健康保険法 改正

    健康保険法とは?2022年の改正ポイントを詳しく解説

    労働者とその家族が病気やケガなどに見舞われたときに保険給付を行う健康保険制度。2022年にこの制度を定めた法律である「健康保険法」の改正があり、企業に求められる対応も変わりました。

    これまでの制度では現役世代へのサポートが少なく、高齢者へのサポートが中心で負担は現役世代という構造になっていました。今回はこのような構造を見直し「全世代対応型の社会保障制度」を構築するための法改正です。

    この記事では企業の担当者が抑えておくべき健康保険法の基礎知識や、2022年の法改正のポイントを解説します。

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    健康保険法とは

    健康保険法とは、被保険者と被扶養者が病気やけがに見舞われた際の医療給付や、出産・病気などで働けなくなった際の保険給付などについて定めた法律です。

    健康保険法が定める健康保険制度では、企業と従業員(被保険者)が支払う保険料が財源となり被保険者の生活をサポートしています。

    具体的な法定給付は業務外の病気やケガの療養のため働けない期間の生活保障を目的とした傷病手金、入院時に一定額以上は支払う必要がない高額医療費、出産の際に給付される出産育児一時金、出産手当金などがあります。

    日本の健康保険は1922年からはじまり、公的医療保険制度の中心となる法律で時代に沿ってその内容も改正されています。

    健康保険の適用事業所には3種類ある

    健康保険の適用事業所とは企業の事業所ごとに適用される、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入対象となる事業所のことを指します。(参照: 全国健康保険協会

    事業所には3種類あり、法律によって加入が義務付けられている事業所を「強制適用事業所」、任意で加入する事業所を「任意適用事業所」、2016年に定められた「特定適用事業所」があります。

    ここからはそれぞれの適用事業所について解説します。

    強制適用事業所

    強制適用事業所は以下の1か2に該当する事業所(事務所)で、法律により事業主や従業員の意思に関係なく、健康保険・厚生年金へ加入しなければなりません。

    1.次のうちいずれかの事業を行い、常時5人以上の従業員を使用する事業所
    製造業/土木建築業/鉱業/電気ガス事業/運送業/清掃業/物品販売業/金融保険業/保管賃貸業/媒介周旋業/集金案内広告業/教育研究調査業/医療保健業/通信報道業など

    2.国または法人の事業所
    常時従業員を使用する国、地方公共団体または法人の事業所

    任意適用事業所

    任意適用事業所とは、強制適用事業所には該当しない事業所のことです。厚生労働大臣(日本年金機構)の認可を受け、健康保険・厚生年金保険の適用事業所になります。

    任意適用事業所になるには以下3つの要件を満たす必要があります。
    ・その事業所ではたらく半数以上の人が適用事業所になることに同意
    ・事業主が認可を申請
    ・厚生労働大臣(日本年金機構)が認可

    適用事業所になると、従業員は基本的に健康保険・厚生年金保険に加入しますが、任意事業所の場合は健康保険のみ・厚生年金保険のみなどどちらか1つの制度にだけ加入することもできます。

    また、被保険者の3/4以上が適用事業所の脱退に同意した場合は、事業主が申請し厚生労働大臣(日本年金機構)の認可を受けたのち、適用事業所を脱退することも可能です。

    特定適用事業所

    特定適用事業所とは、適用事業所であり健康保険・厚生年金保険の被保険者が501人以上の企業に属する事業所のことを指します。

    同一事業主もしくは同一法人番号の適用事業所の被保険者数が、1年のうち6カ年以上が500人を超えることが見込まれる企業に属する事業所のことです。

    2016年10月に健康保険・厚生年金保険の適用拡大に伴い定められました。

    健康保険の被扶養者の範囲

    健康保険では被保険者が病気、けが、死亡、出産などの際に保険給付が行われますが、被扶養者についても同様に保険給付が行われます。

    この保険給付が行われる被扶養者の範囲は以下の図のとおりです。

    被扶養者の範囲

    出典: 税務会計監査事務所健康保険組合

    1.被保険者の直系尊属、配偶者(事実婚関係と同様の人を含む)、子、孫、兄弟姉妹で、主として被保険者に生計を維持されている人。(必ず同居している必要はありません。)

    2.被保険者と同一の世帯(同居)で主として被保険者の収入により生活を維持されている次の人
    ・被保険者の3親等以内の親族(1に該当する人は除く)
    ・被保険者の配偶者で、戸籍上婚姻の届出はしていないが事実上婚姻関係と同様の人の父母および子

    3.2の配偶者が亡くなった後における父母および子
    (ただし、後期高齢者医療制度の被保険者等である人は除く)

    2022年の改正はなぜ施行される?

