【2020年4月】労働者派遣法改正!派遣先と派遣元が対応すべきこと

    「働き方改革」では時間外労働の上限設定など、企業の枠組みを変える法改正が行われています。その変化の波は、派遣業界にもやってきます。

    2020年4月より、労働者派遣法が改正されます。それにより、企業は派遣社員と派遣先の従業員の待遇格差を是正することが義務付けられます。とくに派遣社員を受け入れる企業は、給与の見直しだけはなく、通勤手当の支給や食堂・休憩室などの使用ルール、教育研修の受講対象者など、様々な点で再検討が必要になる可能性があります。

    改正のポイントを確認し、義務違反にならないようしっかりと自社の対応を見直しましょう。

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    2020年の派遣法改正の背景

    2018年6月に働き方改革関連法が成立し、その中の「不合理な待遇差の解消」に向けた取り組みとして、労働者派遣法(「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣社員の就業条件の整備等に関する法律」以下、派遣法)が改正されました。

    改正の目的は、派遣社員と正社員の「同一労働同一賃金」の実現です。同一労働同一賃金とは、同じ業務内容や責任の範囲での仕事であれば、雇用形態にかかわらず同等の待遇を約束するべきという考え方です。

    こうした待遇改善を法律で明記する背景には、深刻な日本社会の少子高齢化があります。2030年には、人口がピークだった2008年と比較して約1000万人の減少が見込まれています。企業の人手不足はさらに加速するでしょう。問題の解決には、従来の正社員を中心とした雇用形態を変え、派遣・パートタイム・時短など、誰もが満足して働ける環境が求められています。

    派遣社員は、派遣元に雇用され派遣先で就業することから、昇給や昇格といったキャリア形成がおろそかにされがちです。派遣法の改正により賃金はもちろん、教育・福利厚生などの幅広い企業の対応が見直されます。派遣という働き方で感じる不満感を、小さくするというのが改正の狙いです。

    以下に、改正の基本指針とおさえておくべきポイントを順番に説明します。

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    派遣法改正の基本的方針

    派遣法の改正で基本指針として上げられているのは以下の3つです。

    不合理な待遇差の禁止
    労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
    行政による事業主への助言・指導等や、裁判外紛争解決手続き(行政ADR)の整備

    派遣先・派遣元の企業は、とりわけ義務化された1と2を押さえておく必要があります。

    「不合理な待遇差の禁止」とは、派遣社員と正社員との待遇格差の改善を求めるものです。賃金・賞与・手当等の見直しのため、派遣元は「派遣先均等・均衡待遇」か「労使協定」のいずれかを派遣社員と結ばなければなりません。それにより、派遣先で受け入れる体制の見直しも要求されます。

    「労働者に対する待遇に関する説明義務の強化」では、派遣元から派遣社員へ伝えるべき項目の範囲が拡大しました。また、派遣先が派遣元と労働者派遣契約を締結する際に、待遇格差の確認のため比較対象となるべき従業員の情報を提供しなければいけません。

    これらの方針が適用されるのは、2020年4月1日からです。

    なお、正規雇用と不正規雇用の待遇格差是正を目的に、パートタイムや有期雇用労働者に対しても、同様に「同一労働同一賃金」のガイドラインが適用されます。これは「パートタイム・有期雇用労働法」の改正に従うものであり、大企業は2020年4月1日から、中小企業は2021年4月1日からの適用です。

    参考:厚生労働省『不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル』P4

    派遣法改正のポイント

    派遣法の改正で、不合理な待遇差を改善するため、以下の3点が重要なポイントとしてあげられます。

    1、派遣元事業主は、派遣社員の雇用にあたり「派遣先均等・均衡方式」か「労使協定方式」のいずれかを用いて待遇を決定することが義務化
    2、派遣先は派遣元に対して、待遇の比較対象となる従業員に関する情報を提供することが義務化
    3、派遣元が1を順守できるよう、派遣先は派遣料金について配慮することが規定

    これまで、派遣社員の待遇を正社員と同等にするべきという規定はありませんでした。また、派遣先から派遣元に提供する情報も配慮にとどまっており、今回の改正は義務化という点で、派遣元・派遣先の両方に大きな変化をもたらすものです。

    出典元:厚生労働省『不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル』P6

    以下に、派遣先均等・均衡方式と労使協定方式の内容、およびそれにより求められる派遣先・派遣元企業の対応について説明します。
    派遣先均等・均衡方式とは
    派遣元は派遣社員と契約する際、「派遣先均等・均衡方式」か「労使協定方式」のいずれかを用いて、その派遣社員の待遇を決定しなければいけません。

