改正健康増進法とは?変更点や罰則、企業が取り組むべき対策を知ろう

    目次

    2020年4月に施行された改正健康増進法では「望まない受動喫煙防止」という目的があらたに加わりました。これにより屋内での喫煙は原則禁止となり、喫煙する場合にはさまざまな基準が設けられています。また、違反が見つかれば罰則も。

    社会全体として受動喫煙対策に取り組む中で、企業はどのように対応すればよいのでしょうか。この記事では改正健康増進法の基本から企業がとるべき対策についてくわしく解説します。

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    改正健康増進法の基本と主な7つの変更点

    改正健康増進法は、健康増進法の一部を改正し2020年4月から全面施行されました。

    この法改正の1番の目的は望まない受動喫煙を減らすことで、利用者が多数いる施設や乗り物、飲食店などの屋内で原則禁煙となりました。また、施設区分に合わせた喫煙の可否、喫煙場所のルール、喫煙所の設置要件などが定められています。

    改正健康増進法の第六章「受動喫煙の防止」には以下のように記載があります。

    (国及び地方公共団体の責務)
    第二十五条
    国及び地方公共団体は、望まない受動喫煙が生じないよう、受動喫煙に関する知識の普及、受動喫煙の防止に関する意識の啓発、受動喫煙の防止に必要な環境の整備その他の受動喫煙を防止するための措置を総合的かつ効果的に推進するよう努めなければならない。

    (関係者の協力)
    第二十六条

    国、都道府県、市町村、多数の者が利用する施設(敷地を含む。以下この章において同じ。)及び旅客運送事業自動車等の管理権原者(施設又は旅客運送事業自動車等の管理について権原を有する者をいう。以下この章において同じ。)

    その他の関係者は、望まない受動喫煙が生じないよう、受動喫煙を防止するための措置の総合的かつ効果的な推進を図るため、相互に連携を図りながら協力するよう努めなければならない。

    (喫煙をする際の配慮義務等)
    第二十七条

    何人も、特定施設及び旅客運送事業自動車等(以下この章において「特定施設等」という。)の第二十九条第一項に規定する喫煙禁止場所以外の場所において喫煙をする際、望まない受動喫煙を生じさせることがないよう周囲の状況に配慮しなければならない。

     特定施設等の管理権原者は、喫煙をすることができる場所を定めようとするときは、望まない受動喫煙を生じさせることがない場所とするよう配慮しなければならない。

    この条文によると、国や地方公共団体・施設の運営管理権原者は望まない受動喫煙が起こらないように配慮することが義務付けられています。また、第二十七条にあるように喫煙する本人も周りの人に対して受動喫煙させないよう配慮が義務付けられました。

    ここからは、はじめに健康増進法の対象施設を確認したあと、2020年4月の法改正での主な7つの変更点を解説します。

    まずは健康増進法の対象施設を確認しよう

    健康増進法の対象施設は大きく4つに分けられます。ここからはそれぞれの施設を具体的に解説します。

    第一種施設

    第一種施設に指定されているのは、不特定多数が集まる公共性の高い施設です。具体的には学校、病院、薬局、児童福祉施設、行政機関の庁舎などが該当します。

    これらの施設は最も規制が強い施設に該当するため、敷地内は原則禁煙です。ただし敷地内の屋外であれば、所定の要件を満たした指定屋外喫煙所の設置が可能です。

    第二種施設

    第二種施設は、第異種施設以外でたくさんの人が利用する施設全般を指します。具体的には企業のオフィス、工場、ホテル・旅館などの宿泊施設・飲食店などが該当します。原則禁煙ですが屋内に喫煙室を設置することも可能。その場合は要件を満たした喫煙専用室などを設置しなければなりません。

    小規模経営の飲食店(経過措置)

    経営規模が小さい飲食店の区分は第二種施設に該当します。しかし小規模経営の飲食店は経営継続の観点からすぐに対策をとることが困難な場合も。そのような配慮から経過措置として、喫煙可能であることを掲示した上で屋内で喫煙が認められています。

    喫煙目的施設

    喫煙目的施設は主にバーやスナックなどが該当します。要件として、たばこの対面販売をしている、主食として認められる食事を提供していない、などを満たす必要があります。また、たばこ販売店や公衆喫煙所も喫煙目的施設です。

