで、低賃金労働者の増加という問題点もでてきます。
また、従業員のなかには、給料が下がって住宅ローンの支払いが苦しくなったり、子供への教育費用をかけられなくなったりしたケースもあるようです。前章にあったように、1人あたりの仕事の負担が減るというメリットもあるため、従業員自身、どのような働き方を求めるのかを中長期的に考えること。そして、働き方を選択していく考え方を醸成していくことも必要なのではないでしょうか。
経験できる仕事量が減る
ワークシェアリングが進むことで、「仕事量が減る=仕事での経験値が減る」ということも問題点の1つにあげられます。経理職の場合であれば「仕訳・決算処理に携わっていたのに仕訳業務のみ」になった。エンジニア職であれば「顧客への営業とコンピュータシステムの修理を行っていたのに営業業務のみ」になったというイメージです。
社内での分業制が進むと経験できる仕事量が減ります。イコール社内で身につけられるスキルも減るということです。社内での経験業務が減ると、身に着けられる仕事スキルの幅が減るだけではなく転職活動時に不利になる恐れもあります。
最近は副業を解禁する企業も増えてきました。「副業で得た経験を本業に生かしてほしい」という意図をもって導入している企業もあるようです。「本業以外に職をもつ」ということは、「必要なスキル、経験を自分の意思で選ぶことができる」ということにもつながります。より主体性をもってスキルアップするチャンスにもなるのではないでしょうか。
責任の所在があいまいになる
1つの業務を複数の人が担当することで、「責任の所在があいまいになる」という問題点もでてきます。「最終責任者が明確でない」「問題の顕在化が遅れる」等でミスが深刻化しやすくなるかもしれません。
そのため、業務を依頼する際に「業務内容」「期限」「業務遂行者」「最終責任者」を明確にしておきましょう。そして、全体を統括する人が、それぞれの業務を把握できる仕組みを作っていきましょう。
「業務のワークシェアリング適性を見極める」「報告・連絡・相談フローを見直す」等作業も増えるかもしれません。しかし、このような業務を見直すことは、ワークシェアリング以外の通常業務にも効率化をもたらすこともあります。ワークシェアリング制度導入に伴う仕事量増加にフォーカスするのではなく、社内全体の業務効率化の一環として取り組むこともポイントになります。
生産性の低下
ワークシェアリングを行うと従業員数が増えるため、従業員の異動や退職によって発生する業務の引継ぎ時間も増えます。よって、引継ぎに多く時間をとられてしまい、業務に支障をきたす恐れがあるといえるでしょう。
さらに従業員への業務指導時間が増えて、管理職や教育担当者の社員が本来の業務に取り組めなくなる恐れもあります。業務指導時間が著しく増えてしまう業務内容はワークシェアリングに向かないかもしれません。業務指導時間とその後の生産性向上を比較検討してみることも大切です。しかしながら、従業員の異動や退職は、ワークシェアリングを導入するしないに関わらず起こりうることです。企業の生産性向上と維持を考えていくうえで、業務の指導法、引継ぎ方法を再考することは必要かもしれません。
ワークシェアリングの導入事例を見てみよう
ここでは、ワークシェアリングの導入事例について見てみましょう。導入した理由についても載せてありますので参考にしてみてください。
出典:https://toyota.jp/index.html
トヨタでは、2009年にアメリカの工場従業員を対象にワークシェアリングを行いました。理由はアメリカの自動車売上低迷によるもので労働時間と給料が削減されました。
また、日本のトヨタ工場でも2009年2~3月に停止日が2日間設けられ、停止日の賃金がカットされたことがあります。ワークシェアリングの実施で、多くの従業員の雇用が守られました。
出典:http://www.mazda.co.jp/
マツダでも2009年1月に正社員の基本給が減りました。これは、工場停止日が増えて労働時間が減ったことに対する処置でした。それもあってか、今では会社の経営を持ち直せています。
出典:https://si-himeji.co.jp/
データ入力やアウトソーシング事業を請け負っているエス・アイでは、20年以上前からワークシェアリングを行っています。一番の特徴は、パートに対して自由出勤制を導入したことです。自由出勤制とは対象時間内であれば自由に出退勤できるシステムのことです。
エス・アイでは午前9時~午後17時半までを自由出勤制の対象時間としました。多様就労型の対策を行ったことで、多くの人が働けるようになったのです。
出典:https://www.benesse.co.jp/
ベネッセでは短時間正社員の導入を行っており、子育て中の母親でも働きやすい職場環境を提供しています。1992年に導入されており、日本企業の中でもワークシェアリングにいち早く注目していた企業といっても良いでしょう。
厚生労働省が運営する「短時間正社員制度導入ナビ(https://part-tanjikan.mhlw.go.jp/navi/88/)」でも紹介されています。女性が働きやすい社会を普及するために、大事な活動だといえます。
半導体を提供している富士通マイクロエレクトロニクス(現富士通セミコンダクター)でも、2009年の一定期間を対象に労働時間の短縮・賃下げが行われたことがあります。当時は特例処置で、副業を認可したことでも話題となりました。
現在も富士通の関連会社として、国内・海外に半導体を提供できています。
ワークシェアリングの導入手順
ここでワークシェアリングを導入する場合の手順について見ていきましょう。
1. 現在の業務内容と必要な人材の把握
どんな業務があるのか、どんなスキルが必要なのか、適正人数は何人か、どのくらいのコストが掛かっているのかを把握しましょう。
2. 不要な業務の見直し
1の作業ののち、不要な業務やフロー改善の必要のある業務をあげます。
3. ワークシェアリング可能な業務のリスト化
ワークシェアリングにも向き不向きがあります。ワークシェアリングが可能かどうかを確認していきましょう。
4. ワークシェアリングに向けてのマニュアル作成
ワークシェアリング導入の課題として、「報告・連絡・相談フローの見直し」が必要になるかもしれません。結果として、「個人の業務の見える化」にもつながり、マネジメントもしやすくなります。
5. 業務の評価と見直し
ワークシェアリングの導入とともに評価方法も変わるかもしれません。業務の目標達成度を把握し、業務方法も適宜改善していきましょう。
ワークシェアリングを活用したい会社におすすめのサービスとは?
最後に、ワークシェアリングを活用したい企業におすすめのサービスを5つ紹介します。多様就業型のサービスがメインですが、それぞれ特徴は異なります。ぜひ参考にしてみてください。
出典:https://taimee.co.jp/
タイミーは仕事のマッチングアプリサービスを運用しています。一番の特徴は、単発業務を依頼できることです。たとえば、11月13日の14時~17時まで人手が不足している場合は、その日時のみで働ける人を検索できるということです。
しかも、仕事の受注側は面接不要で報酬もその日にGETできるため、今後人気が集まりそうなサービスだといえます。ユーザーの中には、働く日数は限られるけどスキマ時間を無駄にしたくないと思っている人もいます。社員を雇うまでではない、ちょっとした仕事が多い会社におすすめできるサービスです。
出典:https://www.lancers.jp/
クラウドソーシングサービスの中でも有名なのがランサーズ。ランサーズのサイト上では、仕事を発注できるようになっています。デザイナー・マーケティング・ライター・事務など、さまざまな仕事の発注が可能です。
また、受注者には過去の実績・評価も付いており、人材を選ぶときの参考にできます。発注手数料も無料ですので人件費削減にピッタリです。
ただ、あまりに安い金額で仕事を発注すると応募者が集まらない場合があります。応募者を集めるには適正単価を付けることが大事です。さらに、受注者が発注者に対して評価を付ける制度もあるため、仕事のやり取りを丁寧に行うのも忘れてはいけません。受注者を雑に扱うと、悪い評価が付きやすくなるので気をつけてくださいね。
出典:https://waris.co.jp/
仕事を探している女性(主にフリーランス)と企業のマッチングサービスを提供しているため、女性の働き手を探している会社にピッタリです。企業に紹介する人材は、ワリス側で募集・精査するため会社の業務コスト削減にもつながります。
人材を探すのが厳しい、なかなか良い人材に巡り合えない会社は一度相談されてみると良いかもしれませんね。
出典:https://www.persol-group.co.jp/brand/index.html?from_gn
パーソルでは、人材紹介業の他に一部業務のアウトソーシングも行っています。マーケティングや採用、IT業務などを委託できます。会社で雇用するわけではないため、社会保険料の支払義務もありません。新規社員の採用ができず、人材不足を起こしている会社におすすめしたいサービスです。
出典:https://assign-navi.jp/
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ワークシェアリングのまとめ
日本で今後も少子高齢化が進めば国内での経済活動は小さくなり、業績悪化の企業増につながる可能性が高いです。
今後はワークシェアリングが必要になる企業も増えると思われます。会社・従業員を守るためにも、ワークシェアリングを活用していただけると幸いです。
