オフィスの移転は、会社のイベントの中では数年に一度の大きな出来事になるかもしれません。
担当部門の人にとってとても大変な作業ですが、スムーズに移行できるようにチェックリストを完備しておく必要があります。
実際には、どんなことに注意してチェックリストを作成すればいいのでしょうか? この記事では、代表的なチェック内容についてまとめました。

新型コロナウイルスで増えるオフィス縮小
近年では、テレワークを活用しオフィスに出社しなくても仕事ができる企業が増えました。そのため、コスト削減などを目的に一部企業ではオフィスの解約・縮小・分散化などの検討が進んでいるようです。
オフィスの縮小でも、以下のチェックリストは有用ですのでぜひ参考にしてください。
チェックリスト一覧
現在のオフィスについてのチェックリスト
まずは、現在入居しているテナントやビルの契約書の確認を行い、現状把握をしましょう。
1.契約関係
移転の準備に際し、最も重要なことの一つが契約関係の把握です。主に以下の二つを確認して下さい。
すべきこと
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解説
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いつまでに解約を申し出る必要があるのか |
解約のタイミングを逃すと、余計な費用が発生してしまうので注意して下さい。 一般的には半年前までに解約の告知をすることが多いです。 |
預託金の返還時期はいつか
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物件契約時に払った預託金(保証金)が返還される時期も確認しましょう。
一般的な返還時期は、オフィス引渡しから3ヶ月後、もしくは6ヶ月後です。
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2.原状回復関係
今使用しているオフィスの内装を、元の状態に戻す必要があります。原状回復を怠り、壁や床などの内装に破損が残った場合、移転後にオーナーとのトラブルの原因になりかねません。
すべきこと
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解説
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原状回復の業者はこちらで選定できるか |
オーナー指定の業者がいるのか、もしくは自分たちで業者を探す必要があるのかを確認しましょう。 |
原状回復の条件(対象範囲ややるべきこと) |
早めに業者を呼び、対象範囲ややるべきことを把握しましょう。 |
原状回復の費用 |
ビル管理会社などと原状回復の範囲を確認し、業者に見積りを依頼します。 |
これらを確認したら、原状回復業者との調整をし、スケジュールや予算を確定させることが必要です。
オフィス移転先を決めるチェックリスト
基本計画が完成したら、具体的に移転先を探し検討することになります。
この時のチェックリストに明記しておく項目は、立地条件や場所を決めることから始まり、社員の正式な通勤ルートのパターン化、最寄り駅も含めた交通機関の確認といった内容です。
3.新オフィスを選ぶ
移転をすることで、オフィスが抱えてきた問題点を解決する機会にもなりえます。
また、テレワーク中心に移行した企業にとっては、賃料の安いオフィスに移ることでコスト削減に寄与することもできます。課題や目的をはっきりさせ、新しいオフィスのコンセプトをしっかりと決めましょう。
すべきこと
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解説
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現状のオフィスの課題を洗い出す |
立地、社員人数の増加、賃料など課題は多種考えられますが、まずは課題を洗い出し、優先して解決すべき事項を決めましょう。この課題を解決できる新オフィスを探すことに繋がります。 |
立地、場所をどこにするか |
会社の判断基準や業種によって異なりますが、オフィスの立地が会社のブランディングに結びつくという意識も持っておきましょう。 |
最寄駅からの道順と所要時間に問題がないか |
最寄駅からの所要時間を確認しておくと良いでしょう。最寄の駅から徒歩20分以上かかったり、バスの利用が必要な立地は、場合によっては避けたほうが良いでしょう。 |
社員の通勤にかかる費用の増減 |
オフィスが移転することで、社員の毎月の交通費も変更となります。通勤に使用する電車の路線の混雑状況も確認しておくと良いでしょう。 |
駐車場の有無 |
出社や営業活動などで車を使う場合は、駐車場があるのかを確認します。あわせて使用料金もおさえておきましょう。 |
周辺施設の確認(銀行、郵便局、役所、飲食店、商業施設など) |
確認すべき周辺施設の一例は以下です。
・他テナント 他テナントにどんな会社が入居しているか、事前に確認します。特に小規模企業の場合、雑居ビルの周辺に反社会的勢力の関わる事務所や風営法に違反するような夜間営業店が無いかを把握しましょう。
・銀行 ・郵便局 ・役所 これら3つは、特に経理関係の仕事をする社員にとっては重要なものです。