    喫煙目的施設ではその施設内で喫煙できますが、喫煙目的室の要件を満たす必要があります。

    1.国や地方公共団体などの管理権原者の責務が明確に

    法改正により、その施設を管理する国や地方公共団体などの管理権原者は受動喫煙をさせない対策を効果的に推進しなければならないという責務が明示されました。

    2.屋内は原則禁煙

    多くの人が利用するすべての施設の屋内では原則禁煙です。前述のとおり学校・病院・飲食店・会社などのオフィス・娯楽施設・体育施設・宿泊施設などが対象。ここで注意したいポイントはお客さんが利用する施設だけでなく、従業員のみが利用するオフィスも該当する点です。

    ちなみに住居やベランダ、老人ホームなどの入居施設の個室など、人が住む場合の屋内は対象外となります。

    3.施設区分ごとに禁煙措置や喫煙場所が定められた

    出典:厚生労働省

    図のとおり、施設の類型によって設置可能な喫煙室が異なり第一種施設は原則屋内は禁煙です。一方、第二種施設・小規模飲食店、喫煙目的施設では喫煙場所を設置することができます。

    施設の屋内に設置できる喫煙室は以下の4種類です。
    ・喫煙専用室
    ・指定たばこ専用喫煙室
    ・喫煙可能室
    ・喫煙目的室

    4.喫煙室設置に関する技術基準を明示

    厚生労働省によると、喫煙室設置に関する技術基準は以下のように定められています。これらを満たすと喫煙室設置が可能です。

    1.出入り口において喫煙室の室外から室内に流入する空気の気流が0.2m毎秒以上であること
    2.たばこの煙(蒸気を含む)が喫煙室内から室外に流出しないよう、壁・天井などによって区画されていること
    3.たばこの煙が屋外または外部に排気されていること

    5.喫煙可能な場所の標識掲示の義務付け

    出典:厚生労働省

    施設の一部に喫煙室を設置する場合には、喫煙室の出入口と施設そのものの出入口に標識を掲示しなければなりません。施設全体を喫煙可能にする場合には、施設の出入口にのみ標識を掲示します。

    また、施設に喫煙室があることを示す標識は以下のとおりです。

    出典:厚生労働省

    6.20歳未満の喫煙エリアの立ち入り禁止

    出典:厚生労働省

    喫煙できる場所には、従業員を含め20歳未満の人は立ち入り禁止です。施設の一部に喫煙室を設置する場合には、屋内の禁煙エリアへの立ち入りはできますが、喫煙室内への立ち入りが禁止となり、その旨を標識にて掲示しなければなりません。

    また、施設全部を喫煙室とする場合には20歳未満の人は入ることができませんので、店頭の標識にその旨を掲示する必要があります。

    7.違反した場合の罰則規定

    法改正により、健康増進法に違反した場合には、行政指導・行政処分や罰則(過料の徴収)が規定されています。違反すると、50万円以下の罰金も。

    改正健康増進法では、違反時の行政指導・行政処分や罰則(過料の徴収)が規定されています。違反の通報があった場合には現地確認などが実施される場合もあります。

    罰則の対象は喫煙者を含む「全ての人」と、施設の所有者や事実上現場管理を行っている管理者などの「管理権原者」に分けられます。違反が発覚した場合、まずは都道府県知事による指導が行われ、それでも改善されない場合には勧告・命令に変わり、最終的に罰則の適用になる可能性があります。

    以下の図で主な違反内容と法令における過料額を確認しておきましょう。

    義務対象 義務の内容 指導・助言 勧告・公表・命令 過料
    すべての人 喫煙禁止場所における
    喫煙
    △(※) ◯(命令に限る) 30万円以下
    類似する標識の掲示、
    標識の汚損等
    50万円以下
    施設等の管理権原者 喫煙器具・設備等の撤去等 50万円以下
    喫煙室の基準適合 50万円以下
    施設要件の適合
    (喫煙目的施設に限る)
    50万円以下
    施設標識の掲示 50万円以下
    施設標識の除去 30万円以下
    書類の保存
    (喫煙目的施設・既存特定飲食提供施設に限る)
    20万円以下
    立入検査への対応 20万円以下
    20歳未満の者の喫煙室への立入禁止
    広告・宣伝
    (喫煙専用室以外の喫煙室設置施設等に限る)

    出典:厚生労働省

    受動喫煙のリスクを理解しよう!