    派遣先均等・均衡方式とは、派遣先で同じ業務に従事する正社員と派遣社員を比較したとき、不合理な待遇差があってはならないとするものです。職務内容や、仕事の責任の範囲が同様であるならば、与えられるべき待遇も同様であるべきと考えます。

    ここでいう「待遇」とは、以下のものが基本的に含まれます。

    基本給
    昇給
    賞与
    手当
    福利厚生
    教育訓練
    安全管理

    たとえば、役職名が「店長」の正社員、「店長代理」の派遣社員が同じ店舗で働いていたとします。二人の業務内容、決済権、マネジメントする部下の人数等が同じと考えられる場合、賃金や賞与といった待遇を同一にしなければいけません。

    ただし、本人の能力や経験によって待遇に差がつくのは問題がないと判断されます。

    均等待遇と均衡待遇の違い

    派遣先均等・均衡方式を採用した場合、派遣元は「均等待遇」か「均衡待遇」のいずれかで、派遣社員の待遇格差を確認します。

    均等待遇とは、前提条件が同じであれば同じ待遇を用意するべきという意味です。一方、均衡待遇とは、前提条件が違う場合でも合理的な理由があれば違反にはならないという考え方です。


    出典元:厚生労働省リーフレット『派遣元の皆さまへ』

    均等待遇

    「職務の内容」「職務の内容・配置の変更の範囲」を基準に、同じ場合は派遣社員であることを理由に差別的な取り扱いをしてはならないとするもの。
    差別的取り扱いの有無を判断し、差別的取り扱いは禁止される。

    均衡待遇

    「職務の内容」「職務の内容・配置変更の範囲」「その他事情」を考慮して不合理な待遇差を禁止すること。考慮要素の違いがある場合は適切な説明ができなければならず、明確な理由のない差異は不合理な待遇差と判断される。

    派遣元は、まずは均等待遇の考え方で前提条件を確認し、同じであれば待遇が同一であるかをチェックします。もし、前提が異なる場合は、その違いがどのような理由で設定されているのかを確認します。

    労使協定方式とは

    派遣元が派遣社員の待遇を決める際、基本的には「派遣先均等・均衡方式」が採用されます。

    しかしながら、この方式では派遣先の規模によって派遣社員の待遇が左右される可能性があります。大企業に派遣された場合と、中小企業に派遣された場合では、賃金が大きく変わり派遣社員の生活が不安定になります。

    そのため、特例として派遣元が派遣社員と締結する労使協定方式が認められています。


    出典元:厚生労働省リーフレット『派遣元の皆さまへ』

    労使協定方式とは、派遣元と労使間で一定の要件を満たす労使協定を締結し、協定に基づいて派遣社員の待遇を決める方式です。

    この際、賃金の決定は派遣労働者と同種の業務に従事する一般の労働者の平均賃金と同等以上になるようにしなければいけません。基準となる数字は、職業安定局長通知を参照します。また、教育訓練、福利厚生施設等の利用については、派遣先の正社員と同等の待遇を確保することが必要です。

    派遣元の情報提供義務

    派遣法改正により、派遣元が派遣社員に提供する説明義務が強化されました。

    派遣元は、雇入れ時と派遣時の両方のタイミングで、派遣社員に対して以下の事項を明示しなければいけません。

    【雇用のタイミングで説明するべき事柄】
    昇給の有無
    退職手当の有無
    賞与の有無
    労使協定の対象となる派遣社員であるか否か
    派遣社員から申し出を受けた苦情の処理に関すること
    ※上記以外に、労働契約の期間や更新基準など、これまで明示が必要とされていた事柄にも、引き続き対応が必要

    【派遣のタイミングで説明するべき事柄】
    賃金の決定に関する事柄
    休暇
    昇給の有無
    退職手当の有無
    賞与の有無
    労使協定の対象となる派遣社員であるか否か
    ※そのほか、従事する業務の内容や責任の程度、就業時間や休息時間など、これまで明示が必要とされていた事柄にも、引き続き対応が必要

    説明の際は書面での通知が義務付けられます。派遣社員が希望すれば、電子メールで知らせることは問題ありません。

    さらに、不合理な待遇差を解消するための措置について説明しなければいけないとされています。

    派遣先均等・均衡方式の場合

    待遇の決定にあたり、考慮した際の待遇差の有無、および待遇差の理由。

    労使協定方式の場合

    賃金が、労使協定の方式に従い定められていること。および、賃金を除く待遇が通常の労働者との間で不合理な差異がなく決められていること。

    派遣先の情報提供義務

    派遣先は、派遣社員が従事する業務ごとに決められた情報を派遣元に提供しなければなりません。情報提供なしに、労働者派遣契約を締結することは認められません。

    派遣元が派遣先均等・均衡方式を採用している場合は、比較対象労働者の情報を提供します。一方、労使協定方式を採用している場合は、決められた待遇に関する情報を提供します。