・飲食店や商業施設 周辺の飲食店があまりにも少ないと、ランチ環境が乏しくなり社員の不満にも繋がりかねません。ただし、食の福利厚生サービスで補うという選択肢もあります。食事環境を整えることで働きやすさを向上させましょう。
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コスト関連の確認 |
移転後に実際に掛かる費用が会社の負担にならないように、契約前にシミュレーションをしておきましょう。
確認事項の一例は以下です。
・賃貸料
・敷金
・共益費
・保証金
・預託金
・更新料
・賃貸料の支払い開始時期
・賃貸料の改定時期
・原状回復の条件
・各種支払いの方法 など
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エントランスや共用部分の清潔さ |
エントランスは会社の顔にもなり得ます。 |
朝の時間帯の混雑具合 |
最寄り駅の混雑状況だけでなく、駅からオフィスまでの道中やビル内の混雑状況も加味しましょう。 |
エレベーターの台数、混雑具合、所要時間 |
特に高層階の入居を検討している場合、確認が必要です。 |
電話回線の確認 |
オフィスで電話を使用する場合は、回線数が問題ないか確認をすると安心です。 |
トイレ設備・数 |
社員数に対して、適切な数が用意されているか確認しましょう。 |
給湯室の有無 |
日々の業務のなかで、給湯室を使用する場合は忘れずに確認しましょう。 |
休日や時間外の入館方法 |
休日出勤の場合を考え、オフィスの稼働時間以外でも、セキュリティが保持された状態での入館方法を把握しておきましょう。 |
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4.新オフィスの企画
移転先の条件を洗い出したあとは、すみやかに新オフィスの企画を設計していきましょう。
すべきこと
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解説
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入居人数の概算 |
どのくらいの人数がオフィスを利用するのかを整理しましょう。テレワークを活用している場合は、1日あたりの利用人数も調べておくと参考になります。 |
人数と広さに問題がないか |
業種・業態によって一人当たりの必要面積は異なりますが、目安として一人2坪という数字が一般的に必要とされています。社員増員を理由に、移転を決めた会社も少なくないはずです。敷地面積と社員数に問題がないかを確認しましょう。 |
1人あたりの作業スペース |
各人が快適に作業できるスペースを確保する必要があります。 |
レイアウトプラン |
社内のニーズを取りまとめながら、具体的なレイアウトプランを作成します。 |
内装プラン |
内装プランについて、作りたい企業イメージや働きやすいオフィス環境も考慮しながら計画を立てましょう。 |
採光や照明の確認
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採光の度合いを整えることで、働きやすいオフィス環境の整備に繋がります。 |
受け付けのプラン |
来客時、スムーズに案内できるよう確認しましょう。 |
個室の必要数(応接、会議室) |
これまでの利用状況を加味しながら、足りないことがないように最適な数を確保しましょう。 |
収納やフリースペースの要否(リフレッシュスペースなど) |
リフレッシュスペースの設置は、社内のコミュニケーション活性化を促します。 |
必要な什器の確認(種類、個数) |
什器とは、棚、ラック、ケース、オフィス家具など、日常使用する器具の事です。現オフィスで使っていてそのまま転用できる物、新しく発注する必要がある物をこの段階で確認しておきましょう。
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必要な什器の発注 |
必要な什器の種類や個数が分かったら、発注作業に取り掛かりましょう。 |
オフィス移転先が決まってからのチェックリスト
実際の移転に関する作業から、移転後スムーズに業務に取り掛かるための作業まで多岐に渡ります。
5.新オフィスへの移転準備
移転先が決まったら、早速移転準備を始めましょう。
すべきこと
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解説
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移転計画の概要を検討 |
計画の全体像を明確にしましょう。 |
スケジュール検討 |
スケジュールに余裕を持って検討を進めましょう。移転までの期間が少ない場合には、一括で対応してくれる業者を探しましょう。 |
引越し業者の選定・発注 |
作業ボリュームなどを確認しながら、予算に合わせて引越し業者を選びましょう。 |
内装業者の選定・発注 |
自社の要望を実現してもらえる業者を探しましょう。 |
インフラ(電話・FAX・インターネット)移設業者の選定・発注 |
スケジュールや予算を考慮した検討が必要です。また、他工事とのスケジュール調整も行いましょう。 |
OA機器移設の業者の選定・発注 |