    世界的に受動喫煙が問題とされている一方で、日本国内においても企業内で生じる副流煙の健康被害は問題視されています。

    たばこの煙には喫煙者が吸い込む主流煙と、その周りの人が吸い込む副流煙に分けられます。副流煙において特に問題になるのが、その中に含まれている化学成分です。

    厚生労働省によると副流煙は主流煙よりもニコチンが約2.8倍、タールが3.4倍となっており、発がん性のある化学物質もその煙に含まれています。

    また、受動喫煙による肺がんや虚血性心疾患の死亡数は年間約6800人、そのうち職場での受動喫煙が原因とみられるのは約3600人とされており全体の半数以上にものぼるのです。

    受動喫煙による健康被害が表面化しているいま、企業として早急に対策を進める必要があります。

    改正健康増進法に則り企業がとるべき3つの対応

    企業では従業員に健康で長く働いてもらうため、基本的には禁煙してほしいと考える経営者が多いものです。しかし、喫煙は従業員自身の権利でもあり強制はできません。一方、非喫煙者が「きれいな空気を吸う」権利もあります。

    そのため、企業では「喫煙室の設置・労働条件への明記・ルールの周知」といった3つの対策が必要です。

    1.喫煙室の設置

    改正健康増進法により、屋内オフィスでの喫煙は原則禁止となりました。しかし、空間分煙を選択し屋内に喫煙室を設置することは可能です。その場合には受動喫煙につながらないように排気やまわりの環境など一定の基準を満たす必要があります。

    喫煙室設置の技術基準は前述しましたが、オフィスでの喫煙室設置の注意ポイントは以下のとおりです。

    ・煙が屋内に流れ込まないように施設の出入口からなるべく離れたところに設置する
    ・非喫煙者が近くを通らずに済むところに設置する
    ・近隣に学校・通学路などがある場合には煙が流れないか配慮する

    2.労働条件への明記

    今回の法改正により、厚生労働省は企業に対して職場における受動喫煙の対策に関する明示を義務付けました。

    自社のホームページや求人票などで従業員を募集する際に職場でどのような受動喫煙対策をしているか、を記載する必要があります。

    3.ルールの周知

    望まない受動喫煙を防止する取り組みはかつてはマナーでしたが、法改正によりルールへと変わりました。

    ルールを周知することは、たばこを吸う人・吸わない人の両者にとって働きやすい環境へとつながります。喫煙場所や喫煙ルールなどの周知を実施しましょう。

    改正の背景とは

    今回の改正の背景には主に3つの背景があります。ここからは厚生労働省の「受動喫煙防止対策」をもとに、改正の背景を解説します。

    WHOの評価で日本は世界最低ランク

    世界保険期間(WHO)では、受動喫煙の対策について一定の基準を設け各国の政策をランク付けしていますが、日本は最低ランクに位置付けられています。今回の改正増進法はこの評価基準を考慮したものになっていますが、施行されたとしても世界からの評価はまだまだ低いのが現状です。

    未成年・病気をもつ方々への配慮

    たばこが健康に及ぼす悪影響はよく知られているとおりです。厚生労働省「喫煙の景況に関する検討会報告書」によると日本の年間の受動喫煙による死亡者数は約1万5000人と推計されています。

    また、小児のぜんそくや乳幼児突然死症候群(SIDS)も受動喫煙により引き起こされる可能性があるとされています。

    このような受動喫煙によるリスクも法改正の背景の1つです。

    東京オリンピック・パラリンピックの開催

    2020年に東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まっていたことも関係しています。WHOと共同でIOC(国際オリンピック委員会)もたばこのないオリンピックを提唱しています。

    また、近年のオリンピック・パラリンピック開催国では、どの国も全面禁煙に向けた政策を罰則付きで打ち出しており、日本もそれにならった形です。

    オリンピック・パラリンピックをきっかけに禁煙に対する意識を高め、国際基準まで到達させたいという政府の意図があるのではないでしょうか。

    健康経営でも受動喫煙対策は必須!

    健康経営銘柄・健康経営優良法人ではこれまでも受動喫煙対策が必須でしたが、これに加えて2022年度からは喫煙者を減らすための指導・教育などの取り組みが新たに認定項目に追加されました。

    近年の健康意識への高まりにより、企業はますます喫煙対策の強化が求められるでしょう。しかし多くの企業は国の施策の先を見越してすでに対策に乗り出しています。健康経営優良法人を継続させるには、最低でも認定基準レベルを満たしておく必要があるのではないでしょうか。

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