    派遣先の比較対象労働者とは

    派遣先均等・均衡方式を派遣元が採用している派遣社員を受け入れる場合、派遣先企業は事前に社内から比較対象労働者を選定し、決められた情報を派遣元に提供します。

    この際、比較対象労働者を選定する基準は以下の通りです。

    【比較対象労働者の選定基準】
    「職務の内容」と「職務の内容・配置の変更の範囲」が同じ通常の労働者
    「職務の内容」が同じ通常の労働者
    「業務の内容」又は「責任の程度」が同じ通常の労働者
    「職務の内容・配置の変更の範囲」が同じ通常の労働者
    1~4に相当する短時間・有期雇用労働者 
    派遣労働者と同一の職務に従事させるために新たに通常の労働者を雇い入れたと仮定した場合における当該労働者 

    提供するべき待遇に関する情報

    派遣先は、待遇方式によって以下の情報を派遣元に提供する必要があります。

    【派遣先均等・均衡方式の場合:比較対象労働者に関する次の情報】
    職務の内容、職務の内容・配置の変更の範囲、雇用形態
    比較対象労働者を選定した理由
    待遇の内容(昇給、賞与その他の主な待遇がない場合には、その旨を含む。)
    待遇の性質及び目的
    待遇を決定するに当たって考慮した事項

    【労使協定方式の場合】
    業務に必要な能力を付与するための教育訓練
    食堂、休憩室、更衣室の利用

    教育研修や福利厚生施設の利用ルールの見直し

    情報の提供と合わせて、教育研修の実施や食堂といった福利厚生施設の利用の待遇差をなくすことも、派遣先に義務として求められます。

    派遣元からの求めに応じて、業務に必要なスキルや知識の習得のため、教育や研修を派遣社員に実施することが義務化されます。さらに、派遣社員が派遣先の食堂・休憩室・更衣室等の福利厚生施設を利用する場合、正社員と同様に使えるように措置を講じなければいけません。

    なお、物品販売所、病院、診療所、保養施設といった福利厚生施設の利用については、待遇を同一にすることは義務ではなく、利用できるよう措置を講じる配慮義務にとどまります。

    同一労働同一賃金ガイドラインの導入

    ここまで解説した派遣法改正による不合理な待遇差の解消について、原則となる考え方が「同一労働同一賃金ガイドライン」にまとめられています。

    正社員(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(パートタイム、有期雇用労働者、派遣社員)との間で、不合理な待遇差とはなにか、問題となる例・ならない例を解説。また「同一賃金」に該当する範囲も記載されています。

    派遣社員に対しては、派遣先均等・均衡方式と、労使協定方式にわけて同一とするべき賃金の対象を説明。前者の場合は「基本給」「賞与」「各種手当」「福利厚生・教育訓練」が対象に、後者の場合は「賃金」「福利厚生・教育訓練」が対象です。

    関連記事:同一労働同一賃金の導入に向けて押さえておきたいポイントとは?

    派遣法改正で派遣先企業が注意しておくこと

    派遣法の改正は、基本給のみならず、賞与や手当、教育研修など、派遣社員を受け入れる企業に大きな影響を与えます。

    まず考えられるのが人件費の増加です。正社員と同じ仕事・責任の範囲で派遣社員を受け入れている場合、給与や賞与の額面が上昇することが考えられます。場合によっては、人件費の増加となるため、適用の時期にあわせて見直しが必要になります。

    また、派遣先は派遣元へ提供する情報を正しく管理しなければいけません。厚生労働省の特設ページでは、比較対象労働者の情報提供の例など、細かいフォーマットが公開されています。派遣元と契約を結ぶ前の参考にしましょう。

    さらに、教育研修の見直しや社内ルールの変更にかかるコストにも注意が必要です。派遣法の改正が適用されたあとは、派遣社員にも業務上必要な教育研修を受けさせることが義務化されます。食堂・更衣室の利用で待遇差が発生しないよう、ルールの変更も必要です。

    正社員・派遣社員といった雇用形態を問わず、成果を出す人材が公平に評価される体制が、働きやすい社会を作っていくでしょう。

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