現在使っている業者での対応が可能であれば、そのまま契約することも手です。 |
概算費用の計算・用意(敷金・仲介料・前払い賃料) |
移転にあたりどのくらいコストがかかるのか確認し、支払いの準備を進めましょう。 |
契約更新時期の把握 |
契約更新時期は前もって確認をしましょう。 |
ゴミの分別・廃棄方法の確認 |
ゴミの分別方法について確認をしましょう。移転にともない多くのゴミが出ることが多いので、前もって処理方法を確認できると安心です。 |
内線番号の割付 |
内線番号を割り振りし、分かりやすいようシートなどにまとめましょう。 |
社員証の新発行手続き |
オフィスビルによっては、社員証がなければ入館できない施設もあります。社員が困らないように漏れなく確認しましょう。 |
健康診断先の病院の確保 |
健康診断時に使用できるオフィス近隣の病院を確認しましょう。 |
社内への通知と移転マニュアルの作成 |
社内向けに、各自の荷物梱包や搬入に関するマニュアルと、全体のタイムスケジュールを作成しておくと、移転にあたりスムーズに協力を得ることができます。 |
6.社外への周知
会社の住所が変わることは、多岐に渡って影響を及ぼします。社外への周知を徹底しましょう。
すべきこと
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解説
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プレスリリース |
移転の日付や住所だけでなく、移転の目的も伝えられると良いでしょう。
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Webサイトなどの更新
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各媒体に記載している住所を更新しましょう。
一例は以下です。
・サービスサイト ・コーポレートサイト ・メールの署名 ・SNS ・外部に委託しているサイト など
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取引先への移転案内文作成 |
配布物をみたお客様がお問い合わせできるよう、オフィス移転の後には新住所を配布するようにしましょう。 |
送付リストの作成 |
案内文の作成と同時に、送付するリストの作成も進めましょう。 |
送付書類の印刷 |
送付案内・リストが準備でき次第、発送に向けて印刷を行いましょう。 |
発送 |
移転よりも前に行うのが一般的です。 |
官庁関係への届け出 |
移転をしたら、法務局・税務署・公共職業安定所などへ各種届出を行う必要があります。遅延なく実施しましょう。 |
社内で使用する封筒や帳票類の変更 |
すでに利用している業者がある場合には、事前に確認をしておきましょう。 |
宅配などの住所変更手続き |
発注等を行う前には、忘れずに住所変更を行いましょう。 |
7.オフィスの契約関係のリスト項目
いよいよ契約手続きのステップになります。後々のトラブルに繋がらないように、確認すべき項目を細かくチェックリストに入れておくことが必要です。
すべきこと
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解説
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入居日確認 |
間違いのないよう入居日を確認しましょう。 |
連帯保証人の有無確認 |
連帯保証人について漏れなく確認しましょう。 |
退去する時の明渡し期日 |
前もって確認をすると安心です。 |
管理会社に提出する書類の確認 |
すみやかに提出を行いましょう。
必要書類の一例は以下です。
・会社概要
・登記簿謄本の写し
・経営審査事項の写し など
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オフィス移転のポイント
引越し作業のリスト化
いよいよ移転の期日が迫ってきたら、具体的な引越し作業項目をリスト化しておきましょう。全体スケジュールを策定したり、社員向けの移転マニュアルを準備したりしておくと、慌てないで実施ができます。
鍵の管理方法の確認
オフィスが変わることで、必要な鍵の数や種類も変わってきます。無用な混乱を避けるために、「事前に何種類の鍵があるのか」「それぞれ誰が管理するのか」「どこに保管するのか」を明確にしておくことが大切です。移転後にも周知することを心がけましょう。
印刷物は早めに準備
名刺や社員証などは、内容を変更して新規に発行する必要があります。企業規模に比例して印刷量も増えるため、直前に申し込みをしたのでは間に合いません。移転先が決まった段階で印刷業者とのやり取りを開始し、業務に支障が出ないようにしましょう。
社内用マニュアルを作成
移転後はさまざまな変更点があるため、逐一確認を取る事態が発生して業務が滞るなどの支障が出てしまいます。そうした事態を避けるためにも、事前に準備できる範囲でマニュアルを作成しておくことで、移転後の業務もスムーズに進みます。
まとめ
オフィスの移転には、実施すべき項目が多く多岐に渡っています。移転直前になって焦ることのないよう、事前準備としてチェックリストをしっかりと作成しておきましょう。
