感情労働とは?ストレスを抱えやすい職種に企業がとるべき対処法

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    働き方改革をきっかけに、多くの人が労働問題に興味を持つようになりました。そのうちの1つに、「感情労働」が引き起こす問題があります。感情労働は比較的新しくできた概念のため、はじめて聞く方もいらっしゃるのではないでしょうか。この問題について、企業の人事・総務担当者はどのように対処すればよいのでしょうか。

    この記事では、そもそも感情労働とは何か、感情労働におけるストレス、企業の対処法を詳しく解説します。

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    感情労働とは?基本を抑えよう

    「感情労働」とは、仕事において、自分の感情をコントロールし相手の期待に応え報酬を得る労働です。具体的には顧客とのコミュニケーションの場面で自分の感情を抑制し、ときには理不尽なクレームでさえも我慢強く対応します。

    感情労働は、1970年代にアメリカで「感情社会学」という分野が登場したことにより、社会学者であるArlie Russell Hochschild(以下ホックシールド)氏によって提唱された概念です。

    感情労働がある企業では、どのような感情が適切、不適切かルール化されています。たとえば客室乗務員をはじめとする接客業は、顧客からの要求には笑顔で礼儀正しく接しなければならないといったルールがあることは想像できるでしょう。

    業務中に顧客が怒り理不尽なクレームが起こることはしばしばあります。しかし、感情労働者は自分の中でマイナスの感情を抑制し、笑いたくなくても笑顔で接するなど冷静に対処しなければなりません。

    このように、自分の感情をコントロールし対価である報酬を得るのが感情労働です。

    肉体労働との違い

    肉体労働とは、一般的に身体を使って働く仕事のことを指します。与えられた業務や作業をこなす仕事が該当するため、工場などで働く従業員が肉体労働に従事していることが多いです。

    頭脳労働との違い

    頭脳労働とは、頭を使って出した答えを報酬に変える労働です。頭脳労働の代表的な職種といえば、弁護士や税理士など専門知識や経験をもとに顧客を答えに導く仕事でしょう。自分のアイディアや企画をアウトプットする小説家やデザイナーなども頭脳労働者といえます。

    感情労働が必要な業界・職種

    かつては「客室乗務員」「看護師」が感情労働者の代表例とされていました。しかし、最近は過剰な要求をする利用者に悩むコールセンター従事者、カウンセラーが増えてきており、対人サービスが発生する職種全般に感情労働の要素が含まれるようになりました。

    また、あらゆる企業で「顧客満足度」が競われており、大なり小なり感情労働が必要な業界や職種が増えています。

    感情労働が多い業界

    感情労働が発生する代表的な業界は、接客が伴うサービスを提供する業界です。具体的には、エアライン業界・ホテル業界・飲食業界・小売業界が該当します。その他にも、患者を相手にする医療業界、保育や教育業界なども感情労働が多い業界です。

    感情労働がある職種

    感情労働が発生する職種は多岐に渡り、主にコミュニケーション能力が求められる職種が多いです。客室乗務員、看護師、介護士、教師、保育士、受付、コールセンター、販売員などがあげられます。

    また、直接人とは対面しないものの感情労働を行なう職種も存在します。たとえばカスタマーサポート、コールセンタースタッフ、企業の広報・IR担当者などです。そして「人」にかかわるという視点からみると、企業の人事・総務担当者も感情労働に従事しているといえるでしょう。

    感情労働は2種類に分けられる

    感情労働を提唱しているホックシールド氏は、感情労働には「表層演技」と「深層演技」があると説いています。

    • 表層演技
    • 深層演技

    ここからは、「表層演技」と「深層演技」2つについて解説します。

    表層演技

    表層演技とは、表面的な演技のことで、自分の感情にかかわらず笑顔で立ち振る舞い、声や言葉で顧客から求められる感情を表現することです。企業の接客・サービス研修などでも、表層演技のテクニックを指導されることがあります。

    自分本来の思ったままの感情で接客・サービスを行うため表層演技での仕事は、ストレスが比較的少ないです。

    深層演技

    深層演技とは、自分の本当の気持ちでさえ表面的な演技と同じ感情をもつことです。非常識な顧客に対しても心から笑顔で接し、適切な対応を行ないます。そのように心から誠実に対応しようという意識を持って人と接するよう努力するのが深層演技です。

    深層演技は本当の気持ちを押し殺して行うので、表層演技よりもストレスが溜まりやすく、メンタルに不調が表れる可能性が高くなります。

    感情労働がストレスになる理由

    感情労働によるストレスは、自分の本当の感情と仕事上求められる表層演技・深層演技とのギャップから起こります。仕事の間は常に、「こうあるべき」という理想の状態で対応し、相手に好印象を与えるように行動するからです。

    理不尽なクレームや強い批判に対応しなければならないケースも同様で、自分の感情を強く抑制する分、従業員の精神に大きなストレスがかかってしまいます。

    感情労働がもたらす2つの問題

    「顧客満足度」を追求するために感情労働が増加すると、顧客にとっては高品質なサービスが受けられるメリットがある一方、従業員側の精神状態が不安定になるリスクもあります。