    団塊世代が75歳以上の高齢者となりはじめる2022年以降、高齢者だけではなく子どもたちや子育て世代、現役世代まで広く安心できる社会保障全般の見直しが必要とされており、全世代型社会保障検討会議で話し合いが実施されてきました。

    そして2022年1月に「 全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律 」が施行されました。

    健康保険・厚生年金に加入する企業に関係する2022年からの健康保険制度の改正がはじまっていますが、改正の背景にはどのような理由があるのでしょうか。

    改正の背景は全世代型の社会保険制度構築のため

    2022年からの改正の背景には、現役世代への給付が少なく高齢者中心になっているこれまでの社会保障の構造を見直す目的があります。

    すべての世代で広く安心を支えていく全世代対応型の社会保障制度を構築するため、法律の改正が実施されました。

    2022年のポイントとなる改正点4つ

    企業にとってポイントとなる2022年の改正点は以下の4つです。
    ・傷病手当金の支給期間の通算化
    ・任意保険制度の変更
    ・出産一時金および家族出産一時金の金額見直し
    ・育児休業期間中の保険料免除要件の見直し

    1.【2022年1月1日】傷病手当金の支給期間の通算化

    傷病手当金とは、被保険者本人が業務外の病気・けがの療養のために仕事を休み、会社から給与が支給されない場合に生活保障給付として健康保険に請求できる手当金のことです。

    傷病手当金の支給期間変更

    出典: 慶應義塾健康保険組合

    改正前
    傷病手当金は、支給開始日から起算して1年6カ年の間に支給されるものでした。1年6カ年を過ぎると期間満了となっていました。

    改正後
    2022年1月からは傷病手当金は支給をはじめた日から通算して1年6カ年に達するまで、支給を受けられるようになりました。

    たとえば支給期間中に仕事に復帰して、また休職をした場合にも支給開始日から起算して1年6カ年を超えても繰り越して支給されます。

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    2.【2022年1月1日施行】任意継続被保険者制度の変更

    任意継続被保険者制度とは、健康保険に加入していた被保険者が退職し、その被保険者資格を喪失した場合でも要件を満たせば最長2年間引き続き健康保険制度に加入できるという制度です。

    任意継続には以下の要件を満たす必要があります。
    ・資格喪失日の前日までに継続した2カ年以上の被保険者期間がある
    ・資格喪失日から20日以内に申請

    任意継続被保険者の健康保険料は、会社が負担していた分の保険料も被保険者自身が支払うことになります。

    2022年1月の改正では任意継続の資格喪失にして要件の追加がありました。

    変更前
    任意継続被保険者は以下のいずれかに該当した日の翌日から任意被保険者の資格を喪失します。
    ・任意被保険者となった日から起算して2年経過したとき
    ・被保険者が死亡したとき
    ・保険料を納付期日までに納付しなかったとき
    ・再就職先で被保険者資格を取得したとき
    ・後期高齢者医療の被保険者等になったとき

    上記をまとめると、任意継続被保険者が自分の意思で健康保険を脱退することができませんでした。

    変更後
    任意継続被保険者でなくなることを希望し、健康保険に申し出た場合にはその申し出が受理された日の属する月の翌月1日に資格喪失が可能です。

    3.【2022年1月1日施行】出産育児一時金及び家族出産育児一時金の金額の見直し

    健康保険の被保険者、もしくは被扶養者が出産した時には保険者へ申請すると出産育児一時金が支給されます。出産一時金は合計42万円と変更ありませんが、その内訳が改正されました。

    改正前
    出産育児一時金40万4000円
    産科医療補償制度の掛金1万6000円

    改正後
    出産育児一時金40万8000円
    産科医療補償制度の掛金1万2000円

    合計金額に変更がないため実務にほぼ影響はありませんが、制度について変更があった点は認識しておくとよいでしょう。

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    4.【2022年10月1日施行】育児休業期間中の保険料免除要件の見直し

    育児休暇を短期間取得する人が増加していることに対応して、育児休業期間中の保険料免除要件が改正されます。

    改正前
    育児休業などを開始した日の属する月から終了する日の翌日が属する月の前月までの期間、被保険者に関する保険料が免除されます。

    たとえば、4/25に育休をスタートし5/3に終了した場合、4月分の社会保険料が免除されます。4/1に育休をスタートし、4/15に終了した場合には4月分の社会保険料は免除されません。

    現行のしくみでは月末をまたぐかどうかで社会保険料の免除可否が決まり、不公平が生じています。

    また、賞与月の月末に育児休業等を取得していると賞与にかかる保険料が免除されるため、短期育休取得の際に賞与保険料の免除を目的として育休月が選択される傾向がありました。

    改正後
    以下のように変更されます。
    ・育児休業等を開始した日の属する月と翌日が属する月とが異なる場合は、開始日の属する月から終了日の翌日が属する月の前月まで保険料を免除する。
    ・育児休業等を開始した日の属する月と終了する日の翌日が属する月とが同一であり、かつ当該月における育児休暇等の日数として厚生労働省令で定めるところにより計算した日数が14日以上である場合は、当該月の保険料を免除する。
    ・保険料免除要件を上記2つとした上で、育児休業等の期間が1カ年以下である場合は、標準報酬月額にかかる保険料に限り免除の対象とする。(=賞与にかかる保険料は徴収する)

    つまり、同月内に14日以上育児休業等を取得すればその月の社会保険料は免除となります。また、賞与月に育児休業等を1カ年以上取得している場合に限り、賞与にかかる保険料も免除の対象となります。

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    法改正を周知して働きやすい環境を整えよう

    現行の社会保障は現役世代への給付が少なく、保障内容が高齢者向けの内容に偏っていることが長年の課題となっています。

    2022年の社会保障制度の改正により、全世代が安心して働けるしくみ作りが動きはじめました。

    傷病手当、健康保険の任意継続、育児休業中の保険料は従業員の生活に影響する大切な制度です。これに合わせて企業や担当者も法改正を理解し、従業員へ適切に情報周知ができるように備えておきましょう。

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