    感情労働に従事する従業員が過度にストレスを蓄積した場合、一体どのような問題が起こるのでしょうか。ここからは2つの問題について詳しく解説します。

    1.ストレスによるうつ病などのメンタルヘルスの不調

    どのような状況でも自分の感情を抑え、表情や態度を企業や相手が求める状態で対応しなければならない感情労働が続くと、従業員の精神に過度のストレスを与える可能性があります。

    日々ストレスに晒される従業員は、うつ病をはじめとしたメンタルヘルスの不調を発症しやすくなる恐れがあるため、コミュニケーションをこまめに行いメンタルの不調を気にかけましょう。

    2.バーンアウト(燃え尽き症候群)

    感情労働に携わる従業員が真面目に仕事に取り組むあまり、バーンアウト(燃え尽き症候群)と呼ばれる状態に陥るケースがあります。バーンアウトとは、今まで意欲的に取り組んでいた仕事に対する情熱や、やる気がなくなり無気力な状態になることです。

    感情労働では相手をポジティブな感情に導くため、自分の気持ちをコントロールしなければならず、相手からネガティブな言葉を投げかけられたとしても感情を押し殺す必要があります。このような状態が続くと、従業員は精神的に大きなダメージを受けてしまい「バーンアウト」になってしまうのです。

    責任感が強く熱心に仕事をしている従業員ほど、感情を抑制した反動が大きくなりバーンアウトになりやすく、「仕事にやりがいを感じられない」「働きたくない」などの感情に襲われ、もう一度頑張ろうという感情が湧きづらくなります。

    感情労働に従事する従業員への対処法3つ

    ここからは企業の担当者として、感情労働に従事する従業員をどのようにサポートすれば良いのか解説しましょう。担当者は感情労働者がどのような業務を行なっていて、どこにストレスを感じやすいのかを把握しておく必要があります。その上で、従業員のストレスが限界に達する前に行うべき対策を紹介します。

    1.従業員へのストレス研修・ストレスチェック

    感情労働のストレスは、ストレスを受けている本人も気が付きにくいのが問題です。仕事熱心な従業員がストレスの存在に気がつかず、いつの間にか精神が疲弊しメンタルヘルス不調やバーンアウト状態になってしまうと、企業側にとって大きな損失です。

    従業員研修で「表層演技・深層演技」を学ばせるのも大切ですが、それらと同じく感情労働のストレスを認識させる対処法の教育も大切です。従業員自らストレスに気がつければ、まわりへの相談・こまめなストレス発散などセルフケアができます。また定期的なストレスチェックも、感情労働者のストレスを早期に発見できるのでおすすめです。

    2.定期的な面談・コミュニケーションの実施

    感情労働者がストレスを溜めやすい原因は、従業員自身が自分の本音を話す機会が少ないことです。感情をコントロールしつづけ、抑制状態が普通になってしまうと自分の感情を表に出せなくなり、働く意欲や自分の存在価値が見出せず、ストレスだけが蓄積されてしまう可能性があります。

    そうならないために、定期的な面談などコミュニケーションを通して従業員の感情に寄り添うケアを行いましょう。自分は仕事でどのような点が評価されているのか、今後は何に取り組んでいくべきなのかなどの適切なフィードバックを受けることで、日頃仕事では得にくい達成感や納得感を感じられます。

    また、形式的な面談だけでなく、仕事の悩みやストレスを気軽に話せるような職場の雰囲気を作ることも人事・総務担当者の大切な仕事です。感情労働者のストレスは早期発見が問題の解決に繋がり、優秀な従業員に長く働いてもらうことにつながります。

    3.産業医との適切な連携

    2019年4月から施行された働き方改革では、すべての事業者を対象として、従業員の時間外・休日労働が月80時間を超え、疲労の蓄積が認められる場合に、当人の申し出を受け医師(産業医)の面接指導を行うことが推奨されています。

    長時間労働が当たり前になっている職場では、従業員のメンタルヘルスの不調やバーンアウトに陥るリスクが高くなることから、企業は適切に労務管理を行い、産業医との面談設定などを実施する義務があるのです。

    また、企業は産業医からの意見をもとに、必要だと考えられる場合には適切な措置を行なわなければなりません。具体的には従業員の業務内容の見直し、労働時間の短縮などです。経営者や人事総務担当者は、適切な社内体制を整備する姿勢が求められます。

    出典:「「働き方改革関連法」の概要」(愛知労働局)(https://jsite.mhlw.go.jp/aichi-roudoukyoku/jirei_toukei/koyou_kintou/hatarakikata/newpage_01128.html)(2024/5/4に利用)

    出典:「長時間労働者への 医師による面接指導制度について」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/000553571.pdf)(2024/5/20に利用)

    感情労働を正しく理解し早期対策をとりましょう

    優秀で真面目な従業員に長く働いてもらうことは、お客様満足度などの向上につながり、企業にとって大きなメリットになります。これからの時代は、良い従業員に長く働いてもらうためにも、ストレスが溜まりにくく、のびのびと働ける環境や、従業員同士が気に掛け合うコミュニケーションが活発な環境を整えることが大切になっていきます。

    企業としては産業医を配置するだけの形式的な対応だけでなく、職場が具体的にどうなって欲しいのか、現場の従業員の声を取り入れていきましょう